業界研究ニュース 略歴

2015年06月12日

吉野家は、うまい、やすい、はやい、だけじゃない?

食品・飲料

豆腐か鶏か ヘルシー定食(朝日新聞2015年6月9日付朝刊)

 吉野家は、朝食の新商品として「豆腐のぶっかけ飯~鶏だし味~」と「鶏そぼろ丼」(いずれも税込み290円)を売り出す。両方400Kcal台前半で、ヘルシーさをアピールして、シャケや納豆などの定食に次ぐ定番メニューにしたい考えだ。

目のつけどころはこちら

 新聞の経済面には、こうした短信が毎日、載っていますが、そこから業界・企業のビジネスの流れが透けて見えることがあります。「ベジ丼」の記事には、新商品の背景として「牛丼の値上げで落ち込んだ客足回復を狙う」という一言が入っています。吉野家は昨年暮れ、米国産牛肉の高騰と円安などを理由に、牛丼並盛りを税込み300円から380円にしたのをはじめ、牛肉を使った25品目を30~120円値上げしました(消費税率8%になった昨年4月、280円から300円に値上げしたばかりでした)。すき家や松屋の他の牛丼大手も、ここ1年で同様に値上げをしています。高くした分客足が減らなければもうけは多くなりますが、なにしろ「うまい、やすい、はやい」がキャッチフレーズの牛丼。値上げは牛丼ファンの足を鈍らせるでしょう。そこで新メニューなのです。

 吉野家の「うまい、やすい、はやい」に新メニューが付け加えるのは、「ヘルシー」というあたりでしょうか。牛丼並み669kcalに比べ200kcalあまりも低カロリーです。さらに、牛丼の一枚看板でなく、品揃えを増やすことで、さまざまなタイプのお客さんに“フックをかける”という戦略も見えてきます。

 たまたま「豆腐か鶏か ヘルシー定食」と同じ日の経済面に「マック、売上高大幅減続く」という、やはり短信記事(150字)が出ていました。日本マクドナルドの今年5月の既存店売上高は前年同月比22.2%に減ったとのこと。そのマックの新商品が「ベジタブルチキンバーガー」(税込み340~370円)です。朝日新聞5月22日付朝刊の経済面によればパティに野菜をおりこんだもので、さらに「バリューセット」でサラダを追加料金なしで選べるようにしたとあります。記事は「期限切れ鶏肉や異物混入の問題で女性や家族連れの客足が落ちており、健康志向に訴えて回復を狙う」と、伝えています。

 牛丼とハンバーガー、“庶民の味”の両雄がともにヘルシー志向で客足をつなぎ留めようというのが、おもしろいですね。小さな新商品紹介の記事でも日々読んでいると思わぬ発見があります。継続は、力です。

アーカイブ

業界別

月別