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2015年06月09日

養護施設出身者は大学進学率2割? 教育格差埋めるアイデアを

教育・生活サービス

養護施設出身者へ独立行政法人が「学生サポーター制」(2015年6月6日東京本社夕刊)

 苦学生を支える新しい取り組み「学生サポーター制度」が、2015年度から始まった。対象は児童養護施設などで育ち、経済的に親の支援を受けられない大学生たち。学費と生活費のために、多くの時間をアルバイトに費やす状況を改善する手助けをし、本来の学生生活を送ってもらうのが目的だ。制度は、独立行政法人国立青少年教育振興機構(東京都)が企画。運営している青少年自然の家など全国28の教育施設で学生に働いてもらい、平均より多い時給を支払う。仕事は、夏休みや週末などに、子どものリーダー役としてキャンプや宿泊学習を手伝ったり、施設周辺の草刈りをしたりする。年間800時間までがめやすで、120万円の報酬が月10万円ずつ支払われる。

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 児童養護施設は、保護者がいなかったり虐待されたりするなどして家庭内で育てられない子どもが生活する施設です。2歳から18歳まで約3万人の子どもが全国約600施設で暮らしています。昨年、芦田愛菜さん主演で話題となったドラマ「明日、ママがいない」の舞台も児童養護施設でした。

 さて、この記事には児童養護施設に関する衝撃的な数字が紹介されています。厚生労働省によれば高校生が大学や専門学校などに進学する割合は80%近く、一方で児童擁護施設の子どもはそのわずか4分の1、20%にとどまるというのです。大きな原因は、お金。児童養護施設は18歳で原則退所しなければならず、そこからは自分で生活費を稼ぐ必要があります。加えて大学に行くとなると、私立大より負担の少ない国公立大学でも年間の学費は通学費など含めて約70万円。生活費と学費を工面するためには連日アルバイトをする必要があり、進学を断念したり進学しても中退に追い込まれるケースが多いのだといいます。大学進学への意欲が同じでも家庭環境の違いで行ける子と行けない子が出てきてしまう、まさに典型的な「教育格差」のあらわれでしょう。

 現状この問題に取り組む主体は記事にも登場した独立行政法人やNPOといった非営利団体が主ですが、教育業界にも格差解消につながる動きが出てきています。そのうちの一つが、高等教育のオンライン化です。大学の授業をウェブを通じて無料で受講できる「MOOC」という取り組みが広がりつつあり、またリクルートの関連会社が手がける「受験サプリ」など、安い値段で予備校の授業が受けられるオンライン予備校もじわじわ認知度を上げてきています。(ちなみに朝日新聞でも「アプケン」というスマホ向けの大学受験対策サービスを展開しています)

 この記事を読んでいる皆さんの多くは、学費や生活費を自分でまかなわなくてもすんでいるかもしれません。「教育格差? 自分には関係ないことだ」と考えてしまうこともあるでしょう。ですが、「うちは貧しいから勉強してもしょうがない」と意欲を最初から失ってしまう子どもが増えることは、長期的に見てこの国の一体感をそこない、国の活力を削ぐことにつながっていきます。ですから教育業界への就職を考えている人はもちろん、そうではない人もぜひ、この問題に関心を持って下さい。

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