「手作り」霊柩車 光岡自動車、新車種を受注生産(2016年1月13日朝日新聞富山版)
出生数が減る一方、死亡者数が増え続ける日本。葬祭ビジネスに注目する企業は多く、個性的なデザインで知られる乗用車メーカー光岡自動車(富山市)もその一つだ。新型霊柩車を発売したばかりの同社を訪ねた。
出生数が減る一方、死亡者数が増え続ける日本。葬祭ビジネスに注目する企業は多く、個性的なデザインで知られる乗用車メーカー光岡自動車(富山市)もその一つだ。新型霊柩車を発売したばかりの同社を訪ねた。
この記事は、事件事故などの一般のニュース記事ではなく、記者が興味深い事象を追って現場に出向き、そこで見聞したことを書くルポルタージュです。記者は同社工場を訪れて、お棺を載せるスペースを確保するために車の骨組みを伸ばす作業などを見学しています。
光岡自動車は、トヨタや日産などの市販車をベースにしたクラシカルなオリジナルデザインの改造車や、自前のスーパーカーの製作で知られてきました。光岡自動車のホームページhttp://www.mitsuoka-tokuhan.com/products/mitsuoka_ryugistretchlimousine//を開くと、昨年12月に新発売した霊柩車「おくりぐるまリューギセンターストレッチリムジン」の写真が見られます。こちらはトヨタのカローラ・フィールダーがベースで、車体価格は税抜き約570万円~613万円です。
光岡自動車の霊柩車は黒一色か白一色で飾り気がなく、フロントグリルなどは光岡自動車らしいクラシックな“表情”をしています。なるほど、霊柩車にもってこいのデザインなのかもしれません。霊柩車というと以前は「お宮型」といって神社の社殿を載せたようなデザインのものが多かったのですが、最近は光岡タイプの飾り気のない霊柩車(「洋型」と呼ばれています)が圧倒しているとのことです。
冒頭の記事は、「霊柩車の出番は今後しばらく増えそうだ」と、日本の年間死者数の増加を指摘しています。1960~80年代は60~80万人台だったのが、2014年には127万人になり、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2039年の167万人まで増え続けるとされます。しかし、死者数が増加傾向にあるからといって葬祭ビジネスが活況というわけではないのです。
朝日新聞2015年7月18日付朝刊に「冠婚葬祭互助会 1割が債務超過 葬儀の簡素化など影響」という記事がありました。冠婚葬祭互助会は、前もって受け取る掛け金を元手に葬儀や結婚式などのサービスを提供する業態です。全国で、業界団体加盟の235社中の1割にあたる22社が債務超過(負債が資産を上回る経営上不健全な状態)に陥っていることが、朝日新聞の調査でわかったというのです。その原因として、「少子高齢化に伴う収入減や葬儀の簡素化に加え、業界内の調整で経営不振の互助会を(他の互助会が)引き受けたこと」をあげています。
光岡自動車の霊柩車販売台数を押し上げている要因は死者数の増加だけではなく、こういった日本人の葬儀の仕方の変化も大きいのではないかと思えます。冒頭の記事でも、一般社団法人・全国霊柩自動車協会(約1200社加盟)によると、近年、葬儀は小規模化、低価格化が進み、霊柩車の買い手である葬儀業者の間でも格安型へのニーズが高まっているといい、光岡自動車の霊柩車の「カローラタイプはそれを意識した商品だ」としています。近親者が火葬場に立ち会うのみの直葬(じきそう)、ごく内輪だけで葬儀をする家族葬が確かに増えています。新聞の死亡欄を読んでも、「葬儀は近親者のみで済ませた」という記述をよく見かけます。一般の葬儀だと100万~200万円するのが、家族葬だと半額くらいになります。これでは冠婚葬祭互助会のような「従来型のビジネスモデルは成り立ちにくいのでしょう。霊柩車だってダウンサイジングしてきているのです。なにか特異な事象があったとき、その原因はなにか、いろいろな角度から考える頭のトレーニングは就活でも大切です。将来、社会に出てからも、そういう多角的な視点をもつよう心がけてほしいですね。
2024/10/13 更新
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