稼ぐ力でトップ選別 500社人事に反対、米助言会社が方針 (2015年5月18日朝刊)
アメリカの議決権行使助言会社ISSが、収益性の低い日本の上場500社について、6月の株主総会でトップの人事案への反対を促す方針だ。円安や原油安で好業績が目立つ企業が多いが、「稼ぐ力」は欧米より劣る。助言の根拠の柱になっているのが、投資効率ROEだ。
アメリカの議決権行使助言会社ISSが、収益性の低い日本の上場500社について、6月の株主総会でトップの人事案への反対を促す方針だ。円安や原油安で好業績が目立つ企業が多いが、「稼ぐ力」は欧米より劣る。助言の根拠の柱になっているのが、投資効率ROEだ。
ISSはInstitutional Shareholder Services Inc.の略で、米国ボストンを本拠に世界10カ国16拠点で16000の機関投資家を相手に展開する世界最大手の議決権行使助言会社です。金融機関や投資顧問会社、年金基金などの機関投資家に向けて、株主総会の議案を分析し、株主に賛否の助言をするのが主な業務。創業者のパパと娘の現社長が対立し〝骨肉の争い〟となった大塚家具の株主総会でもISSが社長側につく助言をしていました(「別助言会社も社長側 米大手2社が支持 大塚家具」朝日新聞3月15日朝刊)。そのISSが「稼ぐ力」の指標として重視するのが、自己資本比率ROE(Return On Equity)です。
ROEは、税引後当期純損益を自己資本(株主資本=株主が会社に対し出資した金額)で割り、100を掛けて%で表します(図参照)。会社が株主からお金を集める力だけでなく、それをいくら残せたかという力も測ろうというのです。ISSは、「この比率が過去5年間で5%に満たず、直近の決算でも改善されていなければ、機関投資家に株主総会で社長、会長の人事案件に異を唱えるよう助言する」といいます。
なんと、3月期決算でISSの顧客である機関投資家が株式を持っている2100社のうち、この基準に満たない企業は4社に1社、約500社にものぼるそうです。記事は、ソニーやシャープも含まれると伝えています。株主総会が集中する6月はけっこう〝荒れる〟でしょう。人事案件はそう簡単に覆るものではありませんが、企業にとって大きなプレッシャーであることに変わりありません。ROEがマイナスのソニーの吉田憲一郎副社長は、4月の決算説明会で「3年後にROE10%」の目標を表明したそうです。
金融庁と東京証券取引所は、企業経営のいっそうの透明化、効率化を促すため、6月から企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を導入します。導入に向け、ROEの向上を目指す企業が増えているようです。投資家の側からROEを武器に口火を切り、この企業改革につなげたのがISSでした。(「東洋経済の眼 ガバナンス・コード直前 経営透明化・効率化進むか」朝日新聞4月18日朝刊)。〝現代の黒船〟ISSの助言は、日本企業のグローバル化待ったなしを印象づけます。ROEは就活生にぜひ知っておいてほしい時事用語です。
2024/11/21 更新
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