傲慢トップ 経営リスク (3月16日朝日新聞朝刊)
トップが暴走して会社が存亡のふちに――。そこまでいかなくても「傲慢(ごうまん)」経営者に悩む人たちは多い。英国では、傲慢を「人格障害の一種」ととらえ、対策を考える研究が始まっている。
トップが暴走して会社が存亡のふちに――。そこまでいかなくても「傲慢(ごうまん)」経営者に悩む人たちは多い。英国では、傲慢を「人格障害の一種」ととらえ、対策を考える研究が始まっている。
熱心な新聞読者から、時折さらりと、こんなことを言われます。
「月曜日の新聞は、物足りないですね」
新聞社にいる身としては、まことに忸怩たる念がある一方、実は本音として、
「この人は新聞をよく読んでくださっているなあ」
と嬉しくなり、感謝の気持ちさえわきます。実は指摘の通り、月曜日の新聞は分量的に少し物足りないことが多いのです。大きな理由のひとつが、曜日です。
新聞は世の中の新しい動きを伝えようとするメディア。だから載っている記事も「前日のできごと」が主流です。ところが月曜日は、前日が休み。企業や行政、政治といった世の中のさまざまな活動も、平日ほど活発ではありません。土曜日や日曜日はどうしてもニュースが乏しくなるのです。
そのため月曜日の朝刊は、「総合面」や「経済面」のページ数も少なくなっています。私たちは分量の少なさを感じさせないよう、独自の切り口やじっくり取材した記事を掲載することで日曜や月曜の紙面を充実させようとがんばっています。
この記事も月曜日の紙面ならではの、異色の経済ニュースでした。「自信過剰の社長は、経営を危機に導く」と警告し、トップの傲慢さを研究する「傲慢学会」などの動きを伝えています。
写真もインパクトがありますね。研究者が、強力な指導者としてスティーブ・ジョブズとアドルフ・ヒットラーを並べて、研究発表をしています。記事では、韓国の航空会社の副社長が乗務員のサービスに激怒して飛行機をひきかえさせた「ナッツ騒動」などが取り上げられています。
ところで経済評論家の森永卓郎さんが先日、ラジオでこんなことを言っていました。「日本にもナッツ騒動がある」。それがスカイマークです。
国内3位の航空会社であるスカイマークが1月、経営破綻しました。民事再生法の適用を申請して受理され、西久保愼一前社長が退任しました。
この経営破綻の責任を、森永さんは追及します。今から5年前、体調不良を訴えた客室乗務員を安全上の理由から機長が交代させようとしたところ、この機長が解雇されたのです。
国土交通省は激怒し、スカイマークを厳重注意しました。機長は損害賠償を求めて裁判を起こし、東京地裁はスカイマーク側に約1900万円の支払いを命じました。西久保社長がこの機長にけがを負わせたとして、慰謝料も認めています。
「傲慢なトップは、経営のリスク」。スカイマークは、もしかしたらその典型例なのかもしれません。
2024/11/21 更新
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