
個々の事情があるでしょうから一概には言えませんが、どんな企業に入るにしても、もしみなさんが、出産後も「働き続けたい」、しかも「お荷物扱いされずに」と思うのであれば、夫との価値観のすり合わせを早い段階でしておかねばならない、そんな時代が来たのです。冷静に話し合えればいいですが、夫の無理解に直面して、家庭内に不穏な空気が流れる可能性もあるでしょう。
この連載でも紹介しましたが、
「一人一殺」、妻が全体重をかけて夫一人だけでも、その価値観を「変える」ということも必要になってくるかもしれません(バックナンバーも読んでね)。
夫は夫で、共働きは収入も増えるしウェルカムだけど、出産後は妻に妻の会社の制度を利用してもらい、自分の働き方は「変えない」というのでは、
女性たちから「選ばれない」「納得してもらえない」時代が来るかもしれません。そうでなくても、妻が病気になったり、子どもに障害があったり、親の介護が必要になったり、ということはだれにでも起こります。男性であっても、自分自身が子育て支援の充実した企業に入社しておくことが、いざというときの「安全弁」になるかもしれません。そう考える男子学生が増えれば、企業もどんどん制度を充実させるきっかけになるでしょう。「女性の戦力化」という課題は、妻が働いている企業の努力だけでなく、夫が働いている企業の努力も不可欠なのです。
そう、これはきれい事です。しかし、働く女性の約6割がいまだに出産を機に退職という道を選んでいるのは、企業の育児支援制度が充実していないからだけではありません。男性の育児参加がそもそも期待できない、という理由のほうが大きいのです。
資生堂のように、子育て社員に優しい施策をもつ企業が、かえって、男女間の、夫と妻の間の家事育児における不平等を「温存させてしまう」というなんとも皮肉な結果をもたらしていた、という面もあるわけです。