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以前、臨床心理士の信田さよ子さんに、就活中の子どもをもつ親へのアドバイスという取材で聞いた話です。信田さんいわく、親が子に「好きなことを見つけなさい」とか「やりがいを持てる職業につきなさい」というのは“禁句”なんだそうです。
親にそう言われ続けた子どもは、「何かすてきな夢をもたなきゃいけない」「ちゃんとした仕事につかなきゃいけない」と刷り込まれ、就活でも、親が納得するような知名度の高い企業ばかり受けたり、思うように内定を得られない自分が受け入れられず、うつ状態になったりすることもあるといいます。
信田さんは「そもそも今は正社員というパイそのものが減っている。3K職場はイヤとか、スーパーや飲食業は大変そう、とか選り好みしていたら、一握りの優秀な学生以外は、どこかの段階で必ず壁にぶつかります。親は子どもに『ものわかりが悪い』と思われてもいいから、ふわふわした夢とかやりがいの話でなく、現実に即した話をしてあげてほしい」とも言っていました。
そのアドバイスの一例が、「就職したら、とにかく自立してね。もし自宅から通うなら、月に食費3万円は入れなさい。それができる安定した仕事に就きなさい」でした。
確かに子どもの立場からしても、企業の知名度や、仕事の内容といったいろんな物差しを持たされるより、「経済的に自立しなさい」の一点に絞って要求されたほうが、就職先を見つけやすい気がします。