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2017年03月31日

大手商社、アジアの病院事業に次々参入

医薬品・医療機器・医療機関

高齢社会のノウハウを海外でも

 商社といえば、モノの輸出入を仲介する仕事というイメージですが、実際はニーズがあれば何でもビジネスにする何でも屋です。最近力を入れているのが、アジアでの病院経営です。アジアの各国はこれから日本と同じような高齢社会を迎えます。医療費が大きく伸びるのは間違いないのですが、受け皿となる病院は足りません。そこで、商社は高齢社会の先輩である日本のノウハウを生かして、アジアの医療ニーズを先取りしようとしています。
(2017年4月2日朝日新聞デジタル)
(写真は、三井物産が出資するシンガポールの富裕層向け総合病院=三井物産提供)

アジアは日本の40年前

 アジアの国々は、将来の高齢社会が確実視されています。13億人の人口を抱える中国は、平均寿命が75歳まで延び、65歳以上の高齢者は2030年には現在の3倍の3億人に達すると予想されています。韓国は、日本以上のスピードで高齢化が進んでいて、1980年に3.8%だった65歳以上の高齢者比率が2015年に13%、2050年には35.9%になると予想されています。このほか、シンガポール、タイ、マレーシアなども高齢化が進んでいます。アジア全体では、日本の40年前くらいの状況だと言われています。
(写真は、伊藤忠商事が中国の国有企業と協業で展開する中国広東省の総合病院=伊藤忠商事提供)

増え続ける医療費

 こうした高齢化に伴って、アジアの医療費は増え続けています。アジア全体の2014年の医療費は10年前に比べて2倍になっています。もちろん、これからも増え続けると予想されています。日本ほど予防の考え方も普及していないため、たとえば中国では糖尿病患者や腎臓病患者がそれぞれ1億人を超えていると言われています。
(写真は、三菱商事がミャンマーに新設する総合病院の外観予想図=三菱商事提供)

アジアは自由診療の割合高い

 商社は、日本での病院経営にはあまりかかわっていません。それは、日本は医療保険制度がしっかりしていて、商社がビジネスとして食い込む余地が少ないためです。一方アジアの各国は、自由診療の割合が高いところが多く、病院経営はビジネスになります。ということで、日本の商社が先端的な医療施設を整え、運営にも力を貸せば、増え続ける医療ニーズを取り込みながら商社も潤うということになります。

魅力的なコンテンツは必要

 最近の商社のトレンドを表す言葉がふたつあります。ひとつは「貿易から投資へ」です。つまり、モノの輸出入の割合を減らして、国内外の成長産業に投資する割合を増やそうということです。モノにこだわらず、お金やサービスの輸出入も目指そうという流れとも言えます。もうひとつは「資源から脱資源へ」です。石油とか鉄鉱石とかの資源に投資したり輸入したりするビジネスは、価格の変動が大きく、業績の浮き沈みが大きくなります。それを避けるため資源の割合を減らして、消費者に近い商品やサービスに力を入れようという流れです。アジアでの病院経営も、商社のこうした2つの流れに沿ったビジネスと言えます。商社はどんどん「何でも屋」の面が強くなりそうです。商社を目指す人は、どんな仕事もこなすバイタリティと覚悟が一段と必要になっています。

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