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2015年10月09日

減らせ!再配達ロス 日本郵便の宅配をファミマでゲット

運輸

日本郵便の宅配、ファミマと提携(朝日新聞2015年10月6日朝刊)

 日本郵便とファミリーマートが提携して、ネット通販による購入品の受取場所として全国約1万1500店あるファミマのコンビニ店で受け取れるようにする。このサービスの利用を通販各社に呼びかける。不在時の再配達を減らし、経費の抑制につなげる狙い。日本郵便はローソン、ミニストップとも提携済みで、計2万5000超のコンビニ店で通販の購入品を受け取れるようになる。

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 国土交通省のHPで調べると、2014年度の宅配便取扱個数は36億1400万個にのぼります。その98%がトラック輸送に頼っているとのこと。日本人1人当たり年間28個を配達してもらっているのですね。ところが、その2割が再配達になっていて、これが大問題。「再配達減らせ、官民動く 宅配便の2割、排ガス増を懸念 国が検討会・到着予定通知」(朝日新聞10月3日朝刊)という記事が1面に載ったばかりでした。冒頭の記事にある「再配達は経費が余計にかかる」だけではないのです。国交省の試算で、「(再配達のために)トラックの排ガスでは年間42万トンの二酸化炭素が発生。山手線の内側の2.5倍と同じ広さのスギ林が吸収する量に匹敵する」そうです。

 流通・小売の仕組みがネット通販のおかげで様変わりしました。わざわざ店に出向かなくてもスマホで検索してサイトでお買い物。その画面で即決算、荷物は宅配で。なんとも手軽にショッピングができてしまう。購入品は大手通販サイトの場合、物流センターで仕分けされトラックで配送されます。ところが、共働きやシングルの人たちが増え、日中不在で受け取れるひとがいません。いきおい再配達も増えてしまいます。トラックは台数もドライバーも不足しています。10月3日1面の記事によれば、不在者への配達にのべ1億8000万時間かかっていて、労働力に換算すると9万人分にもなるそうです。

 そこで、再配達ロスを減らそうと、国土交通省は6月、宅配業者や通販会社、大学教授らによる「宅配の再配達の削減に向けた受取方法の多様化の促進等に関する検討会」を立ち上げました。すでに、大手宅配業者は配達日時をメールで告知したり、外出先から変更できるアプリを配信したり、大手通販業者が郵便局やターミナル駅に宅配ボックスを設置したり……と、あの手この手の対策を打ち始めているそうです。日本郵便とファミマ提携には、こんな事情があったのですね。小さな提携記事でも背景に「業界の大きな課題」が潜んでいることがあります。新聞記事って奥が深いなあ。

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