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2015年08月07日

キヤノンのデジカメ工場から人がいなくなる?

精密機器・電子機器

デジカメ組み立て 完全自動化 キヤノン、大分で設備開発へ(2015年8月5日朝日新聞朝刊)

 キヤノンはデジタルカメラの国内生産で、組み立ての全自動化に取り組む。大分の主力工場で約130億円の研究開発施設を建設して3年後の実施を目指す。円安で国内生産比率が上がっており、自動化によるコスト削減で国内工場の維持を図る。

 精密機器のカメラづくりは長らく日本のお家芸ですが、そのなかでもキヤノンはレンズ交換式の高級カメラで世界シェア44%と世界ナンバーワンです。いかに精密な商品をムダなく効率に作るかは、キヤノンの永遠の課題といえるでしょう。その追求の果てに出てきたのが、全自動化ということなのでしょうか。

 ちょっと、おさらいですが――。効率よく大量生産するための方式としては、1910年代に米国の大衆車T型フォードに取り入れられた「ベルトコンベヤー方式」が有名ですね。これを発展させたのが、トヨタ自動車の「かんばん方式」。数万点にのぼる自動車部品の中から、必要な部品を、必要なときに、必要なだけ調達するために「かんばん」(カード)を利用するというもので、「トヨタ生産方式」「ジャスト・イン・タイム」とも呼ばれます。キヤノンはじめ多くの日本のメーカーがお手本とし、カイゼンにカイゼンを加え磨きをかけてきました。「カイゼン」は「改善」のこと。トヨタ生産方式の中核の考え方で、常に作業を見直すやり方のことです。

 キヤノンは1998年以降、大量生産にはつきものだったベルトコンベアを国内工場から廃止しました。替わって導入したのが、いくつもの作業台(セル)を並べる「セル生産」方式。数人のチームがセルを囲み、一人ひとりが複数の作業をしながらカメラを組み立てます。これにより、ラインに部品が流れてくるのを待つ時間が短縮されます。また、目の前の作業をこなす単調な流れ作業ではなく、作業員は主体的に動けるのでチームワークや工夫によっては作業の効率を上げられます。「進化続く『セル方式』大分キヤノン工場」(朝日新聞2005年3月19日西部版)というセル生産方式の工場ルポで、当時の御手洗冨士夫社長は、こう語っています。
「セル方式の究極の目標は無人化。国内最高益をあげるトヨタ自動車より、まだ10年は遅れている」

 そうです。キヤノンのトップは、10年も前から究極の効率化として「無人化」を目論んでいたのですね。もの作りの拠点が安価な労働力を求めて中国から東南アジアに移りつつあるなか、少子高齢化の日本で、グローバルな競争力のある精密機器を効率よくつくるのにロボット化は避けられないのかもしれません。こうした流れのなかでの「働き方」って、どうなっていくのだろう。まさに、みなさんが直面する問題でしょう。

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