人事のホンネ

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【特別編 Part13】
インターンに参加すると本番で有利? 採用直結型って?

2019年06月26日

 前回に続き、「人事のホンネ2020シーズン」からインターンシップに関する話題をピックアップします。IT系や外資系の中には「採用直結」を堂々とうたっている会社もありますが、まだ一部です。インターンに参加すると本番の採用選考にどう有利なのでしょうか。受けないと不利? これで「人事のホンネ」はしばらくお休みし、2021シーズンを夏からスタートする予定です。(編集長・木之本敬介)

(写真は、インターンで実際にあった企業買収に即して資料を作る学生たち=2018年2月22日、大阪市中央区の住友商事関西支社)

採用に有利? 本選考とは別?

 就活ルールは、2021年卒採用から政府が全企業に呼びかける形になります。経団連が「採用選考に関する指針」を廃止するためですが、基本的な内容は引き継がれます。インターンについても、「面接解禁前は採用につながるものは禁止」との方針は変わりません。インターンはそもそも就職の準備や適性を見極めるために行われるもので、仕事への理解も深まります。それなのに、なぜこんな禁止規定があるのでしょう。大学1~2年生が参加することもあるインターンを採用に活用してよいことにしたら、就活が際限なく早期化して学業に支障をきたしてしまう――と大学側が反対しているからです。

 ただ、学情の企業アンケート(2019年1月実施)によると、インターンと採用との連携については、「インターン参加者は通常選考で優遇」が37.1%と最多で、「優遇まではしないが、インターン参加者限定の情報提供やセミナー等を実施」も28.2%。「インターンで選考・内定出し」の5.7%を加えると、7割が何らかの形で連携させていることになります。一方、「参加者と通常受験者との区別はない」は29.0%でしたが、そういう会社のインターンには参加する意味がないのでしょうか。

武田薬品工業】インターン参加者は会う機会が多いため、人となりもよくわかりますが、採用選考での特別扱いは一切しません。当社のバリューであるタケダイズム「誠実・公正・正直・不屈」の観点からも、インターンに参加した人だけがパスするのは不公平なので、(本選考では)全員3回の選考ステップを踏んでもらいました。ただインターンの後、採用選考の面接まで期間が開いてしまうので、インターン参加者と1対1で話す機会を設けて接点を増やしました。学生が一番気になっていることを話してもらいました。人によっては「ESはどう書いたらいいですか」「面接の準備は何をしたらいいですか」と具体的なアドバイスを求めてくる人や、「インターンで私をどう思われましたか」と評価やフィードバックを求める人もいましたが、すべて率直に答えました。

朝日新聞社】マスコミでもインターンに参加した人を対象に早期に内々定を出す会社がありますが、朝日新聞社は採用とは切り離しています。インターンからの早期選考は、選考過程が不透明ですし、コンプライアンス的にも問題があると考えています。「それじゃ、インターンに行く意味がない」と思うかもしれませんが、インターンではたくさんの記者の話を聞き、仕事ぶりを知ることができるので、志望理由を明確にすることにもつながります。マスコミだけでなく、複数の業界のインターンを経験することもお薦めしています。「自分はどんな仕事をしたいのか」「どんな仕事人生を送りたいのか」を固めていく過程では、複数の業界を見た方がプラスになると思います。もちろん、インターンに参加して本選考にエントリーしてくれた人は、志望度が高いということなので、ちゃんと注目していますよ!

インターンと採用を連携させていない会社のインターンにも、参加するメリットはたくさんあることがわりますね。具体的な「優遇」はなくても、インターンに参加した学生のことが気にならない会社はありません。

インターンで優秀な学生を選抜

 もともと経団連とは無関係のIT系や外資系には、「採用直結型インターン」を堂々と掲げ、売りにしている企業があります。中には、インターンが採用のメインルートだったり、インターンに参加しないと採用選考に参加できなかったりするところも。こうした会社を志望する人は、しっかり情報収集して、早めに動き出さなければなりません。優秀な学生を見いだすのが目的のインターンもあります。

サイバーエージェント】ビジネスコースでは、「DRAFT」と呼ぶ選抜型インターンシップを取り入れています。年間約3000人が応募して、実際にインターンに参加できるのは約300人。その中の最も活躍した約30人を「DRAFT生」として認定します。「DRAFT生」イコール「内定」ではありませんが、「あなたは優秀です」と認定するものです。当社がこの学生は優秀だとお墨付きを与えているんですね(笑)。コーポレイトサイトに載って、他の企業の方から次々に連絡が来たDRAFT生もいたそうです。DRAFT生の条件は「TOEIC○○点」といった分かりやすい基準ではなく、課題に取り組む姿勢や成果、性格を総合的に判断して優秀な方を選んでいます。(DRAFTでは具体的に何をする?)2018年卒採用では新規事業案を社長にプレゼンしてもらい、実際に優勝メンバーによる内定者だけの子会社を設立し、女性の子会社社長も誕生しました。今は事業の立ち上げのため開発に取り組んでいて、単なる「会社ごっこ」ではありません。
 今は(新卒採用のうち)インターン経由と本選考が半々くらいですが、もう少しインターンの割合を増やしたいと思っています。3年生の6月ごろ夏のインターンの選考会が始まり、年末まで実施します。本選考の途中からインターンに参加してもらうケースもあり、内定者の多くが何かしらのインターンに参加していたと思います。給与が出る長期就業型のインターンに参加する人もいます。

 2019シーズンで取り上げたP&Gソフトバンクなども、採用直結型の多様なインターンを実施しています。

こんな工夫も

森永乳業】夏の5日間のインターンシップは文理合同のインターンで、学部学科不問、誰でも参加できるものです。前半は、商品開発、マーケティング、営業という三つの仕事を座学や社員との座談会で学びます。後半は、商品を生み出してから、お客様に届けるまでの販売戦略をグループワークで体験してもらいます。2年前から、「ナンバーワン」を夏インターンのコンセプトにしました。1位を目指したり、目指すことに魅力を感じたりする人が、我々が求める「真っ白な情熱」を持った人なんじゃないかと考えたからです。選考では、これまでの人生でナンバーワンをとったり、ナンバーワンを目指したりした経験を聞いています。(どんな「ナンバーワン」学生が来ますか)分かりやすいところではスポーツですが、学業、アルバイト、ゼミ、海外留学などさまざまな経験を持つ人が来てくれます。中でも、「自分で考えて何かを動かした」経験が魅力的です。

アイリスオーヤマ】インターンは計6種類。文系のワンデーインターンが3種類、理系のワンデー、ツーデーが一つずつ、さらに生産技術の2週間のインターンがあります。夏から継続的に行い、12月までに計約700人が参加しました。文系の3種類は、「アイリスはこんな仕事をしています」という体験版、「ネット通販」、「BtoB(企業間取引)の営業」です。詳しく知りたい人は複数回参加できるようにしたところ、リピーターが1割くらいいました。東京、大阪、仙台の3カ所で、2月まで継続しています。

 各社いろんな工夫をしていますね。ワンデーだと会社や仕事を深く知るのは難しいでしょうが、ワンデーを3回、異なる内容でやれば3日間のインターンと同じです。ワンデーだと気軽に参加しやすいので、学生にもメリットがありそうです。

みなさんに一言!

 「インターンの選考に落ちたら、選考本番も受けても無駄ですよね」。よく学生からこう聞かれますが、そんなことはありません。人気企業だと、インターンは受け入れ人数が少ないため、本番の採用選考よりも「狭き門」というケースもあります。学生は、本番の選考までに大きく成長します。採用直結のインターンだと本番を受けられないケースがありますが、多くの場合、インターンを受けると有利になる一方、受けないから不利になるという企業はまずありません。
【朝日新聞社】インターン選考に落ちても、内定を得た学生はたくさんいます。強調したいのは、インターン選考で落ちたからといって、弊社とは縁がないとか、記者に向いていないというわけではないということです。あきらめずに、ぜひ本選考にエントリーをしてください。

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