人事のホンネ

アイリスオーヤマ株式会社

2020シーズン【第9回 アイリスオーヤマ】(後編)
ユーザーイン発想で生活豊かに ワクワク、飽きない会社

人事部 採用チーム東日本エリア担当 リーダー 佐藤祥平(さとう・しょうへい)さん、人事部 部長 会田祐一(あいだ・ゆういち)さん

2019年01月10日

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2020シーズン第9弾、アイリスオーヤマの後編です。常に変わり続ける「唯一無二」のイメージですが、そもそもどんな会社なのでしょう? 本社は宮城県ですから、勤務地も気になります。(編集長・木之本敬介)
(前編はこちら

※主な回答者は佐藤さん(写真右)。会田さんの発言のみ(会田)と表記しています。

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 インターンシップは計6種類。文系のワンデーインターンが3種類、理系のワンデー、ツーデーが一つずつ、さらに生産技術の2週間のインターンがあります。夏から継続的に行い、12月までに計約700人が参加しました。
 ワンデーインターンは2018年卒生から本格的に始めましたが、採用にはうまくつながりませんでした。インターンに参加した約1200人のうち、本採用でESを出したのは30%くらいでした。学生の志望度を上げられず、満足度も高くなかったんだと思います。

 ──今回は工夫した?
 文系の3種類は、「アイリスはこんな仕事をしています」という体験版、「ネット通販」、「BtoB(企業間取引)の営業」です。詳しく知りたい人は複数回参加できるようにしたところ、リピーターが1割くらいいました。

 ──3日間のインターンと同じ効果が得られそうですね。会場は?
 東京、大阪、仙台の3カ所で、2月まで継続しています。
 理系の商品開発系のインターンにも力を入れました。仕事全般を見られるワンデーと、仕事内容を詳しく知ってもらうツーデーを実施しました。2回で計50人の参加でしたが、半数以上が本選考を受けてくれました。

■社風
 ──アイリスオーヤマって、どんな会社ですか。
 (会田)キーワードは「ユーザーイン発想」と「ジャパンソリューション」。消費者目線のユーザーインの発想でソリューション事業を行う会社です。家電だけ、食品だけといった専門メーカーではないので、主語に製品が来ない。生活者がより豊かになる製品を提供しています。学生には「商品を作るだけではなく、日本の課題を解決するために事業をしている」と説明しています。

 ──「日本の課題」はたくさんありますね。
 いま代表的なのは家電、LED照明、食品です。シュレッダー、空気清浄機など軽家電は昔から手がけていましたが、家電に本格参入したのは2009年です。

 (会田)最近はBtoB事業も増えていて、LED照明を中心にオフィス向けのもの、金属製ラック、店舗向けの陳列棚なども手がけています。

 ──つかみどころがないイメージです。ライバルは?
 (会田)ないですね。「生活を豊かにする」という点に目を向けているからです。大山健太郎会長は「変化対応業」と言っています。

 ──日本には世界に名だたる家電メーカーがあるのに、なぜ、あえて家電に進出を?
 理由の一つは「技術者」です。大手メーカーの優秀な技術者が早期退職で辞めて海外に流出してしまうのを防ぎたかった。

 (会田)日本の家電は値段が高い。我々が参入したら安価に作れることが分かったんです。10万円の炊飯器もある中、我々は2万円で作り、味も変わらない。コストを積み上げて商品の値段を決めるのではなく、「いくらならユーザーが買うか」から小売価格を決める「引き算の発想」なんです。「値頃感」が大事です。
 ただ、「なるほど開発」というコンセプトがあって、単に安いだけではダメ。「分離式」の炊飯ジャーなど、すべての商品でひと工夫しています。そうするとお客様も買いやすい。

 ──新商品開発の「プレゼン会議」を毎週開くそうですね。
 毎週月曜日で、大山晃弘社長をはじめ各部門長が出席します。ここ角田I.T.P.(インダストリアル・テクノ・パーク、宮城県角田市)がメイン会場ですが、テレビ会議参加もあって50~60人が出席します。各事業部の担当者、実際にアイデアを出す人が出席します。
毎週60案件ほど出て、年間1000点の新商品を出しています。

「指示待ち」型の人は厳しい 大卒で宮城の本社配属は1割

■やりがいと厳しさ
 ──仕事のやりがい、厳しさについて教えてください。
 若いうちから仕事を任せてもらえます。他社では、先輩と同行する営業や、実務見習いが多いようですが、当社では新入社員研修が終わったらOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)期間で、実際に現場に出ます。早ければ1年目の7月ごろから独り立ちするので、早くから経験が積めて知識がつき、実績も出せます。

 (会田)厳しさはやりがいの裏返しですね。自分一人に任せられるので、自ら考えることができない人には苦痛ですよね。「指示待ち」タイプの人には厳しい会社です。
 一方で「次は何をするんだろう?」というワクワク感があって飽きない会社です。社員でも「この会社はどこへ行くんだろう」と思うし、パックご飯を作るなんて全く思っていませんでした。変化が苦手な人には苦痛でしょうが、変化を求める人、楽しめる人にはいい会社です。

 ──社内イベントが盛んだとか。
 年に1度、全国の工場で地域の人を招いて商品を販売する「アイリス祭」を開きます。
 社内では年4回、懇親会開催のための補助金が出るので、会社のお金で飲めます(笑)。よく「飲みニケーション」と言いますが、仕事以外で話す機会があると、新入社員がどんな思いで入社して何をやりたいかという本音が聞けます。
 社内運動会もあります。いろんな人が集まってチームを組むので、後々の仕事やコミュニケーションにつながることも多い。とても良い制度だと思います。

■勤務地
 ――勤務地について教えてください。
 (会田)本社機能は角田I.T.P.ですが、仙台、東京、大阪にメインの拠点があります。全国に9工場を含む約70の営業所があり、本社はその中の一つ。大卒者をすべてここに集めるわけではありません。ここは事業部、経理、購買、設計といったモノづくりの中枢で、企画から開発、品質管理などをするメーカー本部。営業は東京、大阪が多いし、ネット通販事業は仙台が拠点です。大卒の新卒で本社に配属されるのは1割くらいです。

 ──本社が地方にあることに対する学生の反応は?
 学生からは「転勤はありますか」「頻度はどのくらいですか」といった質問が多く、それを理由に辞退する人もいます。選考は東北、関東、関西、福岡で最終面接まで行いますが、「最初の勤務地は出身地がいい」という人が多い。社会人に慣れるまでは地元がいいようですね。
 一度も都会から出たことのない人はギャップに戸惑うようですが、地方も「住めば都」です。メリットは車通勤ができること。満員電車に乗らなくていいので生活にゆとりが出ます。マーケティングや商品企画など「考える時間」が必要な仕事にはいいと思います。

 ──いまや東北を代表する企業ですが、応募も東北の学生が多い?
 いえ、関西が半分(うち九州が8%)、東京が3割、東北は2割です。大阪の開発拠点を拡大したため2019卒採用から「攻めの採用」戦略をとり、学内説明会など関西での露出を増やして学生と会う機会をかなり多くしました。
 それ以前の応募は、関東が半分、宮城3割、関西2割でした。