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2014年07月25日

富士通 半導体生産、縮小へ

家電・総合電機

半導体生産、縮小へ 富士通 2工場手放す方針 (7月19日朝日新聞朝刊)

 富士通は、台湾の半導体メーカー、UMCと共同出資の半導体生産会社をつくる方針を固めた。年度内に富士通の三重工場(三重県桑名市)を新会社に移す。また、会津若松工場(福島県会津若松市)は、米オン・セミコンダクターに売却する方向だ。

【目のつけどころ】 電機産業の構造転換

 このニュースに接して、昔日の日本の栄光をかみしめる読者も少なくなかったのでは、と想像します。富士通が、半導体製造の主力工場である三重工場と会津若松工場を、海外の企業に売却します。半導体生産の大幅な縮小であり、事実上の撤退と呼んでよいでしょう。

 かつて日本は、半導体製造におけるトップランナーでした。1980年代、世界の全半導体生産の50%以上を占めていたのです。たとえばDRAMと呼ばれるメモリーは、実に80%が日本製でした。

 ところがその後、日本は半導体産業の構造変化に乗れませんでした。NECや日立製作所、三菱電機の半導体部門は、ルネサスエレクトロニクスやエルピーダメモリといった新会社に移管されましたが、経営は困難が続いています。ライバルとなったのは、欧米の企業に加えて、韓国や台湾の新興勢力でした。

 ちなみに、1980年代末における世界の半導体メーカー上位10社を並べてみましょう。こうです。
1位 NEC
2位 東芝
3位 日立製作所
4位 モトローラ(米国)
5位 テキサス・インスツルメンツ(米国)
6位 富士通
7位 三菱電機
8位 インテル(米国)
9位 松下電子工業
10位 フィリップス(オランダ)

 いまではこの顔ぶれは大幅に入れ替わり、現在も強みを発揮している日本企業と言えば、フラッシュメモリーで優位に立つ東芝や、高性能のCMOSイメージセンサー技術を展開するソニーなど、少数に限られています。
 半導体から事実上撤退する富士通は、今後はビッグデータの活用やクラウド事業といったITサービスの分野に傾注していく方針だそうです。日本の電機産業の構造転換が、これから軌道に乗るのか。大きなテーマを投げかけるニュースです。

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