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2021年02月05日

ソニー、任天堂絶好調 競争激化するゲーム業界【業界研究ニュース】

ソフトウェア・情報処理

 ゲーム業界が絶好調です。新型コロナウイルスによる巣ごもり需要が高まったからです。日本の業界大手はソニー任天堂ですが、ソニーは2月3日、2021年3月期の業績予想を上方修正して純利益が1兆850億円になると発表しました。ソニーはゲームだけの会社ではありませんが、上方修正の大きな要因はゲーム事業の好調です。任天堂も2月1日、3月期の業績予想を上方修正し、純利益が昨年11月の予想より1000億円増えて4000億円になると発表しました。ソニーは7年ぶりに新しくしたゲーム機「プレイステーション5(PS5)」を11月に発売して一段と攻勢を強めていますし、任天堂は「あつまれどうぶつの森」の大ヒットなどにより「ニンテンドースイッチ」の好調が続いています。ただ、ゲーム業界は進化のスピードが速いのが特徴です。画像処理サーバーがするクラウドゲームバーチャルリアリティーを取り入れたVRゲームなどの新しいゲームがこれからの注目株になっています。また、ゲームをスポーツとして観戦するeスポーツは、ゲームの新しい楽しみ方になろうとしています。こうした成長の可能性を感じ取ったアメリカのITが参入し始めていて、世界規模で競争が激しくなっています。

(写真は、ソニーPS5と周辺機器=ソニー・インタラクティブエンタテインメントのユーチューブ動画から)

ソニーと任天堂が2大勢力

 日本のゲーム業界は、ソニーと任天堂が2大勢力を形成しています。ゲームには、ハードソフトが必要です。ハードにはスマホやパソコンもありますが、この2社は家庭用ゲーム専用機を販売しています。ソニーはプレイステーションのシリーズで、PS4は世界で1億台以上を売り、今はPS5で攻勢をかけています。任天堂は1980年代にファミリーコンピューター(ファミコン)という家庭用ゲーム機を大ヒットさせた先駆者です。今の主力は2017年に発売したニンテンドースイッチです。この2社はゲーム機とその専用ソフトを売ることで成長してきました。ソニーはゲーム事業で2兆円を超える売上高となる見込みで、任天堂は1兆6000億円の売上高を見込んでいます。

(写真は、ニンテンドースイッチのゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」=任天堂提供)

マイクロソフトのXboxも好調

 ゲーム業界ではほかにバンダイナムコホールディングス(HD)、スクウェア・エニックスHDネクソンセガサミーHDコナミHD、サイバーエージェントディー・エヌ・エー(DeNA)、ガンホー・オンライン・エンターテイメントなどの大きな会社があるほか、小規模なソフトの制作会社もたくさんあります。海外勢では、アメリカのマイクロソフトが「Xbox」というゲーム機を発売していて、日本でも売れています。昨年11月に新機種を投入したこともあり、好調が続いています。

(写真は、Xboxのプレゼンテーション=2019年6月、米ロサンゼルス)

ソニーは月額方式で稼ぐ

 ゲーム業界は稼ぎ方にも変化が出ています。ソニーは製品を売り切って一過性で稼ぐのではなく、サービスを通じて継続的に利益を得る「リカーリング(循環)」ビジネスにかじを切っています。PSでも月額850円の「プレイステーション・プラス」という会員サービスを手がけています。オンラインで世界中の人と対戦したり、毎月ゲーム数本を追加料金なしで遊べたりします。加入者は増えています。

(写真は、ソニー本社が入るビル=東京・品川)

グーグル、FB、アマゾンも参入

 世界ではクラウドゲームの市場が注目されています。画像処理などをゲーム機本体ではなくサーバーがする仕組みです。利用者はオンラインで送られてくるゲームを端末に取り込んで遊びます。ハードを選ばずに簡単に遊べることや値段が安くなることが期待されています。すでにグーグルやフェイスブックが参入し、アマゾンも今年、一般向けのサービスを開始します。また、業界が有望視しているのは、eスポーツです。eスポーツは対戦型のゲームで、プロスポーツのように試合を大勢の観客が見て楽しむものです。すでに海外では大きな大会がいくつも開かれており、将来はオリンピック競技に、という声もあります。日本でも将来性に期待してゲーム業界だけではなく、通信、広告、メディアなどいろいろな業界が注目しています。

(写真は、eスポーツイベント「トヤマゲーマーズデイ」=2019年9月、富山県高岡市二塚、富山県提供)

社会への悪影響にも配慮必要

 成長が予想されるゲーム業界ですが、忘れてはならないことがあります。人々の健康や発達に悪い影響を与える可能性があることです。昨年、香川県では、18歳未満のゲームの利用時間を1日60分などと「目安」を定めた条例が成立しました。子どもがゲームの依存症になるのを防ぐためですが、賛否両論が出て大きな議論になりました。業界は絶好調に浮かれるだけでなく、社会に及ぼす悪影響を小さくするような努力も必要になっています。

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