業界研究ニュース 略歴

2019年04月03日

これからが本番か、地銀の再編…ピンチはチャンス!?

銀行・証券・保険

 メガバンクが採用数を大きく減らしていることが話題になっていますが地方銀行はメガバンク以上に先行きが不透明です。超低金利、人口減少、異業種参入などで体力の弱い地銀はこのままでは生き残れないのではないか、という見通しがもたれています。生き残りのためには規模を大きくして体力をつけることだという判断から、合併や経営統合が進んでいます。これから先、そうした動きは一段と強まりそうです。地銀は安定した就職先として人気がありましたが、安定とは言い切れない時代に入っています。ただ、先行きが不透明な時こそ、若い人材が活躍する余地が生まれます。ピンチはチャンスという考え方もあると思います。

(写真は、発足式を行った関西みらい銀行の菅哲哉社長〈中央〉ら=2019年4月1日、大阪市中央区)

1県に2行以上の地銀

 日本には100行以上の地銀があります。地銀は地方を拠点にする銀行ですが、成り立ちの違いから業界団体は2つあります。ひとつは、全国地方銀行協会で64行が加盟しています。もうひとつは第二地方銀行協会で、かつての相互銀行から地銀になった39行が加盟しています。数からも分かるように、ひとつの県に地方銀行はふたつ以上あるのが一般的です。地方にはメガバンクなどの都市銀行も支店を置いて進出していますし、信用金庫信用組合といった小さな金融機関もあります。都会以上に競争は激しいともいえます。

苦境をもたらす3つの原因

 地方銀行の経営が苦しくなっている原因は、ざっと3つあります。ひとつは超低金利です。貸出金利が低くなっても、預金金利はゼロ近くに張り付いていますので、貸出金利と預金金利の差である利ざやが小さくなっています。銀行の利益の多くは利ざやですので、ここが小さくなると利益が薄くなります。2つ目は人口減少です。地方の人口は減っているため、資金需要も少なくなっています。銀行が融資しようにも借り手が減っています。3つめは、異業種の参入です。金融がITと結びつくフィンテックの進化もあって、IT企業やコンビニ業界などが銀行業に参入しています。地銀の売りだったきめ細かいサービスがネットによる簡便さにとってかわられている面があります。超低金利も人口減少もフィンテックも、流れは当分変わりそうにありませんので、地銀の苦境は一時的なものではないと考えられます。

これからが再編の本番

 地銀同士の合併や経営統合は進んでいます。今年に入ってからも1月には三重県が地盤の三重銀行と第三銀行が2021年に合併する、と発表されました。4月1日には、長崎県を地盤とする親和銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループと、同じく長崎県を地盤とする十八銀行が経営統合しました。また同じ日、関西みらいフィナンシャルグループ傘下の関西アーバン銀行と近畿大阪銀行が合併して「関西みらい銀行」が誕生しました。昨年までにも地銀の合併、統合はいくつも成立していて、今や総資産上位の地銀には最近合併したり統合したりした地銀がずらりと並んでいます。ただ、こうした再編ではまだ十分とは言えず、黒田東彦日銀総裁が「地域金融機関は構造的な対応をしなくてはならない。統合や合併のような話もあるだろう」と昨年11月の記者会見で言っているように、これからが再編の本番とみられています。

(地図は、2018年8月24日の朝日新聞から)

大胆な再編もあり得る

 今のところ再編は、地銀同士が一緒になって規模を大きくするという狙いですが、これからはメガバンクや異業種と手を組むような大胆な再編もありえます。地銀に就職したつもりが、都会でグローバルな仕事やIT系の仕事をすることになったということも考えられます。金融は、人体における血液の役割に例えられます。おカネを社会の隅々まで行き渡らせて、社会がスムーズに動くようにする仕事です。どんな社会になっても、金融の仕事はなくならないでしょう。地銀に関心のある人は、特定の地銀に就職するという意識から金融業界に就職するという意識をもって臨むのがいいと思います。

◆人気企業に勤める女性社員のインタビューなど、「なりたい自分」になるための情報満載。私らしさを探す女子就活サイト「Will活」はこちらから

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

業界別

月別