フロントに恐竜ロボット「変なホテル」
旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)は、ロボットが接客する「変なホテル」を2018年度までに東京都に6カ所、大阪府に2、3カ所開業することを明らかにしました。変なホテルの1号店は、2015年7月に長崎県佐世保市のハウステンボスの隣接地にオープンしました。好調なことから、都心部や海外にも展開しようとしています。人工知能(AI)が発達すると、人間がしている仕事が奪われると言われています。この「変なホテル」のロボット接客はその先駆けとも言えます。当初は人と接する仕事をロボットが代替するのは難しいという見方もありましたが、その見方が否定されつつあります。
(2017年8月1日朝日新聞デジタル)
(写真は、愛知県蒲郡市に今月1日オープンした「変なホテル」のフロントロビー。巨大な恐竜ロボットたちが客を出迎える)
4カ国語OK 外国人にも好評
「変なホテル」のロボットは恐竜の形などをしていて、フロントでの対応やコンシェルジュの業務、部屋での接客業務をします。佐世保の1号店では、「従業員」は186台のロボットと9人の人間です。1号店が好調なため、千葉県浦安市に2号店、愛知県蒲郡市に3号店をオープンしました。HISの沢田秀雄会長兼社長は、今後東京や大阪に展開し、台湾や中国・上海にも進出する方針を打ち出しています。ロボットでの接客が受け入れられている理由はいくつか考えられます。ひとつは話題性でしょうが、話題性だけでは長続きしません。ロボットの認識機能が上がり、人間相手以上に気楽に手続きや問い合わせができるとお客さんが感じる面もあるようです。また、日本語のほか、英語、中国語、韓国語と4カ国語で接客できるため、外国人観光客にも好評のようです。
(写真は、長崎県佐世保市の「変なホテル」1号店のフロント。タブレット端末に名前を入力してチェックイン=2016年8月30日撮影)
ファミレスなどでも実用化
接客にロボットを使うのは「変なホテル」が先行していますが、他にも動きはあります。ソフトバンクが開発したロボットのペッパー君は、法人向けの「Pepper for Biz」として、接客業務に活躍しています。スーパーマーケット、家電量販店、回転ずし店、鉄道駅などでお客さんの対応に当たっています。
また、牛丼のすき家などを展開するゼンショーホールディングスは、傘下のファミリーレストランで小型ロボットを使った接客の実用化を目指すと言っています。身長30センチの愛らしい姿のロボットがタッチパネルとともにそれぞれの席に配置され、客が座ってから帰るまで対応する予定です。日本は若年人口が減り、人手不足が深刻化しています。パートタイマーを集めるにも、給与を高くしないと集まらない状況です。ホテル、スーパー、飲食店などにとっては、ロボットが人間にとってかわると、大幅なコストダウンになります。人工知能の発達に伴って、今後かなり速いスピードでロボット化が進む分野だと思われます。
(写真は、東京・有楽町の大型電器店で接客するペッパー=2014年12月1日撮影)
予見していなかったロボット接客
野村総合研究所は2015年、「人工知能の発達で今ある職業の49%が人工知能にとってかわられる」という研究結果を発表し、大きな話題になりました。「特別な知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等に代替される可能性が高い」として、100の職業を例に挙げました。その中には、ホテル客室係、スーパー店員、銀行窓口係、受付係などが入っています。ただ、「サービス志向性が求められる職業については、代替は難しい傾向がある」としていました。ホテルのフロントやコンシェルジュなどの仕事はサービス志向性の高い仕事のはずですが、「変なホテル」ではロボットが活躍しています。ひょっとすると2年前に野村総研が予見した未来よりもロボットの活躍する範囲はもっと広がるのかもしれません。就活生のみなさんは、「人間にしかできない仕事か」を考えるとともに、仕事を「自分にしかできない」レベルにまで引き上げると何の心配もいらなくなるのだ、ということを覚えてください。