損失穴埋めで「切り売り」
経営難に陥った東芝は、巨額損失を穴埋めするためにさまざまな事業や資産を「切り売り」しています。売却を検討している子会社に、世界的なスマートメーター(通信機能付き電力量計)のランディス・ギア(本社・スイス)があります。その買収に、日立製作所が名乗りをあげました。日立は、力を入れている社会インフラ事業の拡大を狙っており、一方の東芝側はこの売却で2000億円超の資金調達を見込んでいる模様です。
(2017年4月26日朝日新聞デジタル)
(写真は、東京・港区の東芝本社ビルです)
電気の使い方を「見える化」するスマートメーター
これまでのアナログ式電力量計は検針員が毎月1回訪問し、使用量を目で見て確認していました。一方、デジタル式のスマートメーターだと、電気使用量が自動的に30分おきに電力会社へ送信されます。利用者にとっては、電気の使い方がグラフなどで「見える化」され、料金プランと組み合わせて節約ができるなどのメリットがあります。16年4月からの電力小売り全面自由化を機に、大手電力会社が切り替えを進めています。全国の電力計約7800万台がすべて置き換わるのは24年度末になるようです。(図表は、スマートメーターの仕組みです=2016年3月5日朝日新聞朝刊掲載)
スマートメーターはスマートグリッドの核
スマートメーターは、実はIT技術を駆使して電力の需要と供給を双方向にコントロールする次世代電力網スマートグリッドの核と言われています。近い将来、照明や冷暖房などの家電を制御する住宅用エネルギーシステムHEMS(ヘムス)と組み合わせれば、電気器具のオン・オフがスマホなどで遠隔操作できるばかりか、電気料金が高い時にクーラーの設定温度を上げたり、安い時には電気自動車の充電に振り向けたりもできます。省エネだけではありません。たとえば、企業や家庭の太陽光パネルによる余剰電力を効率よく集めて不足している地域に供給するなど、地球温暖化対策にも効果があるとされます。
(図表は、HEMSの仕組みです=2017年2月14日朝日新聞)
東芝の夢を日立が引き継ぐ?
ランディス・ギアは欧米を中心に30カ国以上の約8000社の顧客を持ち、売上高約1600億円(14年度実績)という、世界最大のスマートメーターのメーカーです。東芝が、オーストラリアのファンドから23億ドル(当時のレートで1867億円)ともいう巨額で買収したのは、11年でした。東芝はもともと発電所の設備メーカー。そこにランディス・ギアのスマートメーターを組み合わせることで、成長が期待されるスマートグリッドの国内外の市場に乗り出そうとしたのでした。日立もやはり発電所の設備メーカーです。東芝の夢は挫かれましたが、そのバトンを日立が引き継ぐのでしょうか。企業の新たな動きの先に、その企業がどんな未来を目指しているかもよくウォッチしてください。