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2017年04月11日

自由化で再編?電力・ガス業界は「安定」から「変化」へ

エネルギー

新電力に切り替え5.4%

 電気を買う会社を自由に選べる「電力小売り全面自由化」が始まって1年が過ぎました。最近、新たに電気を売る会社が続々と現れ、宣伝もにぎやかになっています。自由化から1年で契約を大手電力から新電力に切り替えた家庭や商店は、全体の5.4%でした。この数字の評価は分かれますが、じわじわと途切れずに切り替えられている状況をみると、切り替え率はまだまだ増えそうです。この4月からは都市ガスの自由化も始まりました。電気にしてもガスにしても、人口減少の社会ではパイが縮むことは間違いなく、自由化の進み具合によっては業界の垣根を越えた再編も考えられます。
(2017年4月9日朝日新聞デジタル)
(写真は、新電力「エネオスでんき」への切り替えを呼びかけるJXTGエネルギーのガソリンスタンド)

都市で進み、地方で進まず

 大手電力から新電力への切り替えの特徴は二つあります。一つは、都市部では進んでいますが、地方では進んでいないことです。地域ごとに切り替え率を見てみると、東京は7.9%、関西は7.1%と平均の5.4%を大きく上回っていますが、北陸、中国、四国は1%台で平均を大きく下回っています(表参照)。
 都市部では、たくさんの新電力が参入していろいろなメリットを訴えています。一方、地方は新電力の参入が少なく、選択肢があまりないのが実情です。

同じペースで増えている

 もう一つの特徴は、この1年間同じようなペースで切り替えがおこなわれていることです。昨年4月にスタートする段階で切り替えの手続きをすませていたのは0.5%でした。4月末段階では1.3%、半年たった9月末にちょうど3%、1年で5.4%になっています。こうした自由化の場合、通常考えられるのは、最初の数カ月で切り替えが一気に進み、そのあとはなだらかに増えるというカーブです。しかし、電気の場合はゆっくりではありますが、ほぼ一直線に増えています(グラフ参照)。これは、最初は料金体系の複雑さのためにユーザーがメリットを判断しにくく、急いで切り替える動機付けが足りなかったためとみられています。時間がたつにつれメリットを理解するユーザーが増え、またガスの自由化とセットで切り替えるタイミングもあり、切り替えがじわじわと進んだようです。

発送電分離も追い風

 このままいくと、遠くないうちに10%を超えると専門家は予測しています。電力自由化の仕上げとなる「発電と送電の分離(発送電分離)」が、これから予定されています。発電会社と送電会社が別になると、電気の卸取引所が今よりも使われるようになりそうです。そうなると、自前の発電所を持たない新電力も電気を調達しやすくなり、地方でも新電力が増える可能性があります。そうなると、さらに切り替えが進むことになりそうです。

電力・ガスは「安定」から「変化」へ

 電力業界は、典型的な内需産業です。国内で電気をつくって国内で販売しています。これから日本の人口が減り、国内の生産や消費が弱くなっていくと、電力の消費も減るでしょう。そこに新電力が参入して競争が激しくなっていくのですから、既存の電力会社も含めて経営が厳しくなるところが出てくる可能性があります。となると、合併などによって業界を再編して、生き残っていこうという動きが出てきそうです。都市ガス会社も同じような状況にありますので、再編は、電力とガスの垣根を越えて起きるかもしれません。電力会社とガス会社の状況については、2017年3月28日就活ニュースペーパー「電力VS.ガス…自由化で区別なくなる? 求める人材は?」も読んでみてください。
 かつては、「安定」の代名詞だった電力、ガス業界ですが、これからは「変化」が代名詞になる気配です。
(図表は、2017年4月2日朝日新聞朝刊に掲載された電力・ガス大手の勢力図)

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