初乗り730円から410円に
東京都心部のタクシー初乗り運賃が、2キロ730円から約1キロ410円になりました。短い距離を乗る場合は、かなり安くなります。遠距離の場合は、高くなりますが、タクシー業界は“ちょい乗り”のお客さんを増やして、利用者の減少に歯止めをかけることが大切だと判断しました。
実は、タクシー業界はそう遠くないうちに激変を迎えそうなのです。無人運転のタクシーが走り回る時代が近づいています。そうなると、どういうビジネスモデルになるのか、まだ見通せていません。タクシー業界はなくなるのか、それとも新しい飛躍につながるのか。新時代を前にとりあえず利用者を増やしておこうという戦略のようです。
(2017年1月31日朝日新聞デジタル)
利用者はバブル時代の半分
日本のタクシー・ハイヤーの利用者数は、バブル真っ盛りの1989年がピークで、年間延べ33億人でした。それが今はほぼ半分になっています。営業収入は1991年がピークで今は6割ほどに落ちています。バブル崩壊以降、会社がタクシー券の利用を制限する傾向が続きました。人口や賃金の減少傾向という大きな流れもタクシーには逆風でした。
無人タクシー、実証実験進む
タクシー業界は苦しい時期が続いていますが、将来を展望すると、こうしたじわじわとした変化でなく、ビジネスモデルが一挙に変わる革命的変化が起こる可能性が出ています。無人タクシーが引き起こす変化です。
アメリカのフォードは、2021年にはハンドルやアクセルのない完全自動運転車を配車サービスに投入すると公表しています。配車アプリのウーバーは、カリフォルニア州で自動運転車による配車と走行の実証実験をしています。今は、運転手役の人が乗っていますが、クルマは自動走行しています。
日本でも、IT大手のDeNAとロボット開発ベンチャーのZMPが合弁で、ロボットタクシーという会社を作りました。東京五輪が開かれる2020年には自動運転のタクシーを実現させたいと、神奈川県藤沢市などで実証実験をしました。(写真は、藤沢市で実証実験に使われたタクシーです)
運行するのはどの業界か?
無人タクシーを運行させるのは、どの業界でしょう。今あるタクシー業界がクルマの提供を受けて運行するということも考えられます。これだと、今の運転手という仕事はなくなりますが、会社としてはコストが下がり、利用者が増え、飛躍的発展となるかもしれません。しかし、そうでない可能性も小さくはありません。ロボットタクシーのように、既存のタクシー業界とは全く関係のない会社が運行するケースもあります。ネット企業だけでなく、自動運転車をつくる自動車メーカーが運行にも乗り出すことも考えられます。
じり貧から抜け出せるか
いずれにしても無人タクシーになると、格段とコストは下がります。運転手の人件費がいらなくなりますし、クルマ自体もシンプルですので大量生産すると安くできるからです。そうした無人タクシーが街を走り回っていて、アプリで呼べば、すぐにやってくる時代になると、自家用車を持つ意味も薄くなります。広告や個人情報収集のメリットと引き換えに無料タクシーというビジネスモデルが成立するとみる人もいます。どうやら、無人タクシーは、タクシー業界だけでなく社会全体を大きく変えることになりそうです。「変化こそチャンス」と思える人は、タクシー業界を調べてみてもいいかもしれません。