海運大手3社とも利益ゼロ
商船三井が1月末、2017年3月の純利益がゼロになるという見通しを公表しました。日本郵船と川崎汽船は同期を赤字と予測していて、「海運大手3社が今期は純利益を出せない見通しになった」そうです。商船三井は予測の根拠として「運賃のたたき合いが続く中、『船余り』で保有する船の価値が下がった」などと言っています。「海運大手3社、純利益は出ず 17年3月期予想」の記事をチェックしてみましょう。
(2017年2月1日朝日新聞デジタル)
商船三井が1月末、2017年3月の純利益がゼロになるという見通しを公表しました。日本郵船と川崎汽船は同期を赤字と予測していて、「海運大手3社が今期は純利益を出せない見通しになった」そうです。商船三井は予測の根拠として「運賃のたたき合いが続く中、『船余り』で保有する船の価値が下がった」などと言っています。「海運大手3社、純利益は出ず 17年3月期予想」の記事をチェックしてみましょう。
(2017年2月1日朝日新聞デジタル)
キーワードは「船余り」ですね。朝日新聞デジタルに「船余り深刻、採算悪化 海運3社、コンテナ船事業統合」(2016年11月1日)というまとめ記事がありました。「日用品を運ぶコンテナ船事業は各社の売上高の3~5割を占める主力。それを切り離すのは『船余り』解消のめどが立たないからだ」と解説しています。世界的に、荷物の量より船が多すぎるので運賃のたたき合いになっているのです。統合により世界のコンテナ事業会社ランキングの6位になるそうです。3社は設備を共有するなどして、年間計1100億円の利益改善を見込んでいます。
(写真はコンテナ船です。コンテナ船事業も、世界的な船余りで低運賃が続いています=日本郵政提供)
荷物が少ない状態にあるのは、それだけ世界経済が冷え込んでいるからともいえます。中国の成長が鈍り、イギリスがEU離脱を決め、米国のトランプ政権は「アメリカン・ファースト」で保護主義的な政策をばんばん打ち出しています。「日本では、我々の車の販売を難しくしているのに数十万台の車が大きな船で米国に入ってくる」というトランプ大統領の発言は象徴的です。
(参考:朝日デジタル「トランプ大統領、日本車貿易を批判『我々の販売難しい』」2017年1月24日)
「船余り」は海運業だけでなく、造船業でも深刻です。朝日デジタル「三菱重、大型客船撤退へ 中小型・LNG船に注力」(2016年10月19日)は、三菱重工業が、10万トンを超えるような大型船の建造はもうやらないと発表したことを伝えています。ドイツの会社から受注した2隻の大型クルーズ船は約1000億円で受注しながら、納期遅れなどで2300億円もの赤字になったことも一因ですが、日本船舶輸出組合によれば、2016年4~9月の国内の受注量(輸出船舶契約実績)は前年の同じ時期に比べて9割近く減っているとのこと。記事は、船を買う側の海運業界が「船余り」で、新たな発注が激減しているからだと指摘しています。悲観的なデータばかりですが、船による輸送は日本にとってかけがえのないインフラです。こんな「船余り」の状況の中で、どう経営の舵を切るか、それぞれの会社の努力と工夫を追いかけてみるのも、業界研究のテーマになりますね。
三菱重工については業界研究ニュース「ギブアップか? 大型客船の建造」(2016年10月11日)も読んでください。
2024/11/23 更新
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