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2017年01月10日

企業はトランプ氏にひれ伏す?

自動車・輸送用機器

FCA、米国で2千人追加雇用へ トランプ氏発言意識か

 欧米自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、米国の2工場に10億ドル(約1170億円)を投資し、約2000人を新たに雇うと発表しました。
 アメリカでの雇用拡大を求めるトランプ次期大統領に恭順の意を示すかのような発表です。トランプ氏は、メキシコに工場をつくる計画のある企業を名指しで批判するなど、海外展開を進める企業への批判を強めています。大統領ににらまれては大変だということで、アメリカでの雇用増や投資を公表する企業が相次いでいます。
 「企業って情けない」と感じる人もいるかもしれませんが、企業はしたたかです。とりあえずひれ伏した格好をするのが得策と考えているのかもしれません。
(写真は、FCAのセルジオ・マルキオンネ最高経営責任者です)

(2017年1月9日朝日新聞デジタル)

政治と企業の関係は議論に

 トランプ氏ほど企業の経営判断に直接介入する先進国のリーダーは見たことがありませんが、「政治と企業」のあるべき関係は、いつの時代も議論になってきました。
 安倍政権も、企業に賃上げを求めたり、働き方を変えるよう求めたり、やり過ぎではないかという声があります。政治は、企業を思うように動かして権力基盤を強めようとしますし、多くの企業は政治にもみくちゃにされるのはかなわないと距離を置こうとします。だから、あつれきが生まれるのです。

本田宗一郎氏の大ゲンカ

 そんな中で、政治(官)の圧力に毅然と抵抗した経営者は歴史に高い評価を残します。例えば、ホンダの創業者の本田宗一郎氏です。
 1960年代、本田氏は二輪車から四輪車に挑戦しようとします。しかし、通産省(今の経産省)が大反対します。通産省は、将来の自動車業界の構図を描いていて、その中にホンダは入っていなかったからです。
 通産省に乗り込んだ本田氏は、「俺たちは国のことを考えている。言うことを聞け」という通産官僚に対し、「やるといったらやる」と大ゲンカして、お茶にも手を付けずに帰ったそうです。結局、強引に四輪車に進出し、通産省を見返したのは有名です。

(写真は、1961年に撮影された54歳の本田氏です)

反骨の経営者は他にも

 他にも、1950年代、日銀に大反対されても千葉に大製鉄所を作った川崎製鉄(現JFEスチール)の西山弥太郎氏、通産省の反対を押し切ってイランから石油を輸入し、小説「海賊と呼ばれた男」のモデルになった出光興産の出光佐三氏、規制でがんじがらめの運送業を改革しようとして運輸省(現国交省)と大ゲンカしながら宅急便を世に送り出したヤマト運輸の小倉昌夫氏などがいます。

(写真は1953年、イランからの石油を運ぶ出光興産のタンカー入港を伝える新聞記事。「日章丸事件」として、世界中で大きく報じられました)

経営者は筋を通してほしい

 もちろん、ケンカをすれば歴史に名が残るというわけではありません。ケンカに勝てば、名が残るのです。経営者はたくさんの従業員を抱えているわけですから、無謀な戦いを挑んで従業員を路頭に迷わせてはいけません。
 ただ、筋の通ったことをし続け、言い続けると、結局はケンカに負けないと思います。政治家や官僚はずっと権勢を持ち続けるわけではないからです。トランプ氏の攻撃を受けている経営者もそんな気持ちでいるのではないでしょうか。みなさんが志望する会社の経営者に筋を通す気骨があればいいのですが。

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