ラジコの技術、TV応用論も 地域別配信の仕組みに注目
スマホやパソコンを使いラジオをライブで聴けるradiko(ラジコ)の利用者が1日100万人にのぼり、10月から過去1週間の番組が聴けるようになって、さらに増加中とのことです。利用者が今いる地域の放送なら無料で聴けるシステムは、テレビのネット同時配信に応用できますが、はたしてテレビ局にとって吉と出るか凶と出るか。
(2016年11月24日朝日新聞デジタル)
(写真は、ラジコのスマホ画面です)
スマホやパソコンを使いラジオをライブで聴けるradiko(ラジコ)の利用者が1日100万人にのぼり、10月から過去1週間の番組が聴けるようになって、さらに増加中とのことです。利用者が今いる地域の放送なら無料で聴けるシステムは、テレビのネット同時配信に応用できますが、はたしてテレビ局にとって吉と出るか凶と出るか。
(2016年11月24日朝日新聞デジタル)
(写真は、ラジコのスマホ画面です)
radikoは、全国のラジオ局と電通が出資する株式会社radikoが2010年から運営し、全国82放送局と放送大学の放送が聴けます。
リスナーの今いる地域はGPSで割り出します。2014年からは月額350円のプレミアム会員になると、全国のラジオが聴けるようになりました。かつてのラジオは、地元の放送局の番組しか聴けませんでしたが、その原則が崩れたわけです。
新聞記事は、中国放送(広島市)で10月にradikoを使って県外から放送を聴いた人が前年同月比2倍の約6万人にのぼったことを紹介。全国のカープファンが日本シリーズの中継を聴いたとみています。
実は、地方のラジオ局にとって、地域を越えて聴けることは、リスクも伴います。地方局は、すべての番組を自分では作らず、東京や大阪の放送局が作った番組を、地元の広告を付けて流すことがよくあります。ところがこれからは、地元のリスナーが、東京や大阪の番組を直接聴くかもしれません。そうなると、地元の広告が減り、収益源に響きかねないというのです。
しかし、若者を中心に減り続けるリスナーを増やさなければという「危機感」が勝り、越境聴取を実現させたようです。中国放送のように、越境聴取によりリスナーを獲得しているのなら、広告主にとっても、よい話でしょう。
ラジオのネット同時配信は、テレビにも応用できます。放送を担当する総務省は、2019年にもテレビのネット配信を全面解禁する方針です(「テレビ、ネット同時配信へ 法改正で19年にも全面解禁」朝日新聞デジタル10月19日)。
総務省は、ネット利用でテレビを見ない層へのアピール効果を狙っているといいます。
ネット配信による懸念は、ラジオもテレビも一緒です。テレビの在京キー局の放送がネットで流れ、全国どこでも見られるようになれば、地方局の番組を見る人が減り、経営を直撃しかねません。
そのためには、radikoと同様、「無料で見られるのは、視聴者が今いる地域の局に限る」というような対策が考えられます。
さらに、テレビ受像機を通さないネット視聴だと従来の視聴率が低下し、視聴率を元に算出される広告料が減る心配もあります。CMによる収入は、テレビ局の経営の根幹ですから、影響はとても大きい。これまでのやり方を見直す必要も出てくるでしょう。
科学技術のイノベーションは、従来のビジネスモデルに変更を迫ります。radikoは立ち上げからわずか6年。テレビ局は人気就職先のひとつですが、放送をめぐる目まぐるしいビジネスの変化の波を知っておいてほしいと思います。
2024/11/23 更新
※就活割に申し込むと、月額2000円(通常3800円)で朝日新聞デジタルが読めます。
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