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2016年11月18日

カメラからレンズが消える!日立「レンズレスカメラ」の衝撃

家電・総合電機

日立、「レンズなしカメラ」開発 2年後の実用化目指す

 日立製作所が国内で初めてレンズを使わずに撮影できる「レンズレスカメラ」=写真=の技術を開発しました。カメラがフィルムからデジタルに移行しても、カメラにレンズは必要不可欠でした。そのレンズが消える!? 2年後の実用を目指すとのことですが、実現すれば、デジタルカメラやスマートフォンのカメラの光を読み取る部分の厚みを通常の数十分の一程度にできるそうで、カメラ市場を一変させる画期的な技術革新になるかもしれません。

(2016年11月15日朝日新聞デジタル)

撮影後にピントも変えられる

なぜレンズが不要なのでしょう。従来のデジカメは外からの光をレンズで屈折させ結んだ像を画像センサーで読み取ります。

ところが、日立のニュースリリースによると、レンズレスカメラには画像センサーの前に特殊な模様がついたフィルムが貼られています。外から取り入れた光がつくる影と、この特殊フィルムの模様が干渉しあって縞模様ができ、この縞模様の信号を数学的操作すると画像が抽出できるのだそうです。しかも特殊フィルムの模様を操作することで撮影後にピントを変えられるというから、すごい。

レンズあってのカメラビジネス

 1990年代に普及しはじめたデジカメは、2000年代前半にフィルムカメラを凌駕(りょうが)しましたが、そのデジカメも、いまやスマホに押され苦戦。カメラ映像機器工業会(CIPA)によると、16年の出荷見通しは前年比87.6%です。

 中でもコンパクトデジカメなどレンズ一体型は83.4%。一方で、レンズ交換式のデジカメは94.3%と予想しています。CIPAは、レンズ交換式を「高付加価値であると同時に交換レンズをはじめとする対応商品群との組み合わせで総合力を発揮するシステム商材である」と評価しているのです。レンズあってのカメラビジネスなんですね。

 CIPAのニュースリリースはこちら(PDF)

レンズレスで揺らぐビジネスモデル

 レンズ交換式のデジカメでも、いま流行しているのは「ミラーレス一眼」です。2008年にパナソニックが初めて商品化し、瞬く間に普及しました。これまでレンズ交換式デジカメといえば、フィルムの一眼レフから発展した「デジタル一眼レフ」で、カメラの中に鏡が入っていました。その鏡を画像処理の技術で取り払ったのが「ミラーレス一眼」。鏡がない分、コンパクト化・軽量化がはかられました。

 鏡のつぎは、ついにレンズレスです。「レンズレスカメラ」が実用化され性能的にレンズカメラに引けを取らないようになったら……。「カメラ本体+レンズのシステム商材」のビジネスモデルが揺るぎます。新聞にさりげなく掲載される記事にも、大きな技術革新の一端を垣間見ることがあります。業界研究に新聞をぜひ役立ててください。

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