業界研究ニュース 略歴

2016年04月28日

エディオンが上新電機を提訴。転職の“お土産”は怖い?

流通

エディオン、上新電機を提訴(2016年4月25日朝日新聞デジタル)

 家電量販店大手エディオンは、元社員が営業秘密を持ち出した事件にからんで、元社員と転職先の上新電機に対し、50億円の損害賠償を求める民事の訴えを大阪地裁に起こした。この事件では、営業秘密を不正入手したエディオンの元社員が2015年11月に同地裁で有罪判決を受けている。

目のつけどころはこちら

 エディオンは、上新電機がエディオンの営業秘密を利用して住宅リフォーム事業を新設し、利益を得ていると主張し、賠償金のほかに営業秘密を基にした社内資料などの廃棄を求めています。両社はともに大阪市に本社があり、エディオンの年間売上高は約6912億円で1212店を展開。一方、上新は同約3723億円で234店があり、しのぎを削ってきました。家電量販店は訪日外国人需要で多少盛り返してはいますが、近年はネット通販に押され、消費の伸び悩みもあり、成長分野の住宅リフォーム事業に相次いで参入しています。その過程で起きた事件ともいえます。

 2015年11月13日の朝日新聞夕刊(大阪本社版)に「上新電機元部長に有罪判決 営業秘密不正に取得 大阪地裁」の記事がありました。この記事によると、エディオンの元課長だった上新の元部長A被告(判決当時53=記事では実名、上新を懲戒解雇)は、商品仕入れ原価や粗利のデータ81件を私用パソコンにコピーし、退職後、遠隔操作でエディオンのパソコンから販売戦略データ4件を抜き取り、一部を上新の部長に渡したとされ、不正競争防止法違反で懲役2年執行猶予3年(求刑懲役3年)の有罪判決が下っています。

 検察側は、A被告がエディオンの経営方針に不満を抱き、転職を考える中でデータをコピーし、転職後のデータ抜き取りも、上新に有益な情報をもたらして不正な利益を得る目的があったなどと主張。弁護側は「愛着がある情報を手元に置きたかった」「興味本位でやったこと」などとして、無罪判決を求めていました。

 ライバル会社間の転職では、転職者の経験や技能、人脈が評価されますが、元の企業が営業秘密として管理している独自情報を持ち出して自分が儲けたり、“お土産”として転職先に渡したりすれば、不正競争防止法違反に問われてしまいます。じつは、先の事件で、データ4件の抜き取りについて、大阪府警は上新も書類送検しましたが、大阪地検は「A被告以外の従業員の関与が認められない」などとして不起訴処分(起訴猶予)になっていました。今回の民事での提訴は、A被告だけでなく上新電機にも損害賠償を求めています。自分さえ、自分の所属する会社さえ良ければ何をしても許されるという考え方は、社会では受け入れられません。会社員になるには、まず「社会人」であることが前提です。つねに「社会人としての良識」を持ってください。

アーカイブ

業界別

月別