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2016年02月09日

太陽電池工場、なぜ休止

エネルギー

パナ、太陽電池工場休止へ 売電価格下がり(2016年2月9日朝日新聞朝刊)

 パナソニックが太陽電池をつくる二色浜(にしきのはま)工場(大阪府貝塚市)での生産を、今月中に休止することが8日わかった。太陽光発電の買い取り価格の引き下げで、国内向け出荷が落ちているためだ。10月までは休止が続く見通しで、市況が改善しなければ再開できない恐れもある。ほかの大手も需要減に悩んでいて、生産調整は業界全体の課題になりそうだ。

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 就活に新聞が効果的という話は当欄でも何度か繰り返しています。志望企業名を検索して記事を選んで読むともちろん業界研究に役立ちますが、実際の紙面を広げて1面や経済面、社会面にざっと目を通す習慣をつけると、なおよいでしょう。一見関係のなさそうなニュースも、意外なところで自分の志望企業や業界とつながっていることがあるからです。

 今回のニュースは、パナソニックが太陽電池工場の生産を休止するというものです。パナソニックは買収した三洋電機から太陽電池事業を受け継ぎ、特に住宅向けの太陽電池事業ではシャープを突き放し国内シェアトップだそうです。2015年5月19日の紙面では、パナソニックが住宅向け太陽電池の生産設備を増強するというニュースを報じています。しかしそこから約8カ月で、今度は主力工場の生産停止にまで追い込まれました。

 その背景となっているのが、太陽光発電で作った電気の「買い取り価格」の値下がりです。2012年、政府は太陽光などの自然エネルギーを電力会社が一定の価格で長期間買い取る「固定価格買い取り制度(FIT)」を導入。原発事故もあり自然エネルギーの普及を急いだ政府はこの値段を高めに設定したため、特に設置が簡単で買い取り価格の高かった太陽光発電に事業者が集中しました。買い取り価格は電気料金に上乗せする形で利用者が負担することになるため、政府はあわてて買い取り価格の値下げに踏み切ったわけです。住宅向けの買い取り価格の場合、2012年7月には1キロワットあたり42円(出力制御対応装置設置義務なしの場合)だった値段が2015年4月には33円まで約20%もダウン(右図)。2015年4~9月期の中間決算では、パナソニックの太陽電池事業は昨年同期に比べて売上高が3割減と大ダメージを受けました。その結果、縮小もやむなしという判断に至ったのです。

 太陽電池に関しては、大型の発電施設(メガソーラー)が全国各地で続々導入された結果、景観の悪化や豪雨時の土砂崩れを心配する地域住民とのもめ事が増えているという報道もあります。昨年大きな被害をもたらした鬼怒川の氾濫(はんらん)では、自然堤防を太陽光発電事業者がパネル設置のために堀りくずしたことが被害を拡大させた一因だと被災者らが指摘しています。温暖化対策のための国の制度が、メーカーの業績や自然災害のニュースにかかわってくる。ニュースに幅広く目を通しておくと、そういった「ニュースのつながり」に敏感になることができ、一歩進んだ業界研究や社会人への準備ができますよ。

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