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2016年01月08日

イオン、店舗大改装 総合スーパーの時代は終わった?

流通

イオン、改装を加速 年50店見込み(朝日新聞2016年1月5日朝刊)

 イオンは不振が続く全国画一型の総合スーパー(GMS)について、地域ごとの客が求める品揃えに合わせた売り場にする新しい業態「イオンスタイル」を柱に改装する。年50店ペースを見込む。イオンのGMSは全国に344店。イオンスタイルへの業態転換は2014年から進めていてすでに25店舗あり、売上高は改装前より約1割増えているという。

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 この記事によれば、従来型のGMSは1階が食品、2、3階が衣料や住まい関連などというのが典型でした。こうした店を地域の客層をみながら、高級食材を扱ったり、子ども服を充実させたりと、特性を持たせていくとのことです。たとえば高級住宅、マンション街に近い東京・大田区の「イオンスタイル御殿山駅店」では、衣料品売り場を大幅に減らし3フロアのうち1、2階を食品売り場に。高級ワインや各国のビール、生ハムやチーズなどを充実させています。商品の仕入れも、本部主導の「中央集権型」から、各店舗の裁量の幅を広げる「分権型」にしているそうです。

 スーパーマーケットは日本の高度成長と共に発展していきました。業界団体の日本チェーンストア協会が出来たのは1967(昭和42)年。現在59社が加盟し、年間の売上高は12兆207億円あまり(2014年)。ですが、20年前に比べ3割近く市場規模が縮小しています。「チェーン店で大量に仕入れ、薄利で安売りすることで大量の顧客をつかむ」「大量仕入れによって流通が価格決定権をもつ」というようなGMSのビジネスモデルが、ここにきてしんどくなっているようです。少子高齢化で国内市場自体がやせたうえ、もっと身近なコンビニや、衣料のユニクロ、家具のニトリなど専門チェーンにも市場をさんざん食われています。この記事に先立つ朝日新聞2015年10月9日朝刊には「コンビニ3社最高益 総合スーパー事業は苦戦 8月中間決算」という記事がありました。イオンは1兆3700億円の売上高があるものの営業損益は87億円の赤字。イトーヨーカ堂も売上高8383億円で営業損益は90億円の赤字でした。

 この昨年10月の記事では、2社の対策が書かれています。イトーヨーカ堂を傘下におくセブン&アイ・ホールディングスの社長は「構造改革を徹底し、どうしてもできない店は閉鎖していく」と語っています。不採算の40店は収益改善しなければ5年で閉める方針を明かしています。一方、イオンのGMSを運営するイオンリテール社長は、「店舗の閉鎖は考えていない。ぴかぴかの店に作り替える」と表明。2社の戦略の違いを鮮明にしています。このイオンの“ぴかぴか改装路線”を具体的に書いたのが冒頭の記事です。このようにビジネスモデルの大転換を迫られている業界は、見渡せばけっこうあります。ではどうすればよいか、「それを考えるのは、あなたがた社員一人ひとりです」と、ことしの年頭に社長訓示があった企業も少なくないと思います。総じて言えば、大企業になればなるほど、社員の、自社事業に対する当事者意識は下がる傾向にあるようです。就活でも当事者意識をもって、いろいろな企業のビジネスを観察することが大切でしょう。

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