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2015年11月10日

ついに業界トップ! 伊藤忠の今後はどうなる

商社

首位見通し、今が攻め時 伊藤忠商事の岡藤正広社長(2015年11月10日朝日新聞朝刊)

 「財閥系商社の資源事業が復活するまでに力を蓄え、負けないようにする」。伊藤忠商事の岡藤正広社長(65)は9日の決算説明会で語った。長らく業界首位だった三菱商事が資源安で業績を下方修正したため、伊藤忠が2016年3月期の純利益で初のトップに立つ見通しだ。住生活・情報分野などが収益の柱であることを強みに、「他社が意気消沈している今のうちに攻めていけ」と社内にはっぱをかけている。

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 三井物産、三菱商事、住友商事……いわゆる「総合商社」の名前はよく耳にしても、でも彼らはいったい何をやっているのか、ピンとくる人は少ないのではないでしょうか。一言でいえば「なんでもやっている」のが総合商社です。この欄でも「東南アジア進出の中小向けレンタル工場、大手商社が本腰」(2015年8月28日)、「食品卸大手の国分、丸紅と資本・業務提携へ」(2014年12月12日)など商社の幅広い活動を取り上げています。

 日本の大手総合商社は「七大商社」(三井、三菱、住友、伊藤忠商事、丸紅、豊田通商、双日)と総称されていますが、長年トップの座を争ってきた三井物産、三菱商事のいわゆる財閥系商社を抑えて2016年3月期決算で業界首位に立つことが確実となったのが伊藤忠商事です。奪首のカギは「非資源分野」でした。

 ここ十数年好調だった三菱、三井の業績を支えていたのは資源分野です。三菱は1958年にチリで鉄鉱石開発に乗り出し、三井は1960年代にグループ会社を通じて資源ビジネスを始めるなど長年の経験を積み重ね、中国や新興国経済が急成長した2000年代の資源高で業績はうなぎ登りとなりました。ですが今、中国経済の失速とともに資源価格も下落。そのあおりをうけた両社を尻目に業績を伸ばしたのが、生活資材や情報通信、機械など資源以外の分野に力を注いできた伊藤忠商事です。2010年に社長に就任した岡藤正広氏は長年繊維を扱う仕事にたずさわり、1987年にイタリアの高級ブランド、アルマーニの販売権を得るなど数々の有名ブランドを伊藤忠で手がけてきました。繊維のほか食品、機械など資源以外の分野で業績を伸ばし、社長就任以来目標に掲げてきた財閥系商社打倒の夢を果たしたわけです。もっともこれも、資源価格の低迷という外的要因の助けを多分に借りたもの。岡藤社長は「こんなものは一過性にすぎない」と引き締めをはかっているようです。

 今後の伊藤忠の動きで注目すべきは、ひとつは筆頭株主であるファミリーマートと「サークルKサンクス」を経営するユニーとの統合の行く末です。伊藤忠が主導し、店舗数ではローソン、セブンーイレブンを一気に抜きコンビニ業界トップに。売上高トップの王者・セブンーイレブンを追撃できるかが勝負です。もう一つは中国最大の国有企業グループ「CITIC」への出資。約6000億円を投じての大勝負だけに、成否は会社の浮沈に直結するでしょう。

 総合商社になんとなくあこがれている人も多いと思いますが、それぞれの会社の特性まではなかなかまだ見極められないかもしれません。こういったニュースを軸に、企業研究をはじめていきましょう。

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