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2015年07月31日

出光と昭和シェルが経営統合! 石油業界に何が起きている?

エネルギー

出光、昭和シェルの筆頭株主に 経営統合し業界再編へ(2015年7月31日朝刊)

 石油元売り大手の出光興産と昭和シェル石油は7月30日、経営統合することで基本合意したと発表した。まず、出光が英・オランダ系のロイヤル・ダッチ・シェルから昭和シェル株33.3%を1年ほど後に取得し、昭和シェルの筆頭株主になる。その後速やかに統合する方針だ。ガソリン需要が減ってもうかりにくくなったことが、業界再編を後押しした。両社はガソリンスタンドのブランド名をそれぞれ当面残し、製油所の統廃合もしないという。具体的な統合の条件は今後詰める。

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 ベストセラー小説『海賊と呼ばれた男』(百田尚樹)のモデルとなった出光興産と、貝のマークでおなじみの昭和シェル石油が統合するというお話です。

 石油業界は再編が続いています。国内売上高(連結)1位(2015年3月期で10兆9000億円)のJXホールディングス(「ENEOS」ブランド)は2010年に新日本石油(旧・日石三菱)とジャパンエナジー(「JOMO」ブランドを保有)が合併して誕生。同3位の「ゼネラル」「Esso」「Mobil」ブランドを展開する東燃ゼネラル石油は、2014年に三井石油を買収しています。そして今回の出光と昭和シェルの統合により、JXホールディングスに肉薄する売上高7兆6000億円の企業が誕生することになりました。しかもこの統合はあくまで始まり。記事中で出光の月岡隆社長は「これが最終形とは考えづらい」とさらなる再編の可能性に言及しています。

 なぜ、ここまで再編が進むのでしょう。記事に指摘されているとおり大きな原因は石油需要の落ち込みです。ハイブリッド車の普及など自動車の燃費が向上してきたこともありガソリンをはじめとする石油需要は2000年度をピークに下落、2013年度はピーク時の8割まで落ちました。経済産業省は15年後の需要はいまよりさらに3割減ると見ています。

 ここで問題になるのが「過剰供給」の問題です。原油を製品にする「精製」という作業には、非常に大きな設備が必要です。維持費も高額にのぼるため設備の稼働率が低いと経営が苦しくなるのですが、さりとて需要を超えてじゃんじゃん製造してしまうと値崩れを起こしてしまいます。石油元売り会社の経営悪化は、エネルギー政策を考えると非常にマイナス。経産省は2014年6月に石油元売り会社に対し、製油所の精製能力を2016年度末までに1割減らすよう求めました。

 ただ、すでに元売り各社はかなり精製能力を絞っており、これ以上の削減は難しいところまで来ています。となれば次に打てる手は、効率化を強力にすすめるための業界再編。日本の大手元売り業者は今回の出光、昭和シェルに加えてJX、東燃ゼネラル、コスモと5社ありますが、そもそも数が多すぎるという指摘もあります。出光・昭和シェルは今回の統合で製油所の統廃合はしないとコメントしていますが、統合により事業の効率化が進めば、海外進出や石油化学製品などほかの事業に経営資源を振り向けることもかんたんになるでしょう。

 世の中、市場の流れにどのように対応していくかは、業界の構造によってそれぞれ異なります。ムダを絞って新たな収益源を見つけるために自分の志望業界ではどんな取り組みがなされているかを調べ、その前提条件にはどんなものがあるのか考えるくせをつけましょう。

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