旅客機熱い成長市場 パリ航空ショー開幕 MRJも参戦 (朝日新聞2015年6月16日朝刊)
航空機の世界最大級の展示会「パリ航空ショー」が始まった。旅客機市場は今後20年間で倍増するともいわれる。ショーでは欧米などの有力メーカーがしのぎを削るなか、三菱重工の子会社が国産初の小型ジェット旅客機MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)をアピールする。
航空機の世界最大級の展示会「パリ航空ショー」が始まった。旅客機市場は今後20年間で倍増するともいわれる。ショーでは欧米などの有力メーカーがしのぎを削るなか、三菱重工の子会社が国産初の小型ジェット旅客機MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)をアピールする。
約100年前からほぼ2年ごとに開かれている世界最大の航空ショー。パリ郊外のルブルジェ空港の会場には旅客機や軍用機120機以上が並び、新鋭機やデモ飛行に10万人以上が訪れるといいます。なにしろ、ボーイング社の予測では2014年からの20年間の新たな需要は3万8千機、販売額は計5.6兆ドル(約700兆円)。各社の商談にも力が入るというものです。
わが日本からショーに参戦したのが、三菱航空機のMRJです。記事によればこれまでの需要は400機。森本浩通社長が航空会社にトップセールスするといいます。ところがショーでは肝心の機体はお披露目されず、6月に始まった走行試験の映像を流したり、実物大の客室模型を置いたりしたとのこと。じつは4月9日の朝日新聞朝刊(名古屋本社発行の紙面)に、「MRJ 生みの苦しみ 試験飛行延期 見本市間に合わず『納入時期変更なし』」という記事が載っています。MRJは本来、この見本市に合わせて初飛行をアピールする算段だったのです。
MRJは2008年から開発が進められています。1962年に初飛行したYS-11から約半世紀ぶりの国産旅客機で、しかも今度はジェット機。記事には「航空機の開発は、機体の形や材料、エンジンなど高度な技術を結集した難しい作業。MRJの開発スケジュールの延期は、これで4回目となる」と書いてあります。2013年には「国産ジェット納入17年春 MRJ、初飛行も15年春に延期 当初の4年遅れ 煩雑な手続き、予想以上」(8月23日付朝刊)という記事もありました。当時の社長は、「民間機の開発経験がほとんどないことが響いた」と語っています。民間機の開発では、設計・製造のすべてのプロセスを文章であきらかにし、各部品について、航空当局の安全性のお墨付きである「型式(かたしき)証明」を取らなければならず、膨大な作業があるというのです。
この記事では遅れの原因について煩雑な手続きのほか、「航空機特有のグローバルな生産体制」を挙げています。約90万点のMRJの部品の約7割は海外製。ジェット機の心臓ともいうべきエンジンは米国プラット・アンド・ホイットニー社製、主翼フラップなどは台湾のAICD、ドア部品はフランスのユーロコプターといった具合です。日の丸ジェット機といっても実際は、グローバル・ジェットだったのですね。このように、グローバル化の波はどこにでも押し寄せています。日本経済のグローバル化はいやおうなしです。業界・企業研究にもグローバルな視点を忘れずに。
6月19日の朝刊総合面にも「国産の翼/飛躍なるか/MRJ 新たな産業の柱へ期待/世界へ売り込み懸命、『脱・下請け』国も後押し」が載っています。こちらも読んでみてください。
2024/10/13 更新
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