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2015年05月12日

カセットテープに再び脚光? 「枯れた技術」に鉱脈あり

精密機器・電子機器

磁気テープ再び脚光 大容量化、データ向け急伸 (2015年5月8日朝刊)

 CDやDVDに押され家庭であまり見かけなくなったカセットテープやビデオテープ。同じ仕組みの「磁気テープ」が今、世界のデータセンターで引っ張りだこだ。読み込み時間はかかるが、安くて省エネ性能が高く、寿命も長い点が見直された。生産は日本の3社のみで、膨大な情報が飛び交ういまの社会を下支えしている。

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 むかしはスマホもCDもブルーレイレコーダーもなく、音楽はカセットテープ、テレビ番組はビデオテープに撮って聴いたり見たりしていたものじゃ……。そんな言い伝えを地元の古老から聞いたことはありませんか?(そんなに昔の商品でもないですかね)

 そのカセットテープやビデオテープと同じ仕組みのメディアである「磁気テープ」がいま、世界的に脚光を浴びているという記事です。磁気テープが使われているのは、各種データを保存、運用している「データセンター」。記事によれば、世界のデータセンターで使われている磁気テープの記憶容量は技術の進歩により、2012年から17年にかけて倍増する見込みだとか。使わない時は棚に並べておけばよく、常に電源をつないでいる必要があるハードディスクドライブ(HDD)に比べて圧倒的に電気代を含めたコストを削減でき、寿命もHDDの約10倍の30年というメリットもあり需要が伸びたようです。この磁気テープを生産しているのは世界でも富士、ソニー、日立マクセルの3社のみ。低迷が続く日本のものづくり業界ですが、そんな中でも勇気がわいてくるニュースですね。

 磁気テープのような技術は「枯れた技術」と呼び習わされています。単に古いというだけではなく、長年実際に使われてきたことで様々なトラブルやそれに対する対応も積み重ねられ、安心して使うことができる技術という意味です。日本では東日本大震災以降に大規模データのバックアップの必要性が高まり、データ保存の方法としてこういった「枯れた技術」がクローズアップされた、という流れもありました。震災関連で言えば、ネット障害発生時の通信手段としてファクシミリが見直され、出荷台数が伸びたという話もあります。これも「枯れた技術」の再評価例ですね。

 ファクシミリを巡っては、望まない人にもFAXで商品などのチラシを送る「FAX広告」に関するトラブルが近年急増している、というニュースもありました。(2015年5月6日朝刊「FAX広告、迷惑なのに 緩い規制、苦情5年で倍」)大変迷惑な話なのですが、これもまた「枯れた技術」が再利用されている例、と言えましょう。

 「ゲーム&ウオッチ」「ゲームボーイ」など数々の革新的な商品を送り出した元任天堂の横井軍平さん(1941-1997)は、「枯れた技術の水平思考」という哲学を持っていました。一見時代遅れになったように見える「枯れた技術」を組み合わせ、今までなかった使い道を考えることでヒット商品を生み出す――という考え方です。昨年ヒットした「妖怪ウォッチ」も、妖怪というむかーしからあるコンテンツに現代風のアレンジをくわえることで、記録的な人気コンテンツに成長しました。

 みなさんの志望業界、業種にも、一見時代遅れになったような技術や商品はありませんか? もしかしたらそこに、宝の山が眠っているかもしれません。「枯れた技術」をヒット商品に引き上げるためには、「組み合わせ」の妙を追求すること。そのためには、視野を広くもち様々な分野にアンテナを張ることです。新聞にすみずみまで目を通すことは、そんな視野の広さを養うことにもつながりますよ。

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