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2017年01月17日

高齢化・人口減に苦しむビール業界

食品・飲料

縮むビール出荷、初の全3種減少 合計は最低更新

 「ビール」「発泡酒」「第3のビール」の2016年の出荷量が、初めてすべて前年割れになりました。日本は、高齢化と人口減が進んでいます。ビールのように量を飲む酒の消費は、味や値段にかかわらずどうしても減ってしまいます。加えて、若者はチューハイやハイボールを好むようになり、ビール離れの傾向が見られます。業界は海外市場に活路を求めつつ、ビール以外の商品にも力を入れようとしています。

(2017年1月11日朝日新聞デジタル)

ピーク時の70%に

 ビール系飲料が最も飲まれたのは1994年です。この年を100とすると今は70くらいに落ちています。ただ、業界はビールが落ちれば、値段の安い発泡酒を伸ばし、発泡酒が落ちればさらに安い第3のビールを伸ばして落ち込みをとどてきました。しかし、ここにきて第3のビールも減少し、底支えするものがなくなってきました。

若者は最初からチューハイ

 基本的な原因は、高齢化と人口減です。年をとると、多くの人が酒量が減ります。特にビールのようにごくごくと飲む酒は、若いころに比べて飲めなくなる傾向があります。一方で、若者は「とりあえずビール」とは言わず、最初からチューハイやハイボールを飲むようになったといわれます。高齢者は飲む量が減り、若者は最初から飲まないのだから、減ってくるのは当然です。

税率変われど減ることは変わらず

 これまで発泡酒や第3のビールが伸びてきたのは、ビールより酒税が安かったためです。しかし酒税は、2020年度から2026年10月にかけて、3段階の変更を経て一本化されます。

 その結果、ビールの値段は今より安くなり、発泡酒は少し高くなり、第3のビールは高くなります。当然、今よりビールが飲まれる割合が増え、発泡酒や第3のビールは減るでしょう。ただ、人口動態から見ても、国内のビール系飲料全体の消費が減ることに変わりはなさそうです。

(写真は、各社のビール系飲料が並ぶスーパーです)

内需業界からグローバル業界に

 ビール業界は海外進出を進めています。昨年12月には、アサヒが世界最大手のアンハイザーブッシュ・インベブから東欧5か国でのビール事業を約9000億円で買収しました。10月には、西欧のビール4社を約3000億円で買収しました。

 キリンも2009年にオーストラリアのビール会社を、11年にブラジルのビール会社を、15年にはミャンマーのビール会社を買収しました。フィリピンのビール会社に出資もしました。

 サントリーは、14年にアメリカの蒸留酒大手ビーム社を約1兆6千億円で買収しました。国内のビール事業が縮小していくことをにらんで、海外でのビール事業や酒類事業を強化する動きです。かつてビール会社は内需業界とみられていましたが、これからはグローバル業界になりそうです。ビール会社に就職すると、海外勤務が当たり前になるかもしれません。

 ビール業界の動きは、これまでの「今日の朝刊」でもたびたびとりあげていますので、あわせてご紹介します。

●アサヒが東欧で大型買収 ビール大手の世界戦略を知ろう(2016年12月14日)

●品薄に商機あり!サントリー、アサヒ、キリン競う(2016年7月6日)

●ビール業界、海外展開での「勝ち組」を決算で知ろう!(2016年2月16日)

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