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2015年05月08日

スカイマーク再建 ANAとJALつばぜり合いの理由は?

運輸

翼の再建 呉越同舟 スカイマーク支援の裏で(2015年5月5日 朝刊)  

 民事再生法の適用を今年1月に申請したスカイマークの再建に、ANAホールディングスが決まった。スカイマーク再建は投資ファンドのインテグラルとANAの“2頭立て”体制に委ねられた。

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 この記事はスカイマーク再建の背景をめぐる解説です。スカイマークにANAの支援が決まったのは4月22日。出資比率はインテグラル50.1%、金融機関含むANA側49.9%(ANA自体は最大19.9%)。社長はANAから、会長はインテグラル側から出る予定です。スカイマークは20年前、国内航空の2強、ANAとJAL(日本航空)の間に低料金を武器に割って入り、航空界の「第三極」を目指しました。しかし、欧州のエアバス社の超大型機導入計画など無謀な拡大路線が失敗するなどして経営破綻(はたん)したのです。

 スカイマークは1月の破綻寸前にANAに支援要請を断られ、万策(ばんさく)尽きた経緯(けいい)があり、ANAは2月にもスカイマークを事実上傘下におさめる厳しい支援策を突きつけていました。記事は、ANAがスカイマークに固執(こしゅう)する理由として、ANAの社長の「競合他社(日本航空)にスカイマークがもつ(羽田空港の)発着枠を取られては困る」という発言を紹介しています。一方のインテグラルは当初、「航空会社の支援は必ずしも必要ない」としていましたが、記事は、方針転換には大口債権者である米航空機リース会社からのANAの参画を促す書簡があったと内幕を明かします。

 この再建の裏にはJALとANAのつばぜり合いがありました。じつは、スカイマークは破綻寸前の昨年11月初旬からJALと共同運航を含む幅広い業務提携を交渉していたのです。一連のスカイマークをめぐる駆け引きは、朝日新聞で2月11日から14日まで経済面で4回連載された「けいざい深話 折れた翼」に詳しく書かれています。共同運航でJALが手に入れるのは、先にも書いた「ドル箱路線である羽田空港にスカイマークが持つ1日36便の発着枠」でした。これに待ったをかけたのが国土交通省。2010年に経営破綻したJALは民主党政権下で国の主導による再建を果たし、現在も税金面などで優遇措置を受けています。そこで国交省は2017年3月までJALは新たな出資はできないとする“縛り”を設けました。事実上のグループ化は、これに抵触(ていしょく)するというわけです。

 どうです。スカイマーク再建の裏には、さまざまな利害がうごめいているんですね。再建策が決まったというストレート・ニュースだけでなく、解説記事や連載を読むことで、航空業界への理解がぐっと深まるでしょう。新聞は、「もっと知りたい」という読者のニーズに応えようと、さまざまな形で情報を提供しています。その日のニュースを押さえるだけでなく、そのニュースがどう展開していくか、どういう経緯で登場したのかにも注目してくださいね。

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