SDGsに貢献する仕事

日本ガイシ株式会社

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  • 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 住み続けられるまちづくりを
  • 気候変動に具体的な対策を
  • 海の豊かさを守ろう

日本ガイシ〈後編〉技術活用し再エネ普及めざす 新規事業積極的に後押し【SDGsに貢献する仕事】

2024年02月28日

 SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」の第14回、大手セラミック製品メーカー・日本ガイシの後編をお届けします。主力製品である大容量の蓄電池、NAS電池をつかって再生可能エネルギーの普及とビジネス化を模索。伝統ある会社ですが、既存事業にこだわらず新しい挑戦も後押しする社風があるといいます。(編集長・福井洋平)

(前編はこちらから) 

(冒頭のSDGsアイコンは、日本ガイシが重視するゴール)

【お話をうかがった社員のプロフィル】
●寺中万智(てらなか・まち)さん=左
ESG推進部 環境経営グループ
2017年静岡大学工学部卒業、同年技術職として入社。製造技術統括部で生産技術開発に携わる。2022年から現職。

●坂東克起(ばんどう・かつき)さん=右
NV推進本部ビジネスクリエーション バッテリーソリューション
2017年北海道大学農学部卒業。メーカー、専門商社を経て2022年7月に日本ガイシ入社。

蓄電池をつかって地域のレジリエンスを高める

■電池をつかった新しい事業
 ──坂東さんは大容量の充電ができる「NAS電池(写真)」を使ったビジネス開発にかかわり、新規事業として地域新電力「恵那電力」の立ち上げに携わっています。そのほかには、どのような事業をされていますか。
 坂東 恵那電力は自治体支援として始まりましたが、そこで得た知見を全国拡大していこうという形で取り組んだのが、企業版ふるさと納税です。ふるさと納税の物納制度を使い、NAS電池を自治体に寄付する取り組みです。
 再エネと蓄電池があると自治体が災害時に電力を確保できるので、レジリエンス(災害を予防し、そこから回復する力)の強化にもつなげられます。マイクログリッドという自営線で複数の施設をつなぎ、そこに再エネ電源、蓄電池を置いて、通常時は再エネ導入でCO₂排出量が下げられます。さらに災害時に電気が外から来なくなってしまっても、このエリアだけは蓄電池から電気を供給できます。
 こういった取り組みについて非常に危機意識を抱いている自治体にお声がけし、弊社の取り組みに理解をいただいたのが北海道の東川町と秩父別町でした。

 ──実際やってみて、思った以上のインパクトがありましたか。
 坂東 そうですね。住民の方を対象に「災害時に電気を使えることにどれだけの価値を感じるか」というアンケートを取ったところ、金額に換算して大きな額が出ました。

IoT技術で再生エネルギーをより使いやすく

■VPP(仮想発電所)事業
 ──「VPP事業」というのも手掛けていらっしゃいます。
 坂東 電力ビジネスから派生して、プリンターで有名なリコーさんと日本ガイシの合弁企業として「NR-Power Lab」という研究開発型の会社を立ち上げました。そこで事業開発しているのがVPP(仮想発電所)事業です。
 これまでは一か所にどーんと大きい発電所があり、そこから各所に電気が供給される一方通行の電気の流れでした。今は分散電源という形で、これまで電気を使う側であった各所にも小さいながらも蓄電池であったり、家の屋根にある太陽光発電であったりと、発電のリソースがいろいろなところにあり、電気の流れが複雑化しています。流れが複雑化する中で求められるのが電気の調整力であり、それらのリソースをデジタルの力、IoT技術で束ねると1つの仮想発電所となるのです。
 一例として、発電事業者はどれだけ電気を供給するか、小売事業者はどれだけ電気を必要とするかという計画を立て、計画と実際にずれがあるとインバランスコストというペナルティー費用を払う必要があります。このリスクに対して、束ねたリソースをIoTの力で調整し、インバランスコストを回避するなどの調整力を提供し、サービス料を対価として得るという事業化に取り組んでいます 。

 ──リコーはどういう技術を提供しているのですか。
 坂東 リコーさんは恵那電力でも再エネの発電、消費、蓄電池の充・放電をブロックチェーン技術でトラッキングしていただいています。再エネがどこでどれだけ発電し、消費されているかを全部見える化できる技術を持っていますので、その技術を活用しています。
(写真・恵那電力吉田発電所のNAS電池=日本ガイシ提供)
 ──仮想発電所として運営できる形にするにはハードルがありますか。
 坂東 技術的には可能と踏んで開発に取り組んでいますが、それで収益を上げられる事業にするのが一番ハードルが高いかもしれません。


 ──VPP事業は再エネの拡大にも寄与しますか。
 坂東 先程も一例で挙げましたが、今の電気は「同時同量」と言われるように、発電と需要が常に一致していないといけませんが、太陽光発電が拡大することで一致させるのが難しくなってきています。そうした中でVPPサービスを拡大することで、同時同量を実現させやすくなると思います。系統内が混雑することも少なくなれば再エネを導入する余地ができ、いま以上に再エネを導入しようという動きにもつながると考えています。

 ──NAS電池というのは本当にここまでの未来を予測してできた技術だったんでしょうか。レアアースを使わないというのも大きな取り組みでしょうか?
 坂東 開発当初はここまでとは予想していなかったと思います。レアアースを使わないのは強みですし、リチウムイオン電池は海外で製造されていますが、NAS電池は純国産なので、そういった面でも良さがあると思います。

自治体の一番の課題に寄り添う解決を

■今後の目標
 ──最終的には、地域課題の解決が大きな目標となりますか。
 坂東 そうですね。今、中心にやっているのが恵那電力に代表される「再エネの地産地消」「地域マイクログリッドでのレジリエンス強化」です。ただ、こういった提案をしても、レジリエンスや再エネの価値をどれだけ自治体が理解して、どれだけ予算を出すことができるかというと、まだハードルは高い状態と思います。
 総論としては賛成、「これをやらなきゃいけない」とみなさんが思ってくれている中で、なぜハードルが高くなっているのかを考えないといけません。やはり自治体にとっての第一優先は住民が快適に暮らせる環境作り、産業を衰退させない、税収を増やしたいといったことです。第1次産業との融合とか、モビリティとの融合とか、自治体の一番の課題である部分に寄与できる取り組みを電池や再エネという我々の技術を用いて広げていくことが、今後の目標となっています。

 ──今、計画段階のものはありますか。
 坂東 第1次産業との融合はいま、いろいろな事業者にヒアリングしています。農業関連では植物工場だったり、モビリティ関連ではローカル鉄道に、再エネ+蓄電池 でソリューション提案できないかを考えています。

 ──ベンチャー企業のようななお仕事ですね。
 坂東 そうですね。バッテリーソリューション自体に決められたやり方がなく、新しい可能性を探っていく部署です。私自身も営業マーケティングという役割で自治体や事業者にヒアリングをしていますが、結構自由度が高くやっています。非常に楽しく、やりがいを持って課題解決の最先端を進んでいます。

やりたいことをフォローしてくれる会社

■寺中さんの就活
 ──寺中さんは新卒入社ですね。就活はどういう会社を見ていましたか。
 寺中 もともと私は大学の工学部出身で、ロボットの作成実習などをしていました。車輪が付いたロボットを動かして、時間内に風船をいくつ割れるかを競うロボット大会があるのですが、チームでどんなロボットを作るか試行錯誤する中で、モノづくりってすごく面白いなと。製造業に行きたいという中の一つとして、日本ガイシがありました。

 ──もともとモノづくりがお好きでしたか。
 寺中 大学時代が一番楽しく、モノづくりにすごく興味を持った時間でした。ロボット作成実習もそうですし、レーザーを照射したら固まる樹脂の照射条件を考えたりもして、楽しかったです。

 ──メーカーにはロボット、自動車、電子といろいろとあると思うんですけど、どれぐらいの業種を回られたんですか。
 寺中 業種というか、愛知県の製造業メーカーが集まる就活イベントを全体的に見て回り、その中で世界シェアを取っている製品などをチェックしました。地元が岐阜県なので、愛知県で就職したかったという気持ちもありました。

 ──研究職で入りたいという気持ちはあったんですか。
 寺中 絶対に研究というわけではなく、生産技術に関わることもおもしろそうだなと思っていました。
 ──日本ガイシを選んだ決め手は何だったんですか。
 寺中 第一の決め手は、ハニセラム(写真)の軽さです。似たようなものを作っている会社もあったのですが、両方の製品を持ってみたときに日本ガイシのハニセラムはすごく軽かったんです。それだけすごい技術力のある会社なんだな、と感じました。私が高校生のときに東日本大震災があり、再生可能エネルギーへの移行を進めていくべきだという時代の流れも感じていたのですが、日本ガイシにはNAS電池なども手がけて、再生可能エネルギーに注力していることも決め手でした。

 ──日本ガイシの働きやすさはどうですか。
 寺中 働きやすいと感じています。就活の際に女性社員懇親会があり、みなさん笑顔で仕事について話されている方ばかりでした。実際に入ってみて本当に楽しいと感じていますし、一緒に働くみなさんも温かいといいますか、すごくフォローしてくださるので、いい環境だと感じています。
 ──どういうところが、みなさんの笑顔につながっていると思いますか。
 寺中 「こうした方がいいんじゃないか」というところを聞いてもらえるのがあると思います。意見を跳ね返されるのではなく、話したことを聞こうとしてくれる、フォローしてくれるというところがあります。やりたいことと軌道修正を助けてくれる会社なので、そこが楽しくできるところにつながっているのかなと思います。

 ──福利厚生面でアピールしたいことはありますか。
 寺中 私の入社時、実家から通えない新入社員は基本的に借り上げのマンションに住めて、補助も出ました。同期と同じマンションで、しばらく一緒に住めるようにという配慮がすごくありがたかったです。

新規事業への取り組みも積極サポートしてくれる

■坂東さんの就活
 ──坂東さんは新卒のときは何年入社ですか。どういう就活でしたか。
 坂東 新卒時は2017年入社です。僕も理系の農学部でしたが、あんまり大学で研究にはまらず、就職するなら営業がやりたいと思いました。これから長い時間働く中で、いろんな人に会って刺激を受けそうだな、というイメージでした。業界は絞らずに、いろいろと説明会を見て回り、最初は鉄鋼の専門商社に就職しました。金額規模も非常に大きく、さらにあらゆるところで使われている鉄を扱うので面白そうだと思いました。

 ──そこから前職に転職されたきっかけは。
 坂東 仕事は楽しく、やりがいもありましたが、上司やさらにその上の方の働き方をみて将来像に少し不安があり、転職活動を始めて前職の水処理薬品の会社に入社しました。もともと自分が奈良県の北葛城郡という田舎育ちで、大学も森林科学科でした。「自然環境を絶対にやりたい」と思っていたわけではないんですけど、興味はありました。

 ──日本ガイシが3社目ですが、働きやすさはどうですか。
 坂東 今までの会社でもフレックス制度はありましたが、制度としてあるだけ機能していませんでした。日本ガイシではみな積極的に、子どもや家の都合で使っています。僕も子どもがいますが、熱が出て病院に行ったり、保育園に送ったりと融通がきくので働きやすいなと思います。

 ──日本ガイシの良さは、どういうところですか。
 坂東 先ほど話にでたのですが、主力製品であるハニセラムがなくなるのではないかという危機意識をしっかり持って、その上で我々のような新しいことに取り組む部署のこともサポートし力を入れてくれるところです。これから時代の変化がいろいろある中で、その変化に応じて変わっていこうとするところが見えるのがすごいと思います。
 ──社風についてはどう感じていますか。
 坂東 寺中さんも言っていましたが、この会社では話を突っぱねる人はあんまりいないなと思います。社長も社食でご飯を食べますし、「何でも言える雰囲気」があります。社長も「失敗を恐れずに挑戦を」と言っていますし、とにかくやってみようという社風です。経営層と距離が近いですし、話す機会もあります。

 寺中 以前、下の階に向かうためエレベーターに乗ろうとしたら、なかに人がいっぱいいたので、乗るのを遠慮したんです。そうしたらある役員の方が「乗りなよ」と自らちょっと場所を空けてくださった。ギュウギュウになったけれども乗せてもらいました。そういう優しい方がいっぱいいます。

■普段の生活とSDGs
 ──お二人が普段からSDGsに気を付けていることは。
 寺中 この部署に来てから、エアコンの温度設定は家でも気をつけるようになりました。会社では全社的に空調の温度設定を調整して、消費電力を減らす省エネを強化しています。そこでやっぱりCO2排出量に改善効果があると分かったので、「こんなに効果があるんだったら、絶対に家でもやったほうがいいな」と感じています。

 坂東 今の業務につくようになって、「無駄な電気は消そうかな」「余計な紙の印刷はやめようかな」ということに気づきました。それから家を買うときには屋根に太陽光パネルを載せようかなと考えるきっかけになりました。

(インタビュー写真・谷本結利)

SDGsでメッセージ!

■学生へのメッセージ
 寺中 NGKは100年以上前の創立時からSDGsとかなり親和性の高い理念で事業を展開しています。みなさんはちょうど今、SDGsという考え方とかなり近いところで生活をしていると感じます。今後のNGKが2050年、また2050年以降も持続可能な企業として事業を展開していくためには、みなさんの力が重要になってきますので、その将来を一緒に作っていけたらと思います。ぜひ、お待ちしております。

 坂東 私は今、地域の課題解決に向けて再生可能エネルギーと蓄電池を使った脱炭素に向けたソリューションの提案を行っています。今まで製造業ということで、NAS電池を販売してきましたが、そこから一歩飛び出して、地域の課題を直接現地でヒアリングすることで、課題解決を模索しています。非常にやりがいもありますし、チャレンジングです。日本ガイシというのはそういったチャレンジングな仕事を後押ししてくれる環境が整っていますので、ぜひ選択肢の1つとして考えてください。

日本ガイシ株式会社

【メーカー】

日本ガイシは1919年の設立以来、独自のセラミック技術を駆使し、社会課題を解決する製品を数多く提供してきた総合セラミックメーカーです。 カーボンニュートラルとデジタル社会の2分野に注力しており、世界20カ国以上で活動しています。 再生可能エネルギーの効率利用に寄与する大容量蓄電システムや、世界のIoT化を支える小型・薄型のリチウムイオン二次電池など、 革新的な製品やサービスの提供を通じて持続可能な社会の実現に貢献します。