
──部署に配属された2年間で、そうした計算やデータベースの構築をされてきたのですか。
寺中 はい。ほかの業務を担当しながら各事業部からスコープ3算定に必要な情報を集めて、スコープ3削減に向けての準備をしていました
今の部署にきて1年目は、CDPという国際的な非営利団体に対し、二酸化炭素排出量や気候変動への取り組みに関する質問に回答する形で情報開示、評価を得る業務を行っていました。また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)という気候変動に対する企業の取り組みの現状や、シナリオ分析に沿った機会やリスクなどを具体的に開示する枠組みに沿って分析や開示を行う業務に携わりました。
例えば、当社の自動車排ガス用セラミックスは空気を浄化する装置ですので、内燃機関が中心の現在では環境に貢献する製品であると考えています。ですが、今後EV化がどんどん進むとこれは必要がなくなります。そのため、今の内燃機関関連の需要は減少する リスクがあるのです。
逆にNAS電池や亜鉛二次電池「ZNB」のような蓄電池の需要はこれからどんどん拡大していくでしょうから、会社にとっては機会になります。そうしたリスクと機会をそれぞれ検討し、気候変動によって会社にどのぐらいの影響があるかを明確にしてウェブサイトで公開しました。
これはもちろん私1人の力ではなく、社内の多くの関係者の力も借りました。TCFDに沿った情報開示によって、外部からもいい評価をいただきました。
──同業、もしくは同規模の会社でTCFDに沿った情報を開示しているというのは。
寺中 多くの企業が分析を進めていますが、「内燃機関自動車向け製品の需要が減少したら、2050年には2,000億円規模の売り上げが減少」「蓄電池の需要が拡大したら、2050年には700億円規模の売り上げが期待できる 」と具体的に可能性がある財務影響額を公開している会社は、まだ少ないのではないかと思います。
──TDFDに取り組むなかで、日本ガイシの未来は見えまましたか。
寺中 今までは排ガスを除去する「ハニセラム」などの自動車関連製品が気候変動を通してそこまで影響を受けるものという認識がなかったのですが、財務影響額まで分析することで、既存の製品に頼らず新製品を開発していくことの重要性を痛感しました。社会の要請や期待に順応して、どんどん新しい価値を出していくということが会社を持続させ、かつ社会に対しても重要だと再認識しました。