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三井化学株式会社
三井化学〈後編〉お客さんと課題解決し達成感 CO₂排出多い化学メーカーこそSDGs必須【SDGsに貢献する仕事】
2023年03月22日
(前編はこちら)
(冒頭のSDGsアイコンは、三井化学がとくに重視するゴール)
【お話をうかがった社員のプロフィル】
●山﨑孝史(やまさき・たかし)さん(写真左)=研究開発本部 高分子・複合材料研究所 モディファイヤーグループ
2014年、東北大学大学院理学研究科化学専攻(研究テーマ:カーボンナノチューブモデル分子の有機合成修了)同年入社し現職。接着性樹脂「アドマー®」の研究開発に従事。
●徐瑛加(じょ・えいか)さん(写真右)=ベーシック&グリーンマテリアルズ事業本部 フェノール事業部 フェノールグループ
2021年、慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科(研究テーマ:企業とSDGs、コロナとSDGs、など)卒、同年入社し、基礎化学品「フェノール」担当として営業・生産計画策定などを担う。フェノール事業部のバイオプロジェクトリーダーとしてバイオ製品の営業・マーケティング活動も。
化粧品チューブのバイオマス化 店頭で見て「やった感」
──仕事のやりがいや面白さは?
山﨑 お客さんと直接やり取りするので、一緒に課題を解決した達成感を味わえるところです。お客さんの要望を受けて、バイオマス原料を使ったアドマー®の製品開発を始めました。有名化粧品メーカーのクリームや日焼け止めのチューブに使う樹脂で、それをバイオマス化したいと。今までと同じような使い心地と見た目にしてほしいと言われたのですが、バイオマス原料にすると変わる部分があって、最初はなかなか要求を満たすものができませんでした。
──チューブは何層あるのですか。
山﨑 そのチューブは3層で全体の9割以上にアドマーを使います。大量に使う分、それをバイオマス化できれば一気にバイオマス度を上げることができる、と開発を始めたのですが、内容物を入れると圧力がかかってパンクしてしまう可能性がありました。お客さんと一緒に試して、フィードバックをもらって繰り返し作って、丸1年くらいかけてなんとか完成しました。カネボウさんの「ALLIE」という商品に使用されるチューブで、コンビニやドラッグストアに置いてあるのを見ると「やった感」を味わえます。友達と一緒に行くと、「私が作ったんだよ」と(笑)。
──何人で作ったのですか。
山﨑 どういう樹脂をどう組み合わせるか、料理長のような立場で、レシピを考えるのは私一人です。その他、実際に作る人、チューブやフィルムを成形する人、外部の分析会社で接着力やパンクのしにくさを測定してくれる人、いろんな人の手を借りて最終的な製品化までは漕ぎ着けました。
──ご苦労は?
山﨑 10~20件の開発を並行して進めています。アドマーの市場は幅広く全世界に渡るので、いろんな案件を優先順位をつけて同時に進めるのは苦労するところです。
──1件にかかる期間は?
山﨑 長いと10年くらいかかります。市場に出始めた後に、どんどん要求される性能が上がり、今も開発を続けているものもあります。
バイオへの熱意評価され、2年目でプロジェクトリーダーに
──徐さんのやりがいは?
徐 私が入社したタイミングで「クラッカーにバイオマスナフサを投入する」という話があり、実際に2021年12月に投入されました。私はフェノール事業部の中で、フェノール系のバイオ商品を市場に普及させるプロジェクトのリーダーを務めています。
──2年目でプロジェクトリーダー!?
徐 私が一番下で、年次の上の方が6人いるプロジェクトですが、バイオへの関心や熱意があるからと抜擢していただきました。チーム内でお客さんにバイオ化の提案をしに行くときは「私、行きます」と率先して手を挙げていて、事業部全体のプロジェクトになったときに任命されました。大学時代からの興味を仕事に取り入れられていて、すごく今は楽しいです。
──やる気に加えて、かなり勉強したのでしょうね。
徐 お客さんに説明する機会が多かったので、知識を蓄える必要がありました。ある程度、場数も踏んで知識を持っていたので、それもあったのかなと思います。
──バイオマスナフサはどの程度普及しているのでしょう。
徐 日本でバイオマスナフサ原料の導入を最初に始めたのは弊社です。2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げているので、その取り組みの一環だと思います。
ただ、私たちのお客さんには川中に位置する化学メーカーが多く、アドマーのようにバイオマスのニーズがまだまだなく弊社が先取りしている形です。去年は海外のお客さんにバイオフェノールを出荷しましたが、お客さんを探している段階で、国内はこれからです。
──大変なことは?
徐 まだお客さんからのニーズが少なく、こちらからさまざまなアプローチを考えなければいけません。お客さんへの説明はもちろん、化学品関係の連盟や協会にプレゼンしたり、マーケティング活動を進めたりしています。自動車メーカーなどのブランドオーナーの方々は、川中のお客さんよりカーボンニュートラルに敏感です。当社の専門部隊であるグリーンケミカル事業推進室とともに、ブランドオーナーに直接ご紹介するなど、連携しながらいろいろな方策を考えるのが大変なところです。
──どんなところにアプローチを?
徐 自動車や化粧品業界、食品包装材のメーカーです。必ずしもフェノールが使われるわけではないメーカーにも行き、川下のニーズの状況や情報の収集をしています。一番川下の消費者に近いところにアプローチして、そこからさかのぼって持っていかないとなかなか進まないと思います。
■大学時代の研究
──大学時代の研究とのつながりは?
山﨑 今は高分子をやっていますが、大学でやっていたのは低分子で全く逆でしたね。有機合成を専門にしていたので入社面談のときには農薬の研究など、有機合成のスキルを活かせるところで働きたいと思い、グループ企業の三井化学アグロを志望していました。面談で「お客さんとも話して、お客さんの課題を解決したい」と伝えたので、その意図と適性を汲み取って、今の部署に配属されたのかなと思います。今となってはこの部署で良かったと思っています。
──なぜお客さんと話したいと?
山﨑 細かい改良や、こうしたらこう良くなるという作業を繰り返すのが好きな性分でした。その成果を世の中に出すには、研究室にこもってフラスコを振っていてもしょうがない。お客さんと話をして、お客さんの課題を解決すれば、それが世に出て社会貢献ができると思ったんです。
──入社当時はSDGsという言葉もなかったころですが、今、環境対応がメインになっていることをどう感じていますか。
山﨑 さまざまな業界各社から多種多様な環境対応製品が発表される激変の時代の中、環境対応の開発を行うことはプレッシャーでもあり、研究者としての腕の見せ所でもあると感じています。
SDGsに関心が強く、バイオマスがほしいし、リサイクルもできないかとお客さんからの問い合わせを受けて開発をスタートしました。お陰で接着樹脂の業界の中でいち早く環境対応に取り組むことができた、そのチャンスには恵まれていたと感じています。それを製品化までこぎつけ、形にできたので達成感もあります。
──徐さんは学生時代からSDGsに関わっていたんですね。
徐 企業の事業活動やSDGsへの取り組みを評価して提言する活動をしていました。たとえば持続可能な森林の利用と保護を図るFSC認証(森林認証制度)とかフェアトレード認証をSDGsとひもづけられないかといった研究もしていました。
──どうしてSDGsに関心を?
徐 中学時代のサマーキャンプや大学でのオーストラリア留学で海外の人と関わり、環境意識の高さに影響を受けました。大学1年次に蟹江先生の授業でSDGsについて知り、こんな画期的な枠組みがあるんだと思いました。当時は全然盛り上がっていなかったので、何か研究ができたら面白いなと。
川上の化学製品には大きなポテンシャルが
──どんな就活をしたのですか。
徐 就活の軸は二つあって、英語と中国語がしゃべれるので、それを生かしてグローバルに活躍できる仕事。もう一つはSDGsや環境・地球を守ることに事業で貢献している会社です。2019年の年末に留学から帰国してすぐにコロナが始まり、見学やインターンにも行けずに始まった就活でしたが、この2軸で探して、メーカーや商社を見ていました。
──なぜ化学メーカーに?
徐 化学業界に着目したのは、二酸化炭素(CO₂)の排出量を削減するには、まずは化学業界が変わる必要があると思ったからです。産業の基盤で、なくてはならないのにCO₂を多く排出している。SDGsを学びかつ就活をする中で、カーボンニュートラルを早急に進める必要があると。そこに入社すれば何か面白いことができる、直接アクションを起こしてSDGsに貢献できると考えました。
──三井化学を選んだ決め手は?
徐 三井化学を選んだのは、人を見てくれたことが一番大きいですね。他社だと15分、20分のWEB面接で学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)を形式的に聞かれて終わりというところが結構ありましたが、三井化学は、1次面接が40分、最終面接が40分×2回とじっくりと、ガクチカ以外の経験や性格面を見てくれましたし、面接でも社員の雰囲気や会社としてSDGsやカーボンニュートラルに取り組む姿勢が分かり、入社を決めました。
──地味なポジションのBtoB企業ですね。
徐 BtoC(消費者向けビジネス)のようにマーケティングの仕事はないかもしれないと思いましたが、お客さんが企業なので知識を持っている方が多い。交渉にもスキルがないといけませんし、成長できる環境があります。
化学は川上の製品で、自分が携わるものがいろんな業界で形を変える点も面白いですね。BtoCだと製品が固定化され絞られますが、化学製品にはすごくポテンシャルがあります。たとえば自動車に使われるプラスチックだけでなく、風力発電のブレードとか。川下まで行けば界面活性剤と全然違う業界じゃないですか。いろんなお客さんがいるので、いろんなお話が聞けて、飽きないというか楽しめます。
■社風
──どんな社風ですか。
山﨑 若手にも任せてくれる裁量、その範囲が広いと感じます。上から「この配合で実験をやって」と言われることもなく、自分でどういう実験をするか考えて組み立てます。上司や同僚に相談しても否定されることはありません。逆に「これもやってみたら」とアイデアを出してくれます。周りも支援してくれるし、自分のやりたいことができる裁量が広いんです。
徐 自分の意見をしっかり持った人が多いですね。他社だと社風に合った似た人が多いかもしれませんが、当社にはいろんな考え方を持った人がいて、多様な視点から刺激を受けます。同期を見ても十人十色で、留学に行っていた人もいれば、地方の大学で自然に親しみながら全然違う分野を学んでいた人、性格も明るい人から落ちついた人、突拍子もない考えの人とか、いろいろです。
(写真・植田真紗美)
SDGsでメッセージ!
SDGsに興味がある人は、改善点を意識するといいと思います。個人が取り組める環境対策はエコバッグの使用やポイ捨てをしないことくらいの小さなこと規模かもしれません。ですが会社の観点で考えれば、ゴミを回収して、それを新たな製品にできるかもしれません。この会社だったら何ができるかと企業研究して知見を広げるのがいいと思います。当社には、やりたいことをサポートする体制が整っています。実現に向けみんなで考える体制です。「これがやりたい」というアイデアや熱意がある人に入ってもらえると嬉しいです。(山﨑さん)
化学業界は地味なイメージかもしれませんが、だからこそできることがたくさんあります。そこに着目して魅力を感じたら、ぜひ当社に来てください。化学業界だからこそSDGsに取り組まなければいけません。会社としてかなり力を入れているので、いろんな経験ができて楽しいと思います。CO₂をたくさん排出しているけれども、インフラとして生活基盤を支えている。だから改プラや様々さまざまなソリューションにエネルギーを使い、どうアプローチするかを考えています。その一員として、じかにSDGsに貢献する実感を持てるのは化学メーカーならではだと思います。(徐さん)
三井化学株式会社
【総合化学メーカー】
三井化学は自動車、電子・情報、健康・医療、包装、農業、建築・建材、環境エネルギーなど、幅広い領域でグローバルに展開する総合化学メーカーです。
化学技術をベースに、人々の生活をより豊かにする製品・サービスを生み出し、環境問題や食糧問題、高齢化社会といった地球規模での社会課題に対してソリューションを提供し、グローバルにビジネスを展開しています。
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※就活割に申し込むと、月額2000円(通常3800円)で朝日新聞デジタルが読めます。
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