SDGsに貢献する仕事

三井化学株式会社

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三井化学〈前編〉マヨネーズボトルも自動車部品も 「脱プラ」から「改プラ」へ【SDGsに貢献する仕事】

2023年03月15日

 SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」の第6回は、総合化学メーカーの三井化学です。私たちの生活に欠かせない一方、環境に負荷を与えているプラスチック。同社は、「脱プラ」には限界があるため、石油由来ではなく環境に良い素材を開発する「改プラ」を掲げて業界をリードしています。若手社員の仕事にも、サプライチェーンの上流を担うBtoB(企業間取引)ならではのSDGsへの貢献がありました。(編集長・木之本敬介)

(冒頭のSDGsアイコンは、三井化学がとくに重視するゴール)

【お話をうかがった社員のプロフィル】
●山﨑孝史(やまさき・たかし)さん(写真左)=研究開発本部 高分子・複合材料研究所 モディファイヤーグループ
2014年、東北大学大学院理学研究科化学専攻(研究テーマ:カーボンナノチューブモデル分子の有機合成修了)同年入社し現職。接着性樹脂「アドマー®」の研究開発に従事。
●徐瑛加(じょ・えいか)さん(写真右)=ベーシック&グリーンマテリアルズ事業本部 フェノール事業部 フェノールグループ
2021年、慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科(研究テーマ:企業とSDGs、コロナとSDGs、など)卒、同年入社し、基礎化学品「フェノール」担当として営業・生産計画策定などを担う。フェノール事業部のバイオプロジェクトリーダーとしてバイオ製品の営業・マーケティング活動も。

社会課題に取り組むDNA バイオマス原料とリサイクルで環境負荷軽減

■自己紹介
 ──自己紹介をお願いします。
 山﨑孝史さん 入社9年目で、今は「アドマー®」いう製品の研究開発をしています。大学時代は日夜フラスコを回し続けていましたが、今はパンを包装する袋や油のボトルなどに使用される素材を作り、もっと良いものを作ろうと日々研究しています。
 徐瑛加さん 入社2年目で、「フェノール」という基礎化学品を担当しています。営業だけでなく生産計画、デリバリー、収益管理もしています。大学はリベラルアーツのような学部だったので、かなり幅広く学び、日本のSDGs界の権威である蟹江憲史先生のゼミで研究していました。

■三井化学にとってのSDGs
 ──まず、社としてのSDGsへの取り組みを教えてください。
 山﨑 そもそも、三井化学は社会課題の解決から始まった歴史があります。約110年前の創業ですが、日本の人口が増え食料不足が社会課題となる中、石炭コークスの副生ガスから農業用の肥料を作ることで社会課題にコミットしました。「課題があれば取り組むのが必然」というDNAがある会社です。
 SDGsについては私が入社したころはまだ言葉もありませんでしたし、2015年にSDGsが出てきたときも社内であまり響いていませんでしたが、2018年ごろから環境意識が一気に高まりました。お客さんと会話をしていると「環境に良い、こういう製品はありませんか」というニーズが出るようになりました。それを受けて、我々ができることを考え、今では率先してSDGsに貢献できる製品の開発を進めています。

 ──「BePLAYER」と「RePLAYER」を掲げていますね。
 徐 素材の素材から見直して世界をより再生的に変えていきたいという考えのもと、石油からバイオマス(植物など生物由来の再生可能資源)原料に転換し環境負荷低減に貢献する「BePLAYER」と、廃棄物を資源と捉え、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルをしていく「RePLAYER」の二つの方向性です。BePLAYERでは、2021年に日本で初めて「バイオマスナフサ」を化学品の心臓部である「クラッカー」という設備に原料投入し、そこから生まれるバイオマス製品の生産を始めました。温室効果ガス削減を進め、カーボンニュートラル達成を目指すアクションがBePLAYERで、当社が作ったもののみならず、サプライチェーン全体のリサイクル率向上を進めるのがRePLAYERです。お客さんの目指すべき方向が何で、自分たちはどう貢献できるか、BePLAYERとRePLAYERの概念をベースに社会貢献を全社で進めています。

 ──「脱プラから改プラへ」も掲げていますが、「改プラ」とは?
 山﨑 よく「脱プラ」と言われますが、プラスチックは社会基盤を支える製品です。ありとあらゆるところにプラスチック製品が使われており、「脱プラ」には限界があると思います。一方、当社が実施した一般消費者へのアンケートでは「脱プラ」の浸透により、ものを買うことや使うことに罪悪感を持つという声も聞かれました。ものを買うのは私たちの楽しみのでもあるので、そこに罪悪感を持つのは寂しいですよね。そこで、プラスチックや化学品の素材を原料から根本的に見直し、一人ひとりの消費行動をより再生的なものにする素材を提供し、消費するときの罪悪感を取り除く。それが「改プラ」であり、当社が提供できる価値だと考えています。

 ──たしかに、プラスチックは「悪いもの」というイメージが広がりましたね。
 山﨑 レジ袋有料化が典型的ですね。できるだけ減らそうという社会要請の中で、我々に何ができるのかを考えることが大切です。その取り組みとしてバイオマス原料を使うBePLAYERと、リサイクルを進めるRePLAYERを展開しています。我々の化学に関する専門知識を使ってより良いプラスチックを開発し、社会に提供するのが使命だと思います。
 徐 プラスチックは私たちの生活に浸透しています。「プラスチックから紙へ」という動きがありますが、たとえばスーパーの総菜パンの袋を紙にすると保存が効きません。やはりプラスチックの包装材は必要なので、プラスチック自体を変える「改プラ」が大事なんです。

 ──改プラの代表的な製品は?
 山﨑 一例として、バイオマスナフサを原料として製品化したバイオマスPP(ポリプロピレン)「Prasus®」の採用が広がっています。バイオマスナフサは植物由来や動物由来、たとえば天ぷらなどの廃食用油などを原料にプラスチックを作るので、石油由来ではありません。今後も化学メーカーだからこそできる価値を創り、社会に発信していく必要があると感じています。

世界の接着樹脂シェア40%占める「アドマー」

■山﨑さんの仕事
 ──具体的な仕事内容を教えてください。
 山﨑 入社以来9年間ずっと接着性樹脂の研究開発をしています。「アドマー」という接着樹脂で、違う性質の材料同士を接着させるために使います。たとえば、食品包材だと酸素を通さない樹脂と水蒸気を通さない樹脂を重ねれば、どちらも通さないフィルムになり賞味期限を長くできます。ですが、性質の違う樹脂は水と油のような関係で簡単には重ねられません。そこで「アドマー」を使います。ケチャップや油のボトル、レトルトご飯の容器など、幅広い製品に使用されています。
 食品包材以外では、車のガソリンタンクも樹脂製ですが、金属より軽くて燃費が良くなるうえ、形状の自由度が上がるため車内空間を広く、より快適にできます。普通のポリエチレン樹脂だと揮発性のガソリンを通してしまうので、通さないようにする別の樹脂を重ねます。ここでも、違う性質の樹脂同士を接着させるために、我々の「アドマー」が使われます。さまざまな分野に応用できるアドマーは、世界の接着樹脂の約40%のシェアを持つ業界ナンバーワンの製品で、ガソリンタンク用途では世界シェア約90%を占めています。

 ──どこが優れているのでしょう。
 山﨑 お客さんが重要視する性能に合わせた銘柄を取りそろえているところです。たとえば、1年間ガソリンの中でぐつぐつ煮た後の接着力を評価することもあり、データを持っているのも強みの一つです。

 ──いつも研究室にこもっているのですか。
 山﨑 研究職の中ではお客さんとやり取りする機会が多いほうだと思います。お客さんとの会話の中で製品の改善点や潜在的なニーズを聞き、持ち帰って実験します。新しい製品ができたらお客さんに試してもらい、フィードバックをもらってまた開発し、最終的に良いものができたらお客さんに採用されて市場に出回ります。

 ──お客さんはどういう会社ですか。
 山﨑 ガソリンタンクのほか、袋やフィルム、ボトルなどを作るメーカーです。我々が作ったプラスチックをお客さんが消費者の使いやすい形に整えます。BtoB(企業間取引)の事業ですね。
 メーカーの要望を受けて私たちが研究・開発した樹脂を、メーカーさんがケチャップやマヨネーズ用のボトルに加工し、マヨネーズの会社が中身を詰めて販売するというモノの流れです。私の担当は国内の10社ほどです。

地味だが大切な「フェノール」の安定供給に責任

■徐さんの仕事
 ──徐さんが担当する「フェノール」とはどんなものですか。
 徐 化学品の中でも上流の製品で、簡単に言うとプラスチックの原料になる液体の化学品です。1回の出荷がケミカルタンカーで3000トンとか、5トンくらいの少ない量の出荷だとタンクローリーで運びます。アドマーと違って量の単位が大きい化学品です。お客さんの多くが化学メーカーです。

 ──化学メーカーから化学メーカーに卸すのですか。
 徐 はい。フェノールをお客さんに卸して、そのお客さんがさらに化学品を作って、そこからサプライチェーンで川下までつないでいって最終的な製品ができます。原油を精製すると、ガソリンや重油、ナフサなどが取れます。ナフサを分解すると、エチレン、プロピレン、トルエン、ベンゼンなどの基礎化学品が取り出せます。そこに技術を加えると、ポリエチレンという食品包材で多く使われるプラスチックができます。フェノールは、ベンゼンとプロピレンを反応させてできる基礎化学品です。

 ──お客さんは?
 徐 私のお客さんは、ポリカーボネートやフェノール樹脂などのプラスチックメーカー、接着剤用途にも使われるので住宅用合板メーカー、断熱性も高いため住宅向けなどの断熱材メーカーです。その他にも、洗剤やシャンプーなどに使われる界面活性剤の原料等を作っているお客さんもあり、さまざまなものに形を変えます。
 プラスチックの場合は、フェノールから特殊なプラスチック素材を作り、そこから自動車や航空機の部品となり、その自動車部品が各自動車メーカーに入り自動車ができるというサプライチェーンです。

 ──さらに上流はどんな会社ですか。
 徐 国内外のいろんな石油精製会社からナフサを買い、当社でベンゼン、プロピレンを作り、さらにフェノールを作ります。日本で石油精製をしているのが出光さん、ENEOSさん、コスモさんなど、海外ではエクソンモービルさんなどです。

 ──具体的な仕事内容は?
 徐 アドマーと違い、フェノールは品質に大きな差がないので、いかに安定供給するかが課題です。お客さんも工場を連続運転しているので、原料が途切れると工場を止めなくてはいけません。工場を止めたり再始動したりすると手間がかかり、さらにその先のサプライチェーンまで広範な影響が及ぶので、お客さんに必要な分を届け、安定供給を続けることが課題です。

 ──安定供給は難しいのですか。
 徐 このお客さんには「この日」に納入すると生産計画を立てます。しかし、船が天候の影響で遅れると船を他から手配したり、千葉と大阪に二つの工場があるので出荷地を急きょ変えたりするなどトラブル対応も必要です。お客さんと工場や物流の間に立って調整するのが私たちです。「絶対にこの日にほしい」「いや、この日は積めないよ」と、双方のニーズを聞いて、うまく調整する役割です。

 ──日本でフェノールを作っているのは?
 徐 日本では弊社と三菱ケミカルさんの2社です。正直、品質はほとんど変わりませんが、価格面・物流面での融通や、たまに工場トラブルもあるため、安定供給の観点からお客さんに選んでいただけていると思います。ですので、安定供給への取り組みは一見地味ですが、とても大事な仕事だと思っています。

 ──フェノールの担当者は何人?
 徐 フェノール事業部はフェノールから派生する7製品を扱っていますが、フェノールは要の製品なので担当が3人います。私が担当しているお客さんは10社程度です。
後編に続く

(写真・植田真紗美)

SDGsでメッセージ!

 SDGsに興味がある人は、改善点を意識するといいと思います。個人が取り組める環境対策はエコバッグの使用やポイ捨てをしないことくらいの小さなこと規模かもしれません。ですが会社の観点で考えれば、ゴミを回収して、それを新たな製品にできるかもしれません。この会社だったら何ができるかと企業研究して知見を広げるのがいいと思います。当社には、やりたいことをサポートする体制が整っています。実現に向けみんなで考える体制です。「これがやりたい」というアイデアや熱意がある人に入ってもらえると嬉しいです。(山﨑さん)

 化学業界は地味なイメージかもしれませんが、だからこそできることがたくさんあります。そこに着目して魅力を感じたら、ぜひ当社に来てください。化学業界だからこそSDGsに取り組まなければいけません。会社としてかなり力を入れているので、いろんな経験ができて楽しいと思います。CO₂をたくさん排出しているけれども、インフラとして生活基盤を支えている。だから改プラや様々さまざまなソリューションにエネルギーを使い、どうアプローチするかを考えています。その一員として、じかにSDGsに貢献する実感を持てるのは化学メーカーならではだと思います。(徐さん)

三井化学株式会社

【総合化学メーカー】

 三井化学は自動車、電子・情報、健康・医療、包装、農業、建築・建材、環境エネルギーなど、幅広い領域でグローバルに展開する総合化学メーカーです。
 化学技術をベースに、人々の生活をより豊かにする製品・サービスを生み出し、環境問題や食糧問題、高齢化社会といった地球規模での社会課題に対してソリューションを提供し、グローバルにビジネスを展開しています。