東京海上、過失に関わらず保険金支払いへ 自動運転車
自動運転の車が事故を起こしたら、責任をとるのは人間のドライバーか車のどちらでしょうか?これから起こる悩ましい問題です。東京海上日動保険は、運転手の過失の有無に関わらず、いったん保険金を支払うと発表しました(来年4月以降の新規、更新のすべての契約者が無料で特約できるそうです)。事故原因がはっきりしないまま被害者の救済が遅れないようにするためです。
(2016年11月8日朝日新聞デジタル)
(写真は、米国の高速道路を自動運転で走るトラック。既にビールの配送に成功しています)
AIの進歩に追いついていない人間の考え
自動運転は、AI(人工知能)の発達がもたらした新しい技術です。朝日新聞11月9日付朝刊のオピニオン欄で、新保史生(しんぽふみお)・慶応大学教授が、「AIの技術は進んでいるのに、それに対する人間の考えが追いついていない。それが今の状況です」と指摘しています。
その例として、まさにこの「自動運転車の事故責任がドライバーにあるか、メーカーにあるか」という問題を挙げています。米国では実際に自動走行中の死亡事故が起きました。もはや日本でも待ったなしの課題でしょう。
(写真は、米国のシリコンバレーを走るグーグルの自動運転実験車です)
「人間第一の原則」
新保教授たちは総務省の有識者会議で「AIの研究開発の原則」をまとめ、今年4月末、高松で開かれたG7の情報通信大臣会合で日本から提案して各国の賛同を得たといいます。新保教授はそれに先立ち、昨秋、「ロボット法 新8原則」という試案を提起、その最初に掲げたのが、「人間第一の原則」だそうです。
アシモフの「ロボット工学3原則」、手塚治虫の「ロボット法」
新保教授が「ロボット法 新8原則」の参考のひとつにしたのが、SF作家アイザック・アシモフ(1920~1992)が1950年の作品の中で提唱した「ロボット工学3原則」。「ロボットは人間に危害を加えてはならない」を第一に掲げています。
じつは手塚治虫さんも「鉄腕アトム」の中で、少しあとにアシモフとはべつに「ロボット法」をつくっていますが、そこにも「ロボットはひとをきずつけたり殺してはならない」などとあり、発想は似ています。
(手塚治虫の公式ウェブサイトに解説があります)
(写真は、1963年に撮影された手塚治虫さんと鉄腕アトム。この年からアトムのテレビアニメが放映され、全国で爆発的な人気を集めました)
AIをどう利用するか考えて
AIの発達でロボットに取って替わられる人間の仕事は多いといわれています。ですが、人間とロボットが競争するのでなく、人間が人間の幸福実現のためにロボットを使わなければ本末転倒です。アシモフも手塚さんも、そのことを考えた先人です。AIをどう利用するか。就活生のみなさんもぜひ考えてほしいと思います。