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2016年05月10日

有機EL、本当に再ブレークするの? メーカー志望者必読

素材

有機EL、再び脚光(2016年5月10日朝日新聞朝刊)

 薄さや高画質が売りのディスプレー「有機EL」が再び脚光を浴びている。液晶に押され、日本の電機大手は一時ほぼ撤退したが、最近は韓国勢がスマートフォンやテレビで採用を拡大している。日本勢では素材メーカーが韓国勢と組んで生産拡大を図り、電機大手も再び力を入れ始めた。

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 有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)という技術をご存じでしょうか。記事中の解説には「電気を流すと光る性質を持つ有機材料を使って発光させる技術」とあります。液晶よりも薄くて軽く、ものによっては折り曲げられたりするので、むかしから次世代ディスプレーの本命技術と目されてきました。朝日新聞の記事を検索すると、いまから17年前の1999年10月1日に三洋電機(現在はパナソニック傘下)が2.4インチ画面の有機ELディスプレーを開発したというニュースがあります。その後、ソニーや東芝も製品化に乗り出しました。日本は有機ELについて数多くの特許を持ち、量産技術でも世界の先頭を走っていたのです。

 しかし、優良品の比率が低く生産効率が悪い、コストがかさむといったデメリットの壁をなかなか打ち破れない時期が続きます。2006年には三洋電機が「事業化のメドがたたない」と有機ELから撤退。ソニーは2007年に世界に先駆けて有機ELテレビを発売したものの、価格が高く2010年には国内販売から退きました。2012年にはソニーとパナソニックが有機ELテレビの共同開発をスタートさせましたが、これも1年後に「量産化しても採算をとるのは難しい」と撤退。2014年には両社の有機EL事業が統合する形で切り離され、両社とも生産から事実上手を引くことになりました。今は、有機ELディスプレーのほとんどが韓国メーカー製です。

 そんな有機ELが再度盛り上がりを見せている一番の要因は記事にもあるとおり、米アップルがiPhoneの次世代機に採用する可能性が高まったことです。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工場がシャープ支援を決めた理由は、シャープが持つ液晶生産工程を有機ELに振り替えやすく、またシャープが得意とする酸化物半導体(IGZO=イグゾー)などの技術が有機EL開発に応用できるから、とみる説もあります。事実、鴻海から出資される3888億円のうち2000億円が有機ELディスプレーの開発・生産に投資されるようですね。

 とはいえ、高コストの有機ELを搭載したスマホがどれほど需要を喚起できるかは未知数です。折しもスマホ2強・アップルとサムスンの年間出荷台数が2016年に初めて減少に転じる見込みというニュースが流れました。低価格が特徴の中国メーカーに押されたのが原因といいます。果たして有機ELは、低価格化が進むスマホ市場の起爆剤となり得るのでしょうか。日本の電機メーカー、素材メーカーの命運を決するかもしれない動きに今後も注目してください。

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