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2016年02月17日

"巨人"アップル訴えた"下町の工場"島野製作所に勝ち目ある?

精密機器・電子機器

アップル訴訟、企業間合意「無効」東京地裁で審理へ(2017年2月17日朝日新聞夕刊)

 米アップルに供給する部品の値下げを強いられたとして、日本の部品メーカーが、アップルに100億円の損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は「あらゆる紛争は(アップルの本社がある)カリフォルニアの裁判所が管轄する」とした両社の合意は無効として、審理は東京地裁でするとの中間判決を下した。両社の合意は範囲が広すぎると判断した。

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 商取り引きで会社間に紛争が起き、裁判に持ち込まれる。そんな時、どこで裁判をするかの「裁判管轄権」の問題は結構重要です。契約書や覚書で、万一の時に、どこで裁判をするかを予め決めておく場合が少なくありません。とくに取り引きが国際間になると裁判管轄権でもめがちです。アップルと島野製作所の場合は、アップルの本社があるカリフォルニア州を指定していました。両社は島野がたくさんあるアップルの下請けの1社という関係で、アップルが優位な立場。島野はアップルのノートパソコンの電源アダプター端子に使われる数ミリのピンを開発し、約9年間、供給していたといいます。
 アップルといえば株式時価総額5000億ドル(56兆円)を超えるガリバー企業ですね。一方の島野は、同社HPによると、本社は東京・下町の荒川区西日暮里。創業1985年、資本金9000万円、従業員350人(本社は20人)。「裁判はカリフォルニアで」となれば、日本の下請けにとって訴訟費用は莫大です。裁判管轄権がアップル側に有利というのは、島野が訴訟を起こすには不利で、訴訟の抑止力にもなっていたのでしょう。

 そこをあえて島野がアップルを訴えたのは、2014年8月。第1回口頭弁論を記事にした朝日新聞(2014年12月16日朝刊)によれば、「供給する部品の値下げを『強いられた』ことが独占禁止法で禁じる『優越的地位の乱用』にあたるとして損害賠償などを求めている」といいます。損害賠償の請求額は特許権侵害についての10億円。製品の日本での販売差し止めも求めています。もちろんアップルにはアップルなりの主張があり、2年前の記事では、アップル側は「不当に高い価格を請求し、優越的な地位を乱用したのは原告(島野)のほうだ」などと反論しているといいます。
 しかし、今回の東京地裁の中間判決は、裁判管轄権の両社の取り決めを覆しました。これは異例のことといえます。「両社の合意は範囲が広すぎる」が判決の理由ですが、原告・島野はアップルの「優越的地位の乱用」を訴えていて、この「裁判はカリフォルニアで」という取り決め自体がアップルの優越的地位によって島野が飲まされた不利な条件だったとすれば、それがひっくり返ったのですから、この裁判の「第1ラウンド」は島野の優勢と見えます。
 まだまだ裁判は続きますが、島野の訴えが「蟷螂(とうろう)の斧」と言われて終わってしまうのか、ガリバーをおびやかす「蟻の一穴」になるのか、行方がとても気になります。国内市場が縮小する日本。たとえ”下町の工場”といえどもリスクを賭してグローバルな市場に挑戦しなくてはならない。そんな現実をこの新聞記事から学んでください。

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