ワタミ、神明が救世主?コメ卸最大手の出資受け入れ(2016年1月23日朝日新聞朝刊)
居酒屋チェーン大手のワタミは1月22日、コメ卸最大手で、回転ずしチェーンも展開する神明ホールディング(神戸市)から出資を受け入れ、業務提携したと発表した。労働環境をめぐるイメージダウンなどで業績悪化に苦しむワタミにとって「救世主」となるのか。
居酒屋チェーン大手のワタミは1月22日、コメ卸最大手で、回転ずしチェーンも展開する神明ホールディング(神戸市)から出資を受け入れ、業務提携したと発表した。労働環境をめぐるイメージダウンなどで業績悪化に苦しむワタミにとって「救世主」となるのか。
これから業界研究をするにあたって、会社同士の合併・買収(M&A)、資本提携、業務提携といったニュースはぜひおさえておきたいものです。志望する業界がどういう方向に進むか、自分の志望する会社が今後どうなっていくかを占う大きな材料になるからです。特に昨今はM&Aが大流行。グローバル化が進む中、国内企業と思って入社したら外資系企業に買収されたり、まったく異業種の会社と提携して思っていたものとは全然違う職場に行くことになったり――ということもごく普通に起こりうる時代です。志望以外の業種にも幅広く目をくばって、ウォッチしてください。
ということで今回のニュースは、経営難に苦しむ居酒屋チェーン大手・ワタミの業務提携のニュースです。提携相手の神明は皆さんにとって知名度は低いかもしれませんが、コメの卸売り業界ではトップシェアを誇ります。
かつてコメは、自由に売ったり買ったりすることができませんでした。1995年に「新食糧法」という法律が誕生し、コメの卸売、小売りへの参入規制が大幅緩和。神明はこれを機にコンビニや大型量販店に積極的な営業をかけ、卸売り最大手に躍り出たのです。藤尾益雄(みつお)社長がいま力を入れているのは、国内消費量に比べてわずかにとどまる日本米の海外輸出量を増やすこと。海外に積極展開している回転寿司チェーンと提携し、和食文化を広げて販路を拡大していく方針を打ち出しています。2013年4月25日朝刊で藤尾社長は「TPP(環太平洋経済連携協定)をきっかけに日本米の価格が一気に下がる可能性が高いとみている」と語り、世界マーケット進出に高い意欲を見せています。「マーケットは『創るもの』だと思っている」と、別のインタビューで藤尾社長は語っています。
そして、今回の提携。藤尾社長は会見で、ワタミの海外店舗網を活用したブランド米の出荷拡大などに意欲を見せました。もちろん、国内のワタミ店舗や宅配用食材向けへの売り込みにも期待が持てます。一般的には苦戦している農業分野ですが、神明は数年内の株式上場をにらみ売上高を10年で倍増させる計画をたてています。外食、食品業界のみならず、農業関連の業界を志望している皆さんもぜひ今後の動きに注目してください。
2024/12/12 更新
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