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2015年11月27日

りそなHDが営業1000人増員計画 その狙いは?

銀行・証券・保険

事務をスリム化→営業1000人増員計画 りそな社長(朝日新聞2015年11月25日朝刊)

 りそなホールディングス(HD)の東和浩社長は2019年度までに、顧客と接する営業人員を傘下3行で、8%に当たる約1000人増やすと表明した。事務員の削減で対応する。営業強化で業務純益を14年度比約12%増の約300億円上乗せする計画。東京・豊洲のりそな銀行の新支店では顧客の利便性を高めながら行員の事務作業を減らすことで行員を通常の約半分の9人にしている。

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 同じ記事で東社長はインタビューに応じ、「メガバンクのやらない『かゆいところに手が届く』サービスを展開したい」と話しています。営業力を強め、投資信託や保険商品などの販売手数料ビジネスを強化するとのこと。りそなHDは3大メガバンク、4位の三井住友トラストHDにつぐ5位の銀行グループです。少子高齢化で国内市場が縮小するなか、3大メガバンクを含めて銀行はビジネスの根幹である企業への貸し出しが思うにまかせません。りそなは営業力を強めることで、個人富裕層の取り込みをねらっているとのでしょう。

 一方で朝日新聞の11月18日朝刊に、「松井証券、ラップ口座参入へ コンピューター対応で割安に」という記事がありました。インターネット証券大手の松井証券が、2016年からパソコン画面を通じてコンピュータープログラムが顧客の相談に応じる「投資一任サービス」を始めるという報道です。これにより人件費を削り、手数料を「既存の証券会社の1割程度に下げる」というのです。ラップ口座とは、金融機関がまとまったお金を預かり株式や国債、投資信託を組み合わせて運用する金融商品のこと。やはり団塊の世代の富裕層が主要なターゲットです。

 りそなは営業力を強めてサービスを厚くすることで客を呼び込み、松井証券は営業の人手を省いて手数料を安くし集客する。一見真逆なのですが、どちらも貴重な(そして高価な)人的資源の使い方の工夫という点では共通しています。企業が事業のどこに重きを置き、そのためにどういう戦略を立てているのか、それを見極めるのも企業研究の基本です。

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