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2022年03月23日

国際

今さら聞けない!北方領土 ロシアはなぜ返さない? 歴史を知ろう【時事まとめ】

ロシアによる「不法占拠」

 ロシアのウクライナ侵攻が、日本とロシアの間の「北方領土」問題に及んできました。欧米諸国と足並みをそろえてロシアへの経済制裁を強める日本に対し、北方領土問題を含む平和条約交渉について「継続する意思はない」と中断を突きつけてきたのです。これに対し岸田文雄首相は「今回の事態は全てロシアによるウクライナ侵略に起因している。ロシアの対応は極めて不当で、断じて受け入れられない。強く抗議する」と語りました。国際法違反の非道な侵略をしたうえに日本に責任を転嫁しようとするのですから、当然の反応です。北方領土は日本固有の領土で、日本政府はロシアによる「不法占拠」だと主張していますが、77年経っても返ってきません。どうしてこんなことになっているのか。この機会に、歴史的な経緯を知っておきましょう。(編集長・木之本敬介)

そもそも北方領土って?

 北方領土とは、北海道の北東沖にある択捉(えとろふ)島、国後(くなしり)島、色丹(しこたん)島、歯舞(はぼまい)群島のこと。周辺は豊かな漁場で、合わせると千葉県ほどの広さがあり、「北方四島」とも呼びます。もともとアイヌ民族が活動していましたが、国として入ったのは日本がロシアより先で、江戸幕府は「番所」を置いて外国人の進入を防ぎました。江戸末期から明治時代の両国間の条約でも、北海道の北にある樺太(からふと)や北方四島の北東につながる千島列島領有権は両国の間で行き来しましたが、四島は一貫して日本領で、戦前には約1万7000人の日本人が暮らしていました。

 ところが、第2次世界大戦の最終盤、日本の敗色が濃厚だった1945年8月9日、当時のソ連は日本との間で結んでいた日ソ中立条約を無視して対日参戦。日本が無条件降伏した後も侵攻を続け、降伏文書に署名した9月2日を過ぎても攻撃をやめず、同5日までに北方四島を占領し、日本人島民は退去させられました。戦後、1951年のサンフランシスコ講和条約で日本は千島列島と南樺太を放棄。千島列島の範囲は条約に明記されていませんが、日本は「北方四島は含まれない」との立場です。条約を起草した米国、英国も支持していますが、ソ連は条約に加わりませんでした。

日本の降伏後に占領

 一方でロシアは、第2次大戦の結果による「合法的」な編入だと主張しています。1945年2月に米英ソ3国の首脳によるヤルタ会談で結んだ秘密協定が根拠です。対日参戦の見返りに千島列島をソ連領とする内容ですが、日本はヤルタ協定に参加しておらず、ソ連が中立条約を無視して参戦したうえ、日本の降伏後も侵攻を続けた結果によるもので「法的根拠はない」としています。

 1956年、日本とソ連は日ソ共同宣言を結び、国交を回復しました。北方四島の問題は棚上げして、平和条約を結んだ後に「歯舞、色丹を日本に引き渡すことに同意する」と書かれています。日本政府内には2島返還で決着させようとする動きもありましたが、当時の東西冷戦を背景に米国の圧力もあり、平和条約は結べませんでした。その後、交渉は停滞。ソ連が崩壊した後にもロシアと何回か合意文書を交わし、日本側が交渉の進展に期待した時期もありましたが、北方領土には計1万8000人のロシア人が住み、軍も駐留する「ロシア化」が一層進んでいるのが実情です。

安倍・プーチン蜜月

 最近では、問題解決に強い意欲を持ってロシアのプーチン大統領と計27回も会談して個人的な関係を築いたのが安倍晋三元首相です。2014年、ロシアがウクライナのクリミア半島併合し欧米諸国が厳しい制裁を科す中、安倍政権は査証(ビザ)協議停止など「ロシアに実害が及ばない制裁」(外務省幹部)にとどめました。2016年に安倍氏がプーチン氏を地元・山口県に招いての首脳会談で北方四島での共同経済活動に合意。2018年の首脳会談では、返還交渉の切り札として「4島返還要求」を封印し、事実上、歯舞、色丹の「2島返還」にハードルを下げて交渉することを提案しました。しかしロシアは歩み寄るどころか、4島の主権が合法的にロシアに移ったと認めることなど、日本には受け入れられない条件を突きつけ、2020年には「領土の割譲禁止」をうたう憲法改正も行いました。背景には、クリミア併合以降、欧米との関係が行き詰まったプーチン氏が、対外的な強硬路線で国内での求心力を高めようとしている事情があるとみられています。今回のウクライナ侵攻後も、4島に免税特区をつくる法律を定め日本以外の外資導入を進める考えを鮮明にしました。

ロシアにとっては太平洋への出口

 ロシアにとって北方四島は戦略上、極めて重要な位置にあります。ロシアはユーラシア大陸にまたがる広大な国土を持っていますが、北極海に面している北側は冬の間、海が凍結して船の航行ができません。そこでロシアは歴史的に不凍港を重視してきました。西のヨーロッパ側はバルト海、ウクライナと接する南側は黒海、東は北方四島です。北方四島はロシアにとって、太平洋に出るための重要拠点なのです。このため、もし日本に引き渡したら日米安全保障条約に基づいて米軍が展開するのではないかと警戒もしています。ロシア軍は近年、日本周辺での活動を活発化させています。今年に入って北海道に面する日本海やオホーツク海で大規模演習を実施。東シナ海南シナ海で海洋進出を強める中国軍と歩調を合わせた動きも目立ちます。もはや、少なくともプーチン氏がトップにいる間、北方領土交渉が進む見通しはなくなったといえそうです。

(写真は、日本海やオホーツク海南部で活動するロシア海軍のフリゲート艦など。手前は砕氷艦=防衛省・統合幕僚監部提供)

「ビザなし交流」も中止、墓参は?

 今回、ロシア外務省は共同経済活動の対話からの撤退のほか、ソ連末期の1991年の合意で始まった「ビザなし交流」や、元島民らを対象にした1999年からの「自由訪問」などビザなし渡航の停止も決めました。日本人がロシアに行くにはロシア政府が発行するビザが必要ですが、北方四島に行くためにビザを申請すれば相手の主張を認めることになりかねません。両国の知恵で始めた「ビザなし」なのに、これができなくなることに日本の元島民は落胆しています。元島民は今年2月現在5492人。北海道によると、ビザなし交流では2019年度までに日本側から延べ1万4356人が四島を訪問しました。自由訪問は2019年度までに延べ5231人を数え定着してきました。ただ、冷戦時代から続く墓参は停止の対象になっていません。元島民は高齢化が進んでいます。せめて、ふるさとのお墓参りは両国の立場の違いを越えて続けられるようにしてほしいものです。

(写真は、色丹島にある日本人墓地で祖父ら家族の墓参りをする元島民の得能宏さん〈右〉。現地のロシア人たちが墓地の管理、清掃をしてくれているという=2019年6月9日、色丹島北部の斜古丹)

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