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2020年06月24日

政治

今さら聞けない「日米安保条約」…これだけ押さえよう【時事まとめ】

安保条約と9条

 日米安全保障条約は1960年に改定されました。6月23日はその改定安保条約が発効してちょうど60年目でした。安保条約は、戦争放棄と戦力の不保持を定めた憲法9条とともに、戦後の日本の外交安全保障の方向性を定め、国を今の形に導いてきたともいわれています。世界の情勢は常に変化するため、安保条約の条文は変わらなくても日米協力の中身は大きく変わってきました。日米安保がいま直面しているのは、急速な軍事力拡大と強引な海洋進出を続ける中国と、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮への対応です。日米両国の関係も時代とともに変化してきました。とくに「アメリカ・ファースト(米国第一)」を掲げるトランプ大統領は「日米安保条約は不公平」が持論で、日本政府は対応を迫られています。「なんとなくは知っているけれど詳しくは……」という人も多い日米安保条約について、今さら聞けない「基本のき」を押さえます。(編集長・木之本敬介)

(写真は、日米安保条約署名60周年記念レセプションで鏡開きをする〈左から〉河野太郎防衛相、茂木敏充外相、麻生太郎副総理、安倍晋三首相、故アイゼンハワー元米大統領の孫メアリー氏、ひ孫メリル氏、ヤング駐日臨時代理大使、シュナイダー在日米軍司令官=2020年1月19日、東京都港区の飯倉公館、代表撮影)

安保条約の歴史

 最初の日米安保条約は1951年、日本が独立を回復したサンフランシスコ講和条約調印と同じ日に結ばれました。旧条約では、日本が米軍に基地を提供する一方、米国が日本を防衛する義務は明記されない「片務的」な内容でした。1960年、岸信介首相(今の安倍晋三首相の祖父)のときの改定で、米国に日本防衛の義務が課されました。当時は米国と旧ソ連が対立する冷戦のまっただ中。仮想敵国だったソ連の太平洋進出を防ぐため、米国にとっては地理的にも日本の守りを固めることが極めて重要でした。

 1991年のソ連崩壊で冷戦が終わると、何のための日米安保条約かが問われるようになりました。日米両政府は1996年、条約の役割を「アジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎」と位置づけました。念頭にあったのは北朝鮮と中国です。日米安保条約では「極東における国際の平和及び安全の維持」のための米軍駐留も認めていて、2003年のイラク戦争では在沖縄米軍が派遣されました。日米安保は、米軍の世界戦略の重要な一翼を担っているわけです。

(写真は、日米安保新条約の調印を終え帰国した岸信介首相=1960年1月24日、羽田空港)

「軽武装・経済優先」

 戦後の日本は、吉田茂首相が敷いた「軽武装・経済優先」の路線を歩んできました。それを支えた2本柱が憲法9条と日米安保条約です。日本は9条で集団的自衛権は行使できないため「専守防衛」に徹し、いざというときは米軍に守ってもらうという役割分担です。防衛費を抑えて経済に力を注いだことが高度経済成長につながりました。

 ところが、冷戦が終わると、米国から「カネは出しても血を流さない」と批判されるようになり、自衛隊の海外派遣も一定の条件下で行われるようになりました。安倍政権は2014年、集団的自衛権の行使を一部認めるよう憲法解釈を変更。2015年には、米国が武力攻撃を受け「日本の存立が脅かされる」と判断すれば、海外でも自衛隊が武力行使できるよう安保法制を整備しました。日本は戦後、憲法9条で「不戦の国」を誓い、戦闘で1人の犠牲者も出さず1人も他国の兵士を殺さずにきましたが、これからは米国の戦争に巻き込まれる心配も出てきたわけです。

(写真は、日米安保条約に調印する吉田茂首相ら=1951年9月8日、米サンフランシスコ市の米軍施設)

世論は反対→支持へ

 世論はどうでしょう。1960年の安保改定の際は国内に反対論が強く、「安保闘争」と呼ばれる国民的な運動に発展しました。その後、年月を経て国内では平和と経済成長が続いたことなどから、安保条約は国民に受け入れられるようになりました。朝日新聞の今年の世論調査では「安保条約をこれからも維持していくこと」に賛成が68%、憲法9条を「変えないほうがよい」が65%を占めました。国民は2本柱の下での平和を支持していることがわかります。

 日米安保条約改定の批准阻止を訴える安保改定阻止国民会議の第15次統一行動で、全学連の集団請願デモ隊も国会前に集結した。奥は、トラックを並べて路上に作った阻止線で止める警官隊。全学連メンバーはもみ合いの後、座り込みに入った。夕方からは激しい衝突となって双方に重傷者が出て、唐牛健太郎委員長らが逮捕された。全国各地でもデモや集会が繰り広げられた

(写真は、国会周辺を埋めた反安保デモ=1960年6月18日、朝日新聞社ヘリから)

不公平なの?

 米国の歴代政権も日米安保条約を重視してきましたが、トランプ大統領は「不公平」だと公言しています。「米国が攻撃されても日本は助ける必要はない」と不満を語り、駐留米軍の経費負担の増額を迫っています。米国だけが一方的に義務を負う「片務的」な条約との主張で、トランプ氏が「日米安保条約破棄」に言及したとの報道までありました。しかし、米軍基地提供の義務がある日本側は「非対称」だが「双務的」な条約と解釈しています。米国防総省の2004年の報告書では、日本は米軍駐留経費の 74.5%を負担していて、韓国の40%、ドイツの32.6%をはるかに上回っていますが、現在の負担額を定めた協定は2021年3月で期限切れとなります。2019年度予算の米軍駐留経費負担額は約1970億円で、これからの交渉で増額を求められそうです。

 在日米軍基地の70%が集中する沖縄のあまりに大きな負担、市街地にあって危険な米軍普天間飛行場の存在、県民の反対が強い名護市辺野古への基地移設、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の秋田県、山口県への配備計画の停止……いずれも日米安保条約に関わる問題です。日々の日米関係、防衛関連のニュースにぜひ関心をもって接するようにしてください。

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