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2021年07月21日

科学技術

「2021年宇宙の旅」が実現 宇宙ビジネスの今とこれから【時事まとめ】

世界初の「宇宙旅行客」は18歳の少年

 米国のアマゾン創業者、ジェフ・ベゾス氏が立ち上げた宇宙企業ブルーオリジンが7月20日、4人が乗った宇宙船を自社のロケットで打ち上げ、顧客を乗せた世界初の「宇宙旅行」に成功しました。打ち上げから着陸まで約10分間の旅行を楽しんだのは、ベゾス氏と弟、元宇宙飛行士候補だった女性(82)、18歳の少年。宇宙旅行のオークションに参加した父親からチケットを譲られた少年が、お金を払って宇宙に行った世界初の旅行客になりました。オークションでは別の人物が約30億円で落札しましたが、都合で搭乗を延期したため繰り上がりました。金額は公表されていませんが、超高額なのは間違いありません。それでも旅行が当たり前になれば金額はある程度は下がるでしょう。米企業ヴァージン・ギャラクティックが計画している旅行には、すでに600人の予約が入っているといいます。宇宙開発では米国と中国が国家間で競っていますが、宇宙旅行をめぐっては民間企業の先陣争いが激しくなってきました。「宇宙ビジネスの今」と日本企業の可能性について学びます。(編集長・木之本敬介)

月周回旅行に「宇宙ホテル」も

 民間宇宙旅行をめぐっては7月11日、ヴァージン・ギャラクティックの創業者リチャード・ブランソン氏が宇宙船の試験飛行に搭乗して、ベゾス氏に先駆けて宇宙を体験し「新しい宇宙時代の幕開けだ」と語りました。同社は2022年に商業飛行を計画しています。1席25万ドル(約2700万円)で搭乗券を販売していて、60カ国以上の約600人がすでに予約済みです。

 さらに本格的な宇宙旅行を計画しているのが、米企業スペースXです。電気自動車(EV)のテスラ最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏が作った会社です。ロケットは使い捨てが常識でしたが、一部が地上に戻ってくるようにして再利用で打ち上げコストの「価格破壊」をもたらしました。現在の費用は1回約60億円で、日本のH2Aロケットの半額。2020年11月には、新型宇宙船クルードラゴンで日本人宇宙飛行士、野口聡一さんらを国際宇宙ステーション(ISS)に送り届けることに成功しました。スペースXは、早ければ2021年秋に民間人4人の地球周回旅行を予定しており、その後は月旅行や、将来の火星への移住も想定した大型宇宙船も計画しています。衣料品通販サイトZOZO創業者の前沢友作さんが2023年に民間初の月周回旅行に行くと発表して話題になりましたね。

(写真は、飛行成功に大喜びするリチャード・ブランソン氏=ヴァージン・ギャラクティックの動画から)

「るるぶ宇宙」が大ヒット

 米航空宇宙局(NASA)は2019年、ISSを商業利用できるようにして、民間人を最大30日間、年2回受け入れると発表。米企業アクシオムスペースは2022年1月に民間人4人がISSに8日間滞在するツアーを計画しています。NASAは宿泊費を1泊約3万5000ドル(約380万円)と公表していますが、ISSとの往復には1席5500万ドル(約60億円)かかるといわれているので、半端な額ではありません。さらに同社は、2024年には宇宙ホテルとして使われる居住施設を打ち上げてISSに取り付ける契約もNASAと結んでいます。

 旅行といえば、「まっぷる」や「じゃらん」といったガイドブックを利用する人も多いと思います。JTBパブリッシングの老舗旅行情報誌「るるぶ情報板」が2021年3月に「るるぶ宇宙」を発売して大ヒットしました。「発行部数世界最多の旅行ガイドシリーズ」としてギネス世界記録に認定されている同誌でも、地球を飛び出す旅行を取り上げた号は初めて。コロナ禍でとくに海外旅行が厳しい中で出たアイデアブックです。冒頭は「ISS大特集」で、ISSの設備を美しい写真で「徹底解剖」し、旅行誌では外せない「行程」「グルメ」「旅行先での過ごし方」について、野口聡一さんの実例をもとに解説。宇宙で食べられるあれこれ、宇宙に持っていきたいものリストやトイレ事情、自由時間の過ごし方など、るるぶらしいこだわりが満載です。すぐに身近な旅行にはならないにしても、旅行会社に就職したら、いずれは宇宙ツアーの手配をするかもしれないと夢を持たせてくれます。

(写真は、ISSと中央手前にある日本実験棟「きぼう」=NASA提供)

日本企業も続々

 宇宙旅行は分かりやすい例ですが、宇宙ビジネスには幅広い可能性があります。通信や観測データの利用などで、2016年には9兆円に満たなかった日本の宇宙産業市場が、2050年には60兆円近くにまで膨れあがるとの予測も出ています(左のグラフ)。

 そんな宇宙ビジネスには日本企業も続々参入しています。「BSスカパー!」は2020年8月、ISSの日本の実験棟「きぼう」に世界初の宇宙スタジオ「KIBO宇宙放送局」を開設。ISSと地上をリアルタイムで結び、窓越しの地球や太陽が昇る映像を生配信し、地上からは俳優の中村倫也さん、菅田将暉さん、田中みな実さんらが出演しました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「宇宙イノベーションパートナーシップ」の一環で、スカパーJASTがデジタルコンテンツ開発会社バスキュールとともに取り組んだ「宇宙と地球をつなぐ世界初の双方向ライブ配信実験」でした。

 スカパーJSATは、建設コンサルタントの日本工営と業務提携し、衛星を使った地上調査にも乗り出しています。衛星から空港の滑走路の沈下や河川の基礎地盤の変位などを見つけ、インフラの維持管理や災害防止に役立てます。人工衛星の打ち上げとデータ解析をする宇宙ベンチャー、シンスペクティブは、2022年までに6基の衛星を打ち上げ、アジアの主要都市を1日1回観測できるようにする計画です。建物や地形のずれなどをデータ化し、不動産や投資分野での商機を見込んでいます。衛星データの活用は巨大なビジネスチャンスといえそうです。

●衛星データ活用の意義については「人事のホンネ 宇宙航空研究開発機構(JAXA)」でも採用担当者が語っています

「月面産業ビジョン」に出てくる企業名は

 日本でも月面の開拓を本格的に進めようという動きが始まりました。30の企業・団体、国会議員、学者などが「月面産業ビジョン」をまとめ、7月13日に政府に提出しました。ビジョンに取り上げられている企業名を紹介します。

【輸送分野】ispace、三井物産トヨタ自動車ゼネラル・モーターズ(米国)
【情報・通信分野】NECノキア(フィンランド)
【メディア・コンテンツ】電通凸版印刷
【資源・エネルギー分野】高砂熱学工業日揮グローバル日本特殊陶業ホンダ
【建設・インフラ分野】タカラトミー大林組キャタピラー(米)
【食料・バイオ分野】ユーグレナ
【金融・保険】三井住友海上火災保険三井住友銀行

 ちょっと意外な分野や企業名もありますね。宇宙好きな人はもちろん、そうでない人も、宇宙ビジネスに関わる企業についてさらに調べてみるときっといろいろな発見がありますよ。

 宇宙ビジネスに関わる会社については、こちらも読んでみてください。
「はやぶさ2」大成功!宇宙ビジネスの会社を探そう【イチ押しニュース】
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(写真は、トヨタ自動車とJAXAが共同開発する月面探査車のイメージ=トヨタ提供)

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