ソニー株式会社
2024シーズン ソニー〈前編〉
100近いコース別採用で「配属ガチャ」なし 会社から適性提案も【人事のホンネ】
ソニーグループ株式会社 SPPS・採用部・2課 統括課長 浅井孝和(あさい・たかかず)さん
ソニー株式会社 人事総務部門・人事企画部・採用人材開発Gp 統括課長 吉田亜美(よしだ・あみ)さん
2022年09月07日
■業務内容
──お二人とも採用の統括課長ですが、それぞれの業務内容を教えてください。
浅井さん(写真右) 2021年4月に新しい経営機構が発足し、各事業会社のグループ本社機能に特化した「ソニーグループ株式会社」が新たに発足しました。私は当会社に所属し、グループ各社の合同採用活動の統括をしています。
吉田さん(写真左) 私は、ソニーグループの祖業であるエレクトロニクス事業(現在の事業名としてはエンタテインメント・テクノロジー&サービス分野)の採用統括をしています。
──組織再編に伴って採用方法も変わったのですか。
浅井 グループ本社機能である「ソニーグループ株式会社」、ゲーム&ネットワークサービス事業の「ソニー・インタラクティブエンタテインメント」、先ほど触れた「ソニー株式会社」、イメージング&センシング・ソリューション事業の「ソニーセミコンダクタソリューションズ」の4社で合同採用しています。コース別採用を導入しており、約100のコースから学生が希望する職種と商品・サービスカテゴリーを選択し、エントリーすることができます。
吉田 ソニー株式会社は、テレビやオーディオ、イメージング、モバイルなどを展開する三つの事業会社が統合し、個社運営から全体戦略が実行可能な事業構造となりました。これにより、従来のコア事業に加えて、中長期的な成長を目指す新規事業の二つを経営の軸に取り組んでいます。最新の経営方針に沿った採用を強化しています。
──音楽、映画に金融事業もありますね。
浅井 音楽、映画、金融事業の新卒採用は窓口が別で、それぞれの会社で採用を進めています。
仕事紹介動画で「等身大のソニー」伝える
──コロナ禍3年目だった2023年卒採用を振り返ってください。
吉田 コロナ禍1年目は対面でのイベントを中止にしたり、急きょ面接をオンラインに切り替えたりと、不慣れな環境で学生も会社も対応に戸惑う場面がありましたが、3年目となるとお互いに慣れてきました。ソニー株式会社では学生の夏休みと春休みに合わせてインターンシップを積極的に受け入れていますが、ちょうど実施時期とコロナの感染拡大が重なり見送らざるを得ない状態が続きました。一部オンラインでインターンシップを実施しましたが、やはり会社に来て実際に社員と会って雰囲気を感じてもらいたかったですね。そういう声は学生からも上がってきました。
──対面とオンラインで、面接に違いは?
吉田 技術系の面接では研究内容をプレゼン形式で発表してもらいます。対面のときはホワイトボードに手書きで説明してもらいましたが、今はパワーポイントを事前に用意してもらい、資料を踏まえて説明や質疑応答を行うので論理的な思考はむしろ見えやすくなりました。
浅井 面接員に「オンラインで見極めに問題があるか」のアンケートを取りましたが、ほとんどが「問題ない」でした。その人の本質は入社してしばらく経たないと分かりませんが、面接の質が落ちたとは思いません。課題は「等身大のソニー」をいかに伝えるか。会社に来てオフィスを見たり、社員が話しているところを生で見たりするとソニーのカルチャーを感じられます。どう伝えるかに腐心しています。
──工夫したことはありますか。
浅井 説明会で社員同士が話す姿を見せるようにしました。ほぼ打ち合わせなしで2~3人の社員を呼びライブ中継をします。「ソニーを辞めたいと思ったことがありますか?」「残業が多いと思いますか?」など突っ込んだ質問をして○×で答えてもらいました。「自由に答えて」と言ってあるので、「辞めたいと思ったこと」に○を上げる人もいます。「どんな場面で?」とさらに突っ込んで聞きます。
──学生の反応は?
浅井 チャットで「そんなこと聞いちゃうんだ」「えーっ!」「(爆)」などと素直な反応があっていいですね。仕事紹介の動画をたくさんつくったのも伝える工夫です。
お伝えした通り、募集コースは4社合同で約100コースあるのですが、ほとんどのコースについてそれぞれ動画を人材募集する各部署と連携してつくりました。前年まではプレエントリーして初めて動画を見られたのですが、それだとソニーに興味がない人は見られません。等身大のソニーを伝えるために、すべての動画を採用ウェブサイト上で誰でも見られるようにしました。他社の人事の方には驚かれることもあります。
1番のコースに応募するとソニー株式会社、2番に応募する人はソニー・インタラクティブエンタテインメントと、応募時に自分がどの会社にエントリーするのか分かるようになっています。そこに動画がついていて、ポチっと押すとどんな仕事なのか見られます。
■2023年卒採用
──2023年卒採用の募集要項には「ジョブマッチング1期」から「3期」まであります。
浅井 1期は3月下旬以降、2期は5月中旬以降に情報開示を始め、学生と募集部署とのマッチングを行いました。3期は夏季選考で9月ごろに決まります。3期は帰国した留学生が応募しやすい時期でもあります。
──内々定はいつ出すのですか。
浅井 6月1日に内々定というスケジュールになります。
電機・機械だけじゃない 生物・化学専攻でも活躍できる
──コース別採用については5年前の「人事のホンネ」でもうかがいましたが、今は約100コースも!
吉田 学生に興味を持ってもらい、何をしたいかイメージしやすくするのも私たちの仕事です。入社後のギャップを減らすためにも、実際に入社後に携わる職種に応じてコースを細かく分けています。内定者に「もっとコースをまとめたほうがいい?」と聞くと、「いや、これくらいないと自分が入社後に何をするか分からないし、各コースの紹介動画で具体的なイメージを持てるのでこれくらい細かくて問題ないです」と答えてくれます。
浅井 コースは年々増えています。学生にやりたいことを問い、パッションや思いをぶつけてもらって、入社後に実現できるので、入社するまでどこに配属されるかわからないといったような、いわゆる「配属ガチャ」はありません。内定者に聞くと「配属が確約されているからソニーに決めた」という人が非常に多いですね。入社後も社員には「自分のキャリアは自分でつくるんだよ」と言います。社員はやりたいことに取り組み、会社はその場を用意する。それがソニーの働き方です。
──コースによっては学部・学科の指定はありますか。
浅井 ありません。コースの9割近くが技術系で、ソニーはエレクトロニクスのイメージが強くて専攻が電気や機械じゃないと内定しないと思っている人がけっこう多いんです。毎年アンケートを取っていますが、専攻と入社後の仕事がマッチする学生は半分くらいしかいません。半分は大学での勉強とはちょっと離れたところでマッチングして活躍しています。女性が比較的多い生物や化学専攻でもマッチするチャンスは大いにありますが、現状はエントリーの数という意味ではまだまだ限定的ですので、そういった専攻の学生であってもソニーでは十分に活躍できるフィールドがあることを今後はよりアピールしていこうと思っています。
──生物や化学の専攻がどう生きるのでしょう。
浅井 AIのアルゴリズムを書くコースだと難しいなど濃淡はありますが、ものの考え方、実験のやり方など基本的な素養があれば、扱う技術が変わるだけなので大丈夫です。
──約100コースもあると、選考も複雑でしょうね。
吉田 内部のオペレーションはとても大変です……。コースごとに面接を設定しますし、コースごとに求人充足を緻密に計算して過不足がないように管理しないといけないので。
浅井 すべて個人面接なので、面接の回数は6000回以上、面接員は1400人にのぼります。
──現場の要望でコースの設定も変わるのですか。
吉田 はい。コースは毎年見直しを行っています。これまで通りでいいか、何を追加・削除するか、各事業の実態を踏まえてニーズを堀り起こします。
たとえば、私が採用統括しているソニー株式会社では、旧来のエレクトロニクス分野の域を超えて事業を捉え直し、事業名称を「エンタテインメント・テクノロジー&サービス」と改称しました。ネットワークによってあらゆるサービスが拡張可能な昨今ですが、テレビ、オーディオ、カメラなど商品単体の枠を超え、ソニーの幅広いテクノロジーを駆使して、クリエイターとユーザーをつなぎ、新しい付加価値、未来のエンタテインメントを創出することを目指しています。新しいビジネスを考える組織の形態に沿ってコースも変わります。とくに新規事業においては、お客様に継続したサービス・ソリューションとしてお届けするビジネスモデルの構築・拡大を意識していて、その実現に向けて必要な「クラウドソリューション」や「人工知能(AI)・機械学習機能設計」などの技術領域の採用を強化しています。
──コースが多すぎて決めきれない学生もいるのでは。
吉田 専門性が合致しない学生は決めきれない場合もあるかもしれません。ただ、専門性が合致するからという理由で応募コースを決めるのではなく、実現したい思いやチャレンジする気持ちを大切にしてもらいたいです。それでも決めきれない学生もいると思っていて、そのような人には「WILLコース」を活用してもらいたいです。WILLコースでは、コースの絞り込みが難しくそれでもソニーに入社への強い思いがあるという学生をキャッチするためにソニー株式会社では2023年卒採用から導入しました。とくに学部生や理学・農学などを専攻する学生にアピールしたいです。
──WILLコースは前からありましたね。
吉田 これまでのWILLコースは事務系中心でしたが、技術系にも広げました。
浅井 WILLコースを選択しない場合でも、第3希望まで希望するコースをエントリーシートに書いてもらいます。基本的には第1希望で選考が進みますが、第2、第3希望、場合によっては「こっちのコースが合うんじゃないの?」とこちらからおススメをして内定につながるケースも結構あります。
──「ポテンシャル確認希望」欄があるそうですが。
吉田 「よりマッチングが図れるコースがあれば会社からの提案を希望します」という意思表示欄で、書類選考や面接を通じて、こちらからコースをオファーすることもあります。学生の希望もそろえば、コース替えして選考を続けます。
浅井 かなりの数がポテンシャル採用で決まっています。約100コースあるとたいてい学生の琴線に触れるところが見つかりますが、会社側も適性を見ます。自分の頭の中で想像してまずは応募する、だめだったとしても他の幅広い領域から会社が提案する──両面があるシステムです。
──人気のコースは?
吉田 事務系だとプロダクト&サービスプランニング(商品企画)、セールス&マーケティングのコースが人気です。
浅井 グループ全体でみますと、R&Dセンターやゲーム事業も人気です。他にはaiboなどを生み出したAIロボティクスビジネスグループ。ただ、繰り返しですが、学生のみなさんがやりたいことにチャレンジをしてもらうことが大事だと思っていて、そのために必要な情報を極力オープンにするようにしています。
■採用実績とエントリー数
──採用数のうち女性の比率は?
吉田 技術系コースに関しては3割を目標にしています。エレクトロニクスに親和性がある工学系は女性が10%ほどしか在学していないなので、それを踏まえると高い目標だと思っています。
浅井 事務系は女性が増えていて、技術系もエレクトロニクス以外の専攻で入る人が少しずつ増えているところです。
──エントリーの数と増減の傾向は?
浅井 グループ全体でプレエントリーは数万人、エントリーは1万人ほどです。2021年卒では3~4割増えて、2023年卒は横ばいです。同規模の他社が10%くらい減っている中で変わらなかったのは、ソニーの業績が好調という面ももちろんありますが、等身大のソニーを伝える地道な工夫の結果だと思います。
(後編に続く)
(写真・小暮誠)
●2018シーズン「人事のホンネ」ソニー 「個」「異見」大事にする風土 挑戦し続ける意欲ある人来て! はこちら
●2021シーズン「人事のホンネ」ソニーミュージックグループ〈前編〉手書きESで伝わる「エンタメの力」 大学名は一切聞かない はこちら
みなさんに一言!
コロナが続き不安が多い世の中だと思いますが、乗り越えれば楽しい時代が待っていると思うので、あまり悲観しないで前向きに取り組んでください。就活は自分を見つめ直す良いきっかけです。転職しやすい時代とはいえ、最初に入った会社は大事なので、自分の中で悔いのない就活をしてください。(吉田さん)
これから就活を始める人から「何をしたらいいか分かりません」という声をよく聞きますが、それは当たり前です。いろんな会社の説明会、いろんな社員の話を聞くと、自分の中で「この会社は合うな」「合わないな」というのが出てきます。それを何となくで終わらせないこと。どうしてソニーを良いと思ったのか、悪いと思ったのかを考えると、自分が考えや求めるものがどんどん形になって来るんです。いろんな会社に足を運んで、フワッと感じることを言語化して自分のものにしていくと、やりたいこと、やりたくないことが分かってきます。それを突きつめてみてください。(浅井さん)
ソニー株式会社
【エレクトロニクス】
ソニー株式会社は、ソニーグループにおいてエンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)事業を担います。
「世界中の人と社会にテクノロジーの追求と新たなチャレンジによって、「感動」と「安心」を提供し続けていくこと」をビジョンとし、ホームエンタテインメント&サウンド、イメージング、モバイルコミュニケーションズなどの領域で商品やサービスを創出しています。
< 前の記事 | 人事のホンネ トップ | 次の記事 >
2024/11/21 更新
- ボージョレ解禁、市場活性化なるか 販売激減で撤退する輸入元も(18:18)
- キオクシア、12月中旬に株式上場へ 時価総額7500億円を想定(18:08)
- 新NISA口座開設数、ペース落ち着く 8月の株価急落で急ブレーキ(18:06)
- 高額療養費の上限引き上げ、議論スタート 背景に歳出削減 厚労省(17:50)
- 政府の経済対策13.9兆円、物価高対策など軸 あすにも閣議決定(17:15)
※就活割に申し込むと、月額2000円(通常3800円)で朝日新聞デジタルが読めます。