東京都庁
2023シーズン⑫ 東京都庁《後編》
国家公務員と市区町村の「いいとこ取り」 職場はフランク【人事のホンネ】
総務局 人事部 人事課 人事担当(採用班) 望月貴洋(もちづき・たかひろ)さん、人事委員会事務局 試験部試験課 総括担当 矢田将大(やだ・まさひろ)さん
2022年02月16日
(前編はこちら)
■求める人材像とニュース
──求める人材像を教えてください。都庁職員に絶対に欠かせない資質とは?
望月 都民のために働くことが役割ですから、都民に信頼されるような人材であることが必須です。具体的には、たとえば、法令を遵守して正しくきちんと仕事をする人や、協力してチームワークで仕事ができる人。その他、公正・公平な対応ができることも前提で、人によって対応を変えてはいけません。当然ですが、仕事の成果も求められます。誇りを持って仕事の成果を上げようと愚直に働けるか。東京都に対する信頼とは、そういうことの積み重ねだと思います。
──学生にニュースへの関心を求めますか。
矢田 教養試験でも時事的な問題が出るので最新ニュースはしっかり知っていてほしいです。面接でなぜ志望したのか、都庁に入って何をしたいのか聞くこともありますが、都の事業は世の中の流れに関わるので押さえておいてほしいですね。
望月 都民のニーズを踏まえた施策をするには、世の中の流れを知ることは大前提です。職員の1人として知っていなければなりません。
■インターンシップ
──インターンシップは行っていますか。
望月 2020年、2021年は1dayの仕事体験をオンラインで行いました。それ以前は夏に1週間ほど、いろんな部署や職種で実際に学生を受け入れる「都庁インターンシップ」を実施していました。直近の2019年夏に実施したインターンシップでは、100以上の部署で200名以上の学生を受け入れました。この2年は五輪・パラリンピックやコロナで人流を抑えるため、実際の受け入れは実施していません。
──「都庁ナビゲーター制度」があるそうが、どんな制度ですか。
望月 若い職員を採用PRイベントのサポートスタッフとして登録し、インターンや座談会のイベントで先輩職員として語ってもらいます。率先してイベントに関与する職員で、ほぼ全職種の計150人ほどいます。
■働き方とICT職
──「働き方」は変わりましたか。
望月 テレワークがだいぶ進みました。都庁では、生活と仕事の両立のため、テレワーク、オフピーク通勤、フレックス制度といった柔軟な勤務形態が可能です。コロナ禍でテレワークがより柔軟にできるようになり、WEB会議も推奨するようになりました。都庁のDX(デジタルトランスフォーメーション)化も進み、ペーパーレス、ハンコレスなど出勤しなくても仕事ができる態勢が整ってきました。
──DXといえば、コロナ下で政府や自治体のデジタル化の遅れが批判されました。ICT職の採用は2年目だそうですが、学生の人気は?
望月 2021年9月に開催した都庁ICT職インターンシップには、多くの学生からの応募がありました。今までずっとICT分野に携わってきたIT企業に入るのも面白いでしょうが、都庁のICT職には、都民生活の質の向上のため、全く基盤がないところから創り上げていくという大きな魅力があります。都庁のICT職は非常にやりがいがあると思います。
■風土
──都の職員数は?
望月 教員、消防署、警察署を含めると16万~17万人で、都庁の職員に限ると3万~4万人です。この3万~4万人には、都税事務所や島しょ地域などの事業所で働いている人も含んでいます。
──大きな大企業クラスですね。どんな組織風土ですか。
矢田 私は入庁2年目ですが、意見を聞いてもらえることが多く風通しのよい雰囲気です。育児中の人は時短勤務制度を活用したり、それ以外の人もライフワークバランスを意識したりと、休むときは休む、働くときは働くといったようにメリハリをつけた働き方をしています。また、必要に応じてテレワークを行うこともできるので、働きやすい環境だと感じています。
望月 八丈島勤務2年、本庁2年です。職員数に違いはあれど、どちらの部署も若手の意見を聞いてくれて風通しもいいし何でも相談できます。入る前は「公務員は上下関係がしっかりしていて堅苦しい」印象でしたが、全くそんなことはなくて職場でフランクに話ができるし雑談もします。良い意味で縦のラインはしっかりしているけれど、フランクで楽しい環境です。
──お役所には堅苦しいイメージがありました。
望月 組織の仕事の仕方とか職員同士の接し方が特別に堅苦しいことはなく、民間企業と変わらないと思っています。法律とか条例を扱っているので締めるところ締め、都民の方に対して誠実にご対応しますが、オン・オフがはっきりしている感じですかね。
──どんな職員が多いのでしょう?
矢田 いろいろなバックグラウンドを持った人が多いですね。いろんな職種があることにも起因していると思いますが、理系・文系だけじゃなく、民間経験者も、国際交流員として外国人の方がいる職場もあります。本当に「同じ組織なの?」という印象ですね。
一国に匹敵する予算 規模大きいが機動的
──働くうえで、民間との違いは何でしょうか。
矢田 影響力だと思います。東京都全体に関わる取り組みを行うので、スケールの大きな仕事ができると思います。
望月 事業規模が大きく、東京都の予算は一国の予算に匹敵します。たとえば、私がいた八丈島では島全体に関わる防災事業を町役場の人とタッグを組んでやっていました。民間企業だと防災事業のどこか一部分を委託されて携わると思いますが、全体の計画や方向性を決め、ゴールまでちゃんと見通せるのが公務員ならでは。東京都は自治体で一番規模が大きいので、やりがいも大きいと思っています。
──厳しさはどうでしょう?
望月 やりがいの裏返しです。影響力が大きい分、いろんなことをしっかり確認して、着実に事業を進めてなければなりません。都民から常に注目されているので、それに応えられる仕事ぶりや行動も必要です。これも公務員ならではですね。
──公務員にも種類があります。東京都はどんな存在ですか。
矢田 よく言えば「いいとこ取り」です。市区町村の区役所、市役所だと住民に接する機会が多くあると思いますし、国家公務員はそれぞれの省庁の中で特定分野のスペシャリストになると思います。東京都は、都税事務所や建設事務所などの出先機関が500カ所ほどあるので住民に近い場所で働くこともありますし、本庁で広い視野で政策立案を行うこともあるなど、両方の経験をする機会があります。人事異動も頻繁にありますから、環境局で環境分野の仕事をしたり、福祉保健局で感染症対策の仕事をしたり、いろいろな分野の仕事に携われるところも東京都の特徴だと思います。
望月 国はさらに影響力が非常に大きい分、施策を一つ作るにも時間を要すると思います。東京都は規模が大きいけれど一地方自治体なので、機動的に動けます。
──どんな学生が向いていますか。
矢田 都庁では部署を異動すると、転職したのと同じくらい異なる仕事をするので、新しいことでも自分なりに目標を持って働いていける人が適していると思います。
──逆に、たとえば「ずっと教育行政をやりたい」という人の希望は通りますか。
望月 職員は定期的な人事異動を通じて、さまざまな職務経験を積むこととなります。教育行政に携わる組織でさまざまな経験を積み、その分野に特化した人材になることは可能です。
──やはり東京出身者が多いのでしょうか。
望月 都庁ナビゲーターのアンケートによると、東京出身と神奈川・埼玉・千葉出身が3割ずつで、それ以外も4割います。北海道や沖縄などいろんなところから来てくれています。
「いろんなことできるし規模も大きい」「行政でまちづくりに関わる」
──お二人はどんな就活をしたのですか。
望月 理系ですが、公務員しか考えていませんでした。一番影響が大きいのは、公務員の父の背中を見て育ち、仕事ぶりに憧れてきたことです。東京を選んだのは自分が住んでいたのでこの地に恩返ししたいということと、公務員について調べると東京都だけ異質だったから。いろんなことができるし規模も大きい。特定の分野で働くのではなく東京都で働きたいと思いました。民間は受けませんでしたね。絶対に都庁に行くと決めていました。
──矢田さんは?
矢田 大学で幅広くデザインを学び、まちづくりにも興味があったので、初めは建設会社への就職も考えました。ただ、まちづくりはハード面だけでなく、福祉や環境への配慮などいろいろな要素が合わさります。いざ業界を決めるとき、「行政でまちづくりに関わる」という選択肢が浮かびました。大きなステージでまちづくりに携わりたいと考えて東京都を第1志望にし、他の自治体の試験も受けました。
私はⅠ類Bの「一般方式」を受験したのですが、3年生の夏から予備校に通いました。民間企業は最終的に受けませんでした。
──望月さんは独学ですか。
望月 通信講座で独学です。本腰を入れたのは3年生の11~12月ですが、遅れをとっていたので、死ぬ気で勉強しました(笑)。
■印象的な仕事
──印象に残っている仕事について教えてください。
望月 2021年12月の「都庁セミナー2021」です。携わった中で一番関係者が多く規模も大きい仕事でした。各局の人事担当に局のブースで話してもらったり、都庁ナビゲーターと語るブースを設けたり、都庁側の運営だけで約100人を集め、学生も累計で1400人も来てくれました。いろんな部署と調整の末、無事にイベントを成し遂げたのは貴重な経験です。
入都してすぐ配属された八丈支庁も印象深いですね。町民の方へ風水害に関する講話を実施したり、台風が急接近した時に、町役場の職員と情報連絡要員として寝ずに災害対応したり。どれも規模が大きく、やりがいや影響力もある仕事でした。
──矢田さんは?
矢田 2020年に入ってから試験課で総括担当として、採用PRや試験の実施などの仕事をしています。入都初日、庁舎に着いたら、職場がすごく騒然としていました。新型コロナウイルス感染症の影響で試験の延期を発表したところだったんです。春に実施予定だったⅠ類Bなどの採用試験や昇任選考を夏以降に延期したため、Ⅲ類などの秋の試験と同時並行で試験の準備や実施をしなければならず、かつ感染防止策も徹底しなければいけませんでした。私はもちろんですが、職場の先輩方にとっても初めてのことばかりでした。私は前の年まで受験する側だったということもあり、受験者としての視点も含めた意見を聞いてもらうなど、新卒の私も含め、みんなで話し合いながら、手探りで試験を実施しました。予定していた全ての試験が終わったときには大きな達成感がありました。
(写真・山本倫子)
みなさんに一言!
就活ほど自分と向き合う期間はありません。公務員の勉強はけっこうきつく、「ここで辞めたら楽だなあ」と何度も弱い自分が出てきましたが、その度に「将来何をやりたいか」「どうなりたいか」と考え、いろんな人や家族に何回も相談して助けてもらって乗り越えました。無事合格することができ、大きな自信にもなりました。周りの人の力は本当に大きく、いざとなったら助けてもらえればいいと思うと心が楽になりました。みなさんも、ぜひ楽しんで乗り越えてほしいです。(望月さん)
大学の専攻は、公務員との関連が薄い分野だと思っていましたが、いろいろと自分で調べたり話を聞いたりしたことで東京都に興味を持つことになり、そして今、実際に公務員として東京都で働いています。どんなところに自分のやりたいことや適性が転がっているかは分かりません。いろいろな人や企業などの話を聞くこと、視野を広く持つことが大事だと思います。(矢田さん)
東京都庁
【自治体】
東京都庁は、約1400万人の人口を抱え、都心部から多摩・島しょ地域にいたるまで、幅広い事業を展開しています。福祉、産業、環境、教育・文化、都市づくりなど幅広いフィールドで、職員一人ひとりが真摯な情熱を持って、東京という都市を日々、前進させています。日本の首都として、社会のセーフティネットの構築等のサービス提供、社会のルール作り、さらに、都市の未来像を示し、日本全体を牽引する重要な役割を担っています。
東京をさらに発展させ、⽇本を、世界をリードする改⾰に私たちは挑みます。
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