SDGsに貢献する仕事

オリエンタルランド株式会社

オリエンタルランド〈前編〉環境配慮とゲストの満足度を両立させる【SDGsに貢献する仕事】

2025年06月11日

 SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」。第23回は東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが登場します。子どもから大人まで誰もが楽しめる「夢の国」だからこそ、ごみの削減や環境への配慮といったテーマにもしっかり向き合う必要があります。環境に配慮した取り組みをしつつ、どうゲストの満足度も高められるか。両立をめざし、夢の国を持続可能に発展させようと工夫を積み重ねている社員2人に話を聞きました。
(編集長・福井洋平)

【お話をうかがった方のプロフィル】
経営戦略本部サステナビリティ推進部シニアリーディングスタッフ 山口貴大さん(やまぐち・たかひろ 写真左)
2019年に大学の経済学部卒、2019年4月入社、アトラクション運営部を経て2022年より現職。
フード本部フード開発調達部フード開発グループチーフリーディングスタッフ 川﨑豊さん(かわさき・ゆたか 写真右)
2010年に大学の経営学部卒、商業施設運営会社を経て2020年に入社、現職。

環境分野に関する業務にたずさわる

■山口さんの経歴
 ──山口さんは、新卒入社後はどんな仕事につきましたか。
 山口貴大さん 4月の入社後、研修を経て7月から東京ディズニーリゾート内のアトラクションの運営管理や人員配置、キャスト(従業員)管理を担当する「アトラクション運営部」(当時)に本配属になりました。担当したのは東京ディズニーシーの「レイジングスピリッツ」というローラーコースタータイプのアトラクションで、時間帯責任者(スーパーバイザー)の業務を行っていました。
 東京ディズニーランドや東京ディズニーシーは朝から晩まで運営しており、1人がすべての時間帯を管理するのではなく、時間帯によって責任者が交代しながら対応しています。例えば、アトラクションが正常に動くか点検したり、キャストのシフトを調整したり、何かイレギュラーが発生したときに対応するなどの業務をしていました。ゲスト対応もしますし、もちろんオフィスワークもあります。
 その後、2022年に今のサステナビリティ推進部に異動し、現在は4年目です。

■サステナビリティ推進部について
 ──現在の部署では会社全体のサステナビリティの取り組みを統括しているということですが、具体的にはどのような仕事をしていますか。
 山口 サステナビリティ推進部には、大きく3つの業務があります。
 1つ目は会社のサステナビリティ戦略を立てる業務、2つ目はサステナビリティに関する外部とのコミュニケーションを行う業務、3つ目が社内においてサステナビリティに関する取り組みの推進や浸透を行う業務です。私たちはサステナビリティ戦略でマテリアリティ(重要課題)を定めていますが、私はその中の気候変動と自然災害、循環型社会に関連する業務にたずさわっています。この2つの環境分野に関する戦略を立案したり、社内の進捗管理、社外発信をしたり、というのが主な業務です。

 ──チームのメンバーは何人くらいですか。
 山口 サステナビリティ推進部には約10人が所属しています。このほかにも社内の部門ごとにサステナビリティ関連の担当者がいたり、サステナビリティに関わる分科会に所属している者がいたりします。

従業員の幸福にもしっかりと投資を

■「従業員の幸福」
 ──御社独自のマテリアリティとして「従業員の幸福」と「子どものハピネス」を掲げていますね。
 山口 はい。当社では、持続可能な社会に貢献することと、長期持続的に成長していくことを両立するため、成長につながる機会を取り込み、リスクを低減するためのマテリアリティを選定しました。中でも、「従業員の幸福」と「子どものハピネス」については、従業員の高いホスピタリティは事業の根幹であること、ファミリーエンターテイメントを提供する事業であることから、当社独自のマテリアリティとしています。
「従業員の幸福」では、従業員の働きがいの向上と働きやすさの整備を掲げています。従業員が幸せに働き続けることが、ゲストの皆さまにとっても良いパフォーマンスを提供できることにつながります。
 そして、私たちの事業は子どもとは切っても切り離せません。当社が提供しているファミリーエンターテインメントにおいて子どもも大切なステークホルダーと考えて 「子どものハピネス」を掲げました。

 ──「従業員の幸福」分野に関してのトピックはありますか。
 山口 取り組みの進捗を把握するために年に1回、「従業員の幸福」のKPIとしてエンゲージメント調査を行っており、その内容やフィードバックを社内の各組織に共有し、PDCAを回しています。特別なことではなく、地道にできることをしています。
 これまではゲストの体験価値向上に関する事項に優先的に資源を投下していこうという方針でしたが、「従業員の幸福」を選定したこともあり、キャストが気持ちよく働けるよう従業員に関わる事項にも今まで以上に投資していこう、ということになりました。

 ──山口さんから見て、変わったなと思われたことは何かありますか?
 山口 キャストが使うバックステージの休憩施設や食堂などがどんどんきれいになっており、少しでも休憩時間を快適に過ごせるようになってきています。

■「子どものハピネス」
 ──「子どものハピネス」分野ではどういったトピックがありますか。
 山口 「子どものハピネス」というマテリアリティを掲げることで、各部署で施策を展開しようとしたときに、会社方針に沿って各部が協力できる体制がより強まったと思います。今後は少子化が進み、子ども自体が減っていきますが、サステナビリティという観点で子どもに向けたプログラムを強化・継続していく必要があると考えています。そうした点でも「子どものハピネス」をマテリアリティに選定したことは効果があると思います。

バスをEV化、エンジン音は残す

(写真はオリエンタルランド提供)
■環境への取り組み
 ──オリエンタルランドが「環境方針」を定め、環境問題に取り組む理由は何ですか。
 山口 先ほど申し上げた通り、私たちはマテリアリティを選定する際に、リスクと機会という視点を設けました。リスクという観点からすると、私たちは大きな施設を持ち、毎日大量のエネルギーと資源を使って、ゲストにハピネスを創造しています。そのことに対する責任を持ち、環境への配慮にしっかり真摯に取り組む必要があります。
 一方、機会という観点からすると、毎年多くのゲストをお迎えしていることもあり、私たちが事業を通して環境問題に取り組むことで、なんらかの影響を与えられるのではないかと思っています。もちろん、環境対策については他社様でも様々な取り組みを実施していると思いますが、私たちもエンターテインメント企業としてできることから取り組みをすすめていきたいと考えています。

 ──御社ならではの取り組みはありますか。
 山口 気候変動への取り組みとして、温室効果ガスの削減目標を定めています。バックステージ、いわゆるゲストから見えないところでエネルギー機器を更新したり、新しい技術を入れたり、再生可能エネルギーの購入・調達をしたりすることが大きな取り組みです。
 ゲストから見える部分で特徴的な例として挙げられるのは、東京ディズニーランドのアトラクション「オムニバス」(写真)、東京ディズニーシーのアトラクション「ビッグシティ・ビークル」です。これらはパーク内を走る乗り物に乗るアトラクションですが、2つとも電気自動車化されています。
 このアトラクションのテーマは「20世紀初め」という設定なので、電気自動車なんてあるわけがないのですが、テーマに沿った演出をすることでゲストに楽しんでいただくために、わざとガソリンの音を出す機械を設置しているんです。
 ──EV特有の「キュイーン」という音ではないのですね。
 山口 そうなんです。環境負荷の削減とゲストに楽しんでいただくという部分を両立しているのは、当社らしいかな、と思います。
もう1つ、循環型社会を実現するために、資源の使用自体を減らしていこうという取り組みをしています。例えば私たちが運営するホテルのシャワーキャップですが、全室に置いていても使う方は少ないというデータがあり、使う方にお渡しする希望制にしました。ホスピタリティの観点からは「わざわざゲストにシャワーキャップが必要ですと声をかけさせるのは、どうなのか」という議論もあったのですが、そこは環境負荷削減により将来の世代に向けて資源を守るというところに立ち返りました。

■キャストからの提案も
 ──立案は、従業員のみなさんがしているのですか。
 山口 基本的な戦略や立案は私たちサステナビリティ推進部が行いますが、現場で働くキャストが発案するものもあります。例えばアトラクションの空調設備の温度設定を見直したり、従業員食堂で食べ残しを減らすため、S、M、Lしかなかったご飯のサイズにSSを追加したりしました。

 ──従業員の提案はどのように吸い上げるのですか。
 山口 従業員食堂の例で言うと、キャストが食堂の従業員に提案し、そこから担当部門で「こういう意見が出ましたが、実現できますか?」と話し合って、実現しました。社内には意見箱のようなものもありますが、基本的にはそれぞれ働いているキャストが職場内で「こういう取り組みはどうですか?」と相談することも多いです。

 ──山口さんも時間帯責任者だったときは、キャストとコミュニケーションを取っていましたか?
 山口 「キャストとのコミュニケーションが一番大事」だと教わり、いかにキャストから声をかけやすい時間帯責任者になるか、相談できる関係性を築けるかを意識していました。

お皿にフィルムを貼りきれいにリサイクル

■川﨑さんのお仕事
 ──川﨑さんは入社何年目ですか。
 川﨑豊さん 私は中途入社で、前職で約10年間商業施設の運営をしたのち、2020年2月に入社しました。2カ月間研修をした後、4月にフード本部に配属されました。入社1年目はフードの販促部門にいて、2年目からフード開発のプランニング業務に就いています。
 現在の仕事は、パーク内レストランのメニュー開発です。「グランドメニュー」と呼ばれる店舗の基本メニューの開発や、ハロウィンやクリスマスなど期間限定で開催されるイベントに沿った「イベントメニュー」の開発をしています。メニューのコンセプトや展開店舗などをプランニングしています。

 ──御社ならではの大変さはありますか。
 川﨑 パークやイベントのイメージを壊さず、さらに体験価値を創出できるようなメニューをつくっていくのは、この仕事ならではの大変さ、おもしろさだと感じています。

■メニューの包材、資材
 ──その中で、サステナビリティに関してはどのような取り組みをされていますか。
 川﨑 私たちはメニューをつくるとともに、メニューを提供するための包材や資材もプランニングしています。通常、ゲストの喫食後、包材や資材は最後には廃棄されます。この本来廃棄されてしまうものを再利用/再資源化できないかと検討することも我々の仕事です。メニュー開発という最初の部分だけではなく、喫食後という最後まで見すえたプランニングをしていこうとしています。
 ──具体的には、どんな包材に変えたのですか?
 川﨑 まず2022年に、一部店舗でビールのカップを紙製からアルミ製にしました。アルミカップを回収してまたアルミに戻すという循環型の資材を導入し、さらに2023年には一部店舗のお皿を期間限定で変更しました。こちら(写真)はプラスチックのお皿ですが、この上にフィルムが貼ってあります。喫食後、ゲストにフィルムを剥がしていただくことできれいなプラスチックのお皿を回収でき、お皿を製造する材料として再活用されます。通常だと喫食後汚れてしまったお皿は廃棄せざる負えないプラスチック皿をきれいな状態で回収して、リサイクルに回していくというチャレンジです。

分別作業にエンターテインメント性を

 ──これはすごくいいですね。
 川﨑 この取り組みはさらに進化し、2024年から東京ディズニーシーで新しく始まった「東京ディズニーシー・フード&ワイン・フェスティバル」というイベントでは、フィルムを貼った紙資材を使用しました。こちらも同じく喫食後にゲストに剥がしていただき、きれいな資材を回収し、リサイクルに回しています。

■リサイクル率向上の工夫
 ──ゲストの反応はいかがでしたか。
 川﨑 我々の想定以上のゲストが、分別に参加してくださっています。
 最初に導入するときの一番の懸念は「ゲストに分別作業をお願いしてもいいのだろうか」ということでした。そこで、分別作業にエンターテインメント性をもたせることにしました。このフィルムを剥がすと、人気のキャラクターが出てきます。ミッキーマウスやミニーマウスなどの絵柄がランダムで描かれていて、どのキャラクターが出てくるか楽しみながら分別できる仕組みを取り入れたところ、ゲストに好意的に受け止めていただきました。また「東京ディズニーシー・フード&ワイン・フェスティバル」のイベント期間中は、特定の回収ボックスで分別してくれた方に限定シールをお配りすることで、楽しみながら分別してもらう取り組みをしています。
 ──シールはどこで配っているのですか。
 川﨑 「東京ディズニーシー・フード&ワイン・フェスティバル」のイベント期間中、東京ディズニーシー内の各所に設置している回収ボックスに分別して入れてくださった方に、キャストがお渡ししています。「分別はちょっと面倒くさいな」と思われるかもしれませんが、少しでも楽しんで分別にご参加いただきたいと思っています。

■その他の飲食関係の取り組み
 ──その他の取り組みもありますか。
 川﨑 「東京ディズニーシー・フード&ワイン・フェスティバル」では規格外のイチゴを活用したドリンクを提供しています。また、プラスチックのカトラリーを軽量化することで、資源を使う総量を減らす取り組みをしたりしています。ストローについても、プラスチックから竹を原材料にしたストローに変更するという取り組みを行っています。

 ──もう3年ぐらい取り組みを続けられていますが、手応えはいかがですか。
 川﨑  ゲストが楽しんで、前向きに分別に協力してくださっていると感じています。SNSなどでも「分別して、このシールをもらった」「こんなお皿が出たよ」とポジティブに投稿していただいているのを拝見しています。エンターテインメント性とサステナビリティを掛け合わせて、どんどんパークに広げていけたらいいなと思っています。

 ──外国の方の来園者も非常に多いと思うんですけど、そういった方々はどのように捉えていますか。
 川﨑 海外の方々も剥がすとキャラクターが出てくるという仕組みについては、好意的のようです。言語で説明する必要がなく、他のゲストを見ながら「こうすればいいんだ」と取り組んでいる姿を目にしました。

(6月18日公開の後編につづく)

(インタビュー写真・岸本絢)

SDGsでメッセージ!

 就活生の皆さん、こんにちは。 オリエンタルランドでは、夢、感動、喜び、やすらぎを提供するという企業理念のもと、日々目の前のゲスト顧客に向けてハピネスを創造しています。何か人を喜ばせるのが好きな方、チームのために貢献するのが好きな方、ぜひオリエンタルランドを志望していただけると嬉しいです。よろしくお願いします。(山口さん)

 オリエンタルランドではさまざまな職種や環境があります。事業を川上から川下まで一気通貫でできる、やりがいと楽しさもあります。ぜひ、一緒に働いていただける方、ご応募お待ちしております。(川﨑さん)

オリエンタルランド株式会社

【レジャー・アミューズメント】

 株式会社オリエンタルランドは、1983年の東京ディズニーランドのオープン以来、東京ディズニーシー、ディズニーホテル、複合型商業施設「イクスピアリ」、モノレールなどを運営し、「夢・感動・喜び・やすらぎ」を提供し続けています。  また、2024年には日本を拠点としたディズニークルーズを展開することを発表し、2028年度の就航を目指しています。