SDGsに貢献する仕事

東京ガス株式会社

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東京ガス〈後編〉海外での事業も年々増加 社会を支える仕事にやりがい【SDGsに貢献する仕事】

2024年09月04日

 SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」の第17回は、首都圏を中心に都市ガスや電力などのエネルギーソリューションを提供している日本最大手のガス会社、東京ガスの後編をお届けします。事業内容から国内向けの仕事が多いように思われがちですが、サステナブルなエネルギー供給のために積極的にプロジェクトを仕掛け、海外での事業も年々増えているといいます。仕事を通じて、社会を支え「みなさんのお役に立てる」ことを実感できることがやりがいという技術者2人にお話を聞きました。(編集部・福井洋平)

前編はこちらから

【お話をうかがった方のプロフィル】
グリーントランスフォーメーションカンパニー e-methane推進部 エンジニアリンググループ 石井洋平(いしい・ようへい)さん
2007年早稲田大学大学院機械工学研究科卒業、同年東京ガス入社。2013年まで袖ケ浦工場施設部、2017年まで海外LNG液化基地PJ出向、2020年まで袖ケ浦LNG基地施設部と子会社兼務、2024年まで原料部海事・技術グループと子会社兼務、2024年4月から現職。

根岸LNG基地施設部 機械グループ 本吉麻佑(もとよし・まゆ)さん
2022年東京工業大学大学院機械系修了。同年入社し、現職。

入社時TOEIC400点台でも海外赴任 必死で英語を勉強

■石井さんの職歴
 ――石井さんは2007年に入社されてから、長く袖ケ浦(千葉県)の基地に配属されていたのですね。
 石井 はい。2007年に袖ケ浦の機械グループに入り、最初にタンク設備などを2年、LNGをガスにする気化設備を2年担当しました。その後、東日本大震災が2011年の3月にあり、基地は弊社とJERA(発電会社)の共同基地でガスをJERA発電所にも供給しているのですが発電能力がもっと必要だということで、発電用のガス供給設備を増設するというプロジェクトに2年間携わり、トータルで6年間袖ケ浦にいました。

 ──東日本大震災があって、電力供給量が落ちたのですね。
 石井 震源に近い発電所はダメージを受けたそうです。 原子力発電所もすぐには復旧できないため、「次の夏までに何とか設備をつくれないですか」という話があり、通常の半分ぐらいの工期で設備をつくり、ガスを出すというプロジェクトを担当しました。

■海外赴任
 ──そのあと海外に出向されたのですね。
 石井 エンジニアとしてオーストラリアに赴任し、弊社が参画していたLNGを液化・輸出するプロジェクトに携わりました。すでに発見されたガス田からガスを取り出し、冷やして液化して出荷するのは、それにコストがいくらかかるか、どういうプラントが必要なのか、何年もかかって投資の意思決定をしてから詳細設計をはじめ、建設して――という長いプロジェクトになります。私たちはその途中から参画しました。
 液化する方法は成熟した技術ですが、どういったプラントにするかなど、決めることがたくさんあります。ガス田によって出てくるガスの組成が違い、例えば比較的重いメタンではなくてプロパンが多く入っている場合はプロパンとメタンを分けて、プロパンはプロパンで製品として出荷する基地もあります。ほとんどメタンで出てくるガス田もあり、そこではプロパンの設備は必要ありません。それぞれのガス田に応じたさまざまな最適化の方法があり、それらを一つひとつ検討するのです。

 ──石井さん以外にも、他社から多くの技術者が来ているのですか。
 石井 はい。弊社からは1人ですが、メインの会社はかなりの人数で、チームで仕事をしています。上司は日本人ではなく、基本的には英語で仕事をしていました。
 ──英語は得意でしたか。
 石井 いいえ、苦手でした。確か入社したときはTOEIC400点か410点でした。入社して2~3年目ぐらいのときに、基地の大先輩に「英語をやりなさい」と言われたのですが、今思うとすごくありがたかったですね。そこから英語は勉強したのですが、出向させてもらったタイミングではまだ英語が得意ではなかったので、赴任してからも必死に勉強しました。

 ──どうやって勉強したのですか。
 石井 もう、全部の方法をやりました。上司との共通言語は英語なので、毎日英会話をするのですがそれでは時間が足りなくて、帰宅後オンラインで毎日1時間、英会話の勉強をしました。本も英語で何冊か読むとボキャブラリーが増えます。文法も解説本を読み直し、単語も単語帳をやり直し、日記を英語でつけました。英会話は雑談がけっこう難しいので、日記をつけておくと、ちょっとした雑談のときに単語が出てきやすくなりますし、あとはスマートフォンの設定言語を英語にして、エラーメッセージなども英語で読むというぐらい徹底しました。それを海外赴任が決まってから、オーストラリアに行ってからも続けていました。

 ──入社時は、まさか海外で仕事をするとは思ってなかったそうですね。
 石井 そうですね。東京ガスでは若手を成長させようと難しい仕事を任せてくれたり、いろんなアドバイスもらえたりすると感じています。

課題を一つずつ解決して最後に設備が動いたときは感動

■海外での仕事の苦労
 ──海外赴任で、仕事のうえで大変だったことは何ですか。
 石井 たくさんありました。ヨーロッパやアジア、アメリカなど海外のいろいろなメーカーから物を買うのですが、みなさん考え方も違いますし、我々は「ここまでやってほしい」と思っていても、そこのメーカーはそうは思っていないというギャップがあります。実際に使うときに試運転をしますが、性能通りに動くのか動かないのか、そういったところで認識のズレが必ずあります。「これでお望みのものはできたと思います」と納入してもらうのですが、こちらは「いやいや、これはもうちょっとこういうふうに動いてもらわないと困ります」というギャップが出てきて、それを埋めるのがプロジェクト後半は難しかったです。
 契約書を読み込んで、契約書には何が書いてあるのか、何をしなければいけないのか、我々はここまでやってほしいけれどもそこまでつくれないのであればどこで妥協するかを検討する。関係者がたくさんいるので、妥協するとどうするのかの議論も大変でした。

 ──しかも、それを英語でやらなければいけないんですね。
 石井 はい。もちろん1人では、とてもできないんですけど。

 ──交渉も中途半端な交渉ではないんですよね。本当に入社当初に考えていた仕事とは全然違う。
 石井 全然違います。

 ──本吉さんも英語は勉強していますか。
 本吉 はい。社内研修プログラムを活用して、6月から海外の方とオンラインで会話できるレッスンを始めました。

 ──東京ガスで海外の仕事は増えているのですか。
 石井 増えていますね。国内だけではできることも限られますし、例えばeメタンや再生可能エネルギーは国内だけでつくろうとしても、どうしても難しい。バリューチェーンの上流から、僕らがこれがほしいというものが海外にあるのならば海外に出て、新しいプロジェクトを立ち上げ、それを日本に持ってくる方が可能性が広がりますし、みなさんに提供できるオプションが広がります。
■輸送船の仕事
 ──その後、輸送船(写真/東京ガス提供)の仕事に携わられます。
 石井 船も基本的には陸と一緒で、タンク、ポンプ、発電機などの設備があり、そうした設備の維持管理を担当していました。とはいえ船は基本的に海の上を走っていますので、現場が見にくい。オフィスで何をするかといいますと、メンテナンス計画の作成です。例えば3年に1回、船の大きなメンテナンスをするとしたら、いくらかかるのかを精査して、予算を考えます。省エネ設備を導入したら燃費を改善でき、投資回収ができるのかも検討します。燃費を改善すればその分、輸送費も下がりますし、いま船舶への環境対策も非常に注目されています。いろいろな観点から検討をして、船の運航会社と協力し日々コミュニケーションを取っています。

 ──実際に船を見るのは、寄港するときぐらいですか。
 石井 そうですね。例えば、袖ケ浦に来たときに見ておきたいことがあれば基地に行きます。船をメンテナンスできる場所が国内外にあり、例えばシンガポールにはかなりメジャーな修繕ヤードがあります。シンガポールに出張して、1週間船をずっと隅から隅まで見て回ることもあります。3年前のメンテナンスは正解だったのか、もっとすべきことがあるのか、現場を見て確認します。

 ──本当にいろいろな仕事をされて、経験を全て生かす形で今はeメタンに取り組まれているんですね。今は目標に向けて順調ですか。
 石井 目標は見えているんですけれども、初めてのプロジェクトということもあり、解決すべき課題がたくさんあります。これは国内のプロジェクトをするときも同じですね。課題を1つずつ解決するからこそ、最終的に設備が動くときにはものすごい感動があるわけです。

 ──「プロジェクトX」みたいですね。
 石井 はい。もう感動の音楽が頭の中で流れます。私も数年ぶりに基地に帰って、自分が建設に携わったプラントがちゃんと動いているのを見ると、頑張った甲斐があったな、とやりがいを感じます。

社員の人柄のよさで入社を決める

■本吉さんの就活
 ──本吉さんの就活について教えてください。大学では機械を専攻されていたのですね。
 本吉 もともと機械工学を選んだ理由としては就活に関係なく、単純に宇宙工学や航空工学を学問として勉強したいと思っていたためです。航空機や、宇宙機のエンジンなどを展示会で見て、面白そうだと思ったのがきっかけです。

 ──学部では深層学習を用いた画像認識、いわゆるAIも勉強されたと。
 本吉 そうですね。もともと研究室自体がロボットをメインとした研究室で、ロボットの知覚、聴覚、視覚の部分を研究しているところだったので、そのうちの1つとして視覚の部分を研究しました。

 ──大学院では炭素膜コーティングの特性を勉強されたそうですが、これは化学の分野ですか。
 本吉 化学とも近いような分野ですが機械工学の中の機械材料やトライボロジーの分野で、機械部品の性能向上を目指した炭素膜コーティングの研究をしていました。

 ──東京ガスのプラントというのは、それまでの専攻分野とはあまり関係のない仕事だったのですか。
 本吉 そうですね。もともと研究をしていた内容をそのまま続けようとか、企業で研究職になろうという考えはありませんでした。同じ大学からは機械メーカー、電子メーカーへの就職がメインでしたし、私も機械は本当に好きで面白かったのですが、研究を仕事とするビジョンがあまり見えませんでした。そこで就職活動では機械からは一旦離れて、インフラ、建築、化学メーカーを見ていました。

 ──大学で学んできたものと違うジャンルを仕事にすることに、不安はなかったのですか。
 本吉 もともと私は興味がある範囲が広く、興味がなくとも割と楽しめるタイプで、新しいことを経験するのが好きだったので、全く不安はなかったです。

 ──インフラ、ゼネコンだとどういう職種になるんですか。
 本吉 ゼネコンだと機電職といった分野やプラントエンジニアリング職という分野があります。正直、プラント専業はあまり見ていなくて、ユーザーエンジニアリングに近いものをやりたくて、比較的小規模から中規模のプラントを広い目で見て建設したり、検討・計画業務に携わったり、維持管理まで含めて自社の設備を幅広くずっと見ていられる仕事が自分に合っているかなと思いました。
 ──インフラ系は東京ガス以外にも見ましたか。
 本吉 電力系、石油会社を見ていました。他ガス会社は説明会には参加しましたが、最終的に受けたのは弊社のみでした。

 ──就活前は東京ガスについてどういうイメージを持っていましたか。
 本吉 どちらかというと、営業がメインの会社かなと思っていました。就活を始め、先輩の話を聞いたりして、プラント職があると知りました。 企業研究をしていくと、コージェネレーションシステムを活用した街づくりにもかなり注力していることや、電力関係にも幅を広げていることがわかり、それも非常に面白そうだと思った記憶があります。

 ──エントリーシート(ES)はどんなことを書きましたか。
 本吉 「プラントに携わりたい」という志望理由と、私自身がそれまでに挑戦したこと、その理由だったと記憶しています。

 ――面接はどういう流れでしたか。
 私が受けた際は、全部で3回でした。1回目はオンラインで中堅社員と2対1、2回目は管理者層の社員と面接したと記憶しています。(※選考過程は当時のもので、現在とは異なる可能性があります)

 ──社員の人柄が良かったことが、入社の決め手になったのですね。
 本吉 はい。面接のときにお会いした全ての方が、すごく楽しそうでした。他企業と比べて、雰囲気、面接の進め方、質問の内容も本当に私がどういう人かを見てくれているという安心感があり、そのあたりも含めて「人柄が良かった」と感じました。
(本吉さんの勤務風景/東京ガス提供)
 ──応募職種は何でしたか。
 本吉 学校の推薦を使って、採用の面接を受けました。2023年度から採用形態が変わりましたが、私達が入社したときは理系職、文系職、プロフェッショナル職の3つに分かれているのみで、インフラエンジニアリング・ソリューションコンサルティング等の選考領域別採用ではありませんでした。プロフェッショナル職は主に高専生を対象とした募集でした。

 ──同期に女性は何人ぐらいいましたか。
 本吉 今言った3職種で30人弱、 そのうち基地配属となった女性は、理系職では1人、プロフェッショナル職では4~5人です。

 ──基地に来る女性は増えていますか。
 石井 毎年、基地に配属されるのは数人程度です。理系職で入ってくる女性は昔からそんなに多くはありませんが、私の同期に2人いましたし、ゼロではなかったです。
■石井さんの就活
 ──石井さんは大学院では何を学ばれていましたか。
 石井 大学院では制御工学を学んでいました。いわゆる材料、熱流体といろんな分野がありますが、それらに横串を通すような制御を専門にする分野です。

 ──就活のとき、他の業界は見ていましたか。
 石井 幅広く、機械専門の人が活躍できそうな場所を見ていました。ビールメーカーの工場見学をさせてもらったり、いろいろ学びながら見ていました。一部のプロセスだけにかかわるのではなく、できるだけ全体が見られる仕事ができる会社がいいと思っていました。

 ──入社の決め手は何でしたか。
 石井 社風の良さです。いろいろな説明会に行った中でも、東京ガスはかなり雰囲気が良い会社でした。調べていくとエネルギーというみなさんに役立つ仕事で、ぜひやりたいと思って応募をしました。当時は大学の推薦はなく、自由応募でしたね。他社を受ける前に内定をもらい、もうすぐに入社を決めました。

 ──当時の面接の流れは覚えていますか。
 石井 本吉さんと一緒ですね。1次、2次、最終面接でした。

 ──石井さんは採用にもかかわられていましたが、東京ガスがご自身を採用したときの決め手は何だと思いますか。
 石井 弊社はよく「人柄が良い」「社風が良い」と言っていただきます。おそらくそういう社風に合い、「一緒に働きたい」と思う人を採用するのかなと思っています。ただ、なぜ自分が採用されたのかは分かりません。自分ではわりと尖っている方かなと思っているので。

 ──でも、社風に合っていたと。
 石井 合っていたのか、何かを見ていただいたのかわからないですが、プラントエンジニアリングは自分にすごく向いていると思います。自分で考えて、計算して、こうしたらいいんじゃないかと考えながら、いいものをつくっていく。面接の中でそういったところを見てもらえ、基地に配属になったのかもしれませんが、すごくありがたいと思います。

 ──基地を希望していたのですか。
 石井 実は希望していなかったんですが、行ってみると自分に向いている職場だなと感じました。学生も自分がやりたいことと、会社に入って自分が輝けることが一緒かどうかはやってみないとわからないですし、自分だけで考えても答えは出ないと思います。私は毎年、「将来、どうなりたいですか」と聞かれたら、「エンジニアとしての軸は持ちたいです」と会社に伝え、仕事をしています。

 ──社風の良さは入社前、入社後でギャップはありますか。
 石井 本当に社風が良いなと思いますね。みなさん、けっこう話しやすいというか、議論を好むといいますか、ワイワイガヤガヤしています。
 
 ──本吉さんもそうした社風は感じますか。
 本吉 そうですね。若手の私からも「こういうふうに計画したいです」というのは遠慮なく言える環境です。そこは非常に仕事を進めやすいと感じています。

■東京ガスでのやりがい
 ──東京ガスで働くやりがいとは。
 石井 一番のやりがいは、みなさんにエネルギーをお届けしているということです。我々がしっかり仕事をしないと、本当に多くの方に影響が出てしまいますし、社内のどの仕事をしていても「社会を支える」ことに関わります。必ず「みなさんの役に立てる仕事をしている」というところに立ち返れることに、大きなやりがいがあります。

 本吉 私も基地にいますので、ガスを製造する設備に何か少しでも異常があると、エネルギーを届ける供給支障に直結する可能性があることを日々感じます。日常的にしっかりと仕事をし、エネルギー供給を安定的に支えるところに非常にやりがいを感じます。

(インタビュー写真・植田真紗美)

SDGsでメッセージ!

 私は説明会や採用の面接を受ける中で、東京ガスへの志望度が上がり、入社を決定しました。説明会や採用の面接を受ける中で、自分のやりたいこと、企業に合っているかなどが固まってくると思いますので、これからの面接や説明会を頑張ってください。(本吉さん)

 私は今、e-methane推進プロジェクトで仕事をしています。しかし、入社したときは、まさかこのような仕事をするとは思っていませんでした。さらにキャリアの中でLNGの基地、発電所、船といろんな仕事をしてきて、今まさにe-methaneプロジェクトをしていますが、東京ガスはさまざまなチャレンジをしている会社です。ぜひ、そういった視点でも東京ガスを見ていただければと思います。(石井さん)

東京ガス株式会社

【エネルギー】

東京ガスグループは首都圏を中心に都市ガス、電力、熱等のエネルギーとソリューション・サービスを提供しているエネルギー会社です。国内4か所のLNG基地、6万km超のガスパイプライン、複数のLNG火力発電所や再生可能エネルギー電源を保有しています。エネルギー事業を軸とし、海外事業、不動産・都市開発なども展開。脱炭素化、デジタル化、エネルギー自由化の進展に対応し、持続可能な社会の実現を目指し、次世代のエネルギーシステムをリードします。