
■東京ガスとSDGs
──まず、東京ガスのSDGsに対する取り組みについて概要を教えて下さい。
石井 私たちのグループ経営理念である「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」を体現していくため、サステナビリティー上の重要課題を7つ「マテリアリティ」として特定し、さまざまな事業活動を通して取り組んでいます。
その中でも大きなトピックは、マテリアリティの1番目に掲げている「脱炭素社会への責任あるトランジション」です。私たちは東京「ガス」という社名の通り、都市ガスを中心としたエネルギーをお届けしていますが、昨今の環境に対応するため、我々が変わっていかなければと考えています。そのため、石炭や石油より炭素含有量が少ない天然ガスの高度利用や再生可能エネルギー電源の拡大、私がかかわっていますe-methane(eメタン、合成メタン)の普及拡大などを通し、脱炭素への取り組みをすすめているところです。
──こちらの本社ビルは「コージェネレーションシステム」を採用しているそうですね。
石井 はい。コージェネレーションシステムではガスを燃料として必要な電気をつくり、同時に発生する熱を冷房、暖房、給湯といろいろな用途で使うシステムです。夏場は冷房の需要が非常に高いため、冷房へ転換しています。
■eメタンとは
──石井さんがいま携わっている、eメタンについて教えて下さい。
石井 私は2024年4月にグリーントランスフォーメーションカンパニーe-methane推進部に異動しました。その前は東京ガスの原料部と、LNGを輸送するLNG船の運用や維持管理をする子会社の東京エルエヌジータンカーを兼務していました。
いまの職場ではエンジニアリンググループという部署に所属し、プラントの設計や、どういうプラントをつくるべきかという検討、議論を行っています。eメタンは原料としてCO₂と水素、再エネ電気が必要ですが、それらが豊富にある国で製造し、輸送して日本に持ってきます。CO₂ネット・ゼロの燃料として持ってくるために今は各国でプロジェクトを検討している段階ですが、その中でも私は特にアメリカの案件を担当しています。eメタンが注目されたのはここ2~3年ですが、弊社はかなり力を入れて取り組んでいます。
──eメタンが注目されるようになったのは何かきっかけがあったのですか。
石井 日本をはじめ世界中で燃料として化石燃料を使わず、水素を活用することでクリーンな社会を作る取り組みが進んでいますが、その際「どうやって水素を運ぶか」が大きな問題になります。液化水素にして持ってきて気化するという使い方もありますし、アンモニア(NH₃)の形で運ぶのも1つの方法です。eメタンのメリットは水素を都市ガスの主成分であるメタンの形にして持ってくることで、既存の都市ガスのLNG基地やパイプライン、みなさんの家庭のガス機器がそのまま使えるというところです。