SDGsに貢献する仕事

株式会社ヤクルト本社

  • すべての人に健康と福祉を

ヤクルト本社〈後編〉全従事者巻き込み環境問題に取り組む 入社後も感じる温かい社風【SDGsに貢献する仕事】

2024年07月03日

 SDGs(持続可能な開発目標)関連の業務に携わっている若手・中堅社員に直撃インタビューする「SDGsに貢献する仕事」の第17回、乳製品乳酸菌飲料を中心に化粧品、医薬品など健康づくりにつながる商品を手がけているヤクルト本社の後編です。SDGsの実現は一部門、一社だけの取り組みでは不可能で、グループ会社や従業員、取引先から消費者まで広く協力してもらうことが不可欠です。入社以来SDGs推進に取り組む石飛さんは、「幅広い業務ができ、人々の幸せにもつながる仕事ができていることに大きなやりがいを感じている」といいます。就職活動時の思い出や社風についてもじっくりうかがいました。(編集長・福井洋平)
(前編はこちらから

【お話をうかがった方のプロフィル】
広報室CSR推進室 石飛領斗(いしとび・りょうと)さん
2021年明治大学商学部卒業、同年ヤクルト本社入社。新入社員研修後、現職の広報室CSR推進室に配属。

全従事者が環境問題にとりくむキャンペーンを毎年開催

■環境面での啓発活動
 ──御社の環境面での取り組みについて、一般消費者に向けてはどのようなアピールをしていますか。
 「人も地球も健康に」のコーポレートスローガンのもと、創始者の想い、代田イズムの根底にあるものはSDGsの3番「すべての人に健康と福祉を」につながっていると紹介し、それから具体的な取り組みについても紹介しています。前編で少し申しあげましたが、「ヤクルトサステナビリティストーリーズ」という資材をつくって、コーポレートサイトで公開しています。また、大学で「ヤクルトグループの事業活動とCSR活動」というテーマで講義したこともあります。講義には40人ほどの出席者がいましたが、「しっかりと環境や社会課題に取り組んでいる会社だと分かった」という感想をいただき、やっぱり商品だけでは伝わらない部分がある、こちらの取り組みも説明していかなければならないなと感じました。

 ──従事者向けへの啓発はどうしていますか。
 社内に向けても「ヤクルトサステナビリティストーリーズ」や解説動画などを展開し、さらに意識啓発につながるキャンペーン、階層別や新入社員に向けた研修などを行っています。

 ──キャンペーンとは何ですか。
 1994年から毎年実施しているもので、世界中に約8万人いるヤクルトレディを含むグループの全従事者が対象です。2023年は「森林保全」をテーマに、各拠点で森林保全に貢献するための目標を決め、各拠点でその宣言を達成するために1か月間取り組みました。毎年実施して、地道にやっていくことが意識啓発には必要だと思います。

 ──具体的にはどういった取り組みをされたんですか。
 森林保全に貢献できる3つのテーマをこちらで設定しました。1つ目が、「資源の削減と有効活用(サーキュラーエコノミー)」。2つ目が「エコマーク(環境配慮型)商品の購入」。3つ目が「森林の大切さについて学ぶ」です。各拠点ではたとえば「会議はペーパーレスで行う」など貢献できる具体的な宣言をしてもらい、1か月間実施して、グループ全体で参加した人数1人当たりにつき100円を森林保全団体に寄付しました。達成者数は3万9359名でした。

 ──社内向けの啓発で意識されていることは。
 まずは取り組みを理解してもらう前に、グループ全体の共通認識を底上げしていこうとしています。2022年度は「SDGs行動宣言」といって、ヤクルトグループに特に関わりの深い8つのSDGs目標に対して、自分の業務の中で貢献できる目標を個人単位で設定しようとしました。しかし、「まだ自分の業務に落とし込むのは難易度が高い」という声があり、それを踏まえて2023年度は個人ではなく拠点単位で設定して、「みんなで一体感を持ってやっていこう」という取り組みにしました。拠点単位にしたのは、昨年度が初めてです。ヤクルトレディさんにはもっと参加していただきたいと思う反面、やはり普段の業務が忙しい中で参加していただける工夫を我々も考えてなくてはいけません。

温かい社風 入社前とギャップ感じず

■ヤクルト本社の働きやすさ
 ──「働きやすい環境」もSDGsの1つのテーマですが、御社の働きやすさについてはどうお感じですか。
 在宅勤務、時差出勤、「1時間だけ有休を使える」といった時間単位の休暇などの制度があり、自分のライフスタイルに合った働き方ができていると思います。仕事をしていく中で普段のモチベーションは大事だと思うので、制度を活用しながらプライベートも充実させ、自分の仕事のモチベーションにつなげています。
 ほかには「健康経営」にも力を入れ、毎日午後2時半に肩こり、腰痛、眼精疲労を予防する「ヤクルトストレッチ」というオリジナル体操を実施しています。午後2時半は人間の生体リズムによって眠気が生じやすく、作業効率が落ちる時間といわれているためです。また、本店ビルでは、各フロアに「ヤクルト」の入った冷蔵庫があり、一人1日1本飲めるようになっています。

■社風
 ──ヤクルト本社はどんな社風ですか。
 本当に温かい人が多いと感じています。就職活動のときにも何人かの社員と話して感じたことですが、入社してからもそのときの印象とギャップがまったくなく、むしろもっと「温かいな」と感じました。社内の他部署にいろいろと相談や依頼をすることがありますが、非常に優しく対応してくれる人が多いので、やりやすいです。
 CSR推進室はあくまでサステナビリティ推進する立場で、グループ全体で実行しなくてはいけません。基本的に優しく受け入れてくれたり、必要性をしっかりと理解して真摯に対応してくれたりします。

社長秘書から結婚式場サービスまでアルバイトに励む

■石飛さんの学生時代
 ──石飛さんご自身のお話も教えてください。大学は何学部でしたか。
 商学部で、主にマーケティングや広告について学ぶゼミでした。将来はマーケティングか、メーカーでモノづくりに携わりたいと高校時代からふわっと思っていました。ゼミではメーカーの社員が来て、具体的な事例を紹介してくれました。そのときに食品メーカーの人が多かったので、私が食品メーカーを希望した理由の1つになりました。

 ──なぜ食品にひかれたのですか。
 もともと食が好きで飲食店でアルバイトをしたり、その中で仕事についての具体的な事例を聞いたり、マーケティングの奥深さを知ったりしました。それから、相手の立場に立って物事を考えるといった基本的なことも学べると思いました。

 ──他に大学時代に力を入れていたことは。
 学業はもちろん、準体育会系のバスケットボール部、アルバイトにも力を入れました。アルバイトは飲食関係では結婚式場でのサービスを4年間やりました。テレビ局の音楽番組の裏スタッフ、ハウスクリーニング会社の社長の専属秘書もしました。「面白そうだな」と思ったものは積極的に応募して、とにかくやってみましたね。

 ──社長の秘書というのは、どういうことをしたんですか。
 実態はほぼ運転手だったんですけど。車の中では社長と2人きりのこともあり、ビジネスのノウハウとかを隣で教えていただいて、すごく刺激的な時間でした。
 社長からは「とにかく突き抜けろ」とひたすら毎日言われていました。当時はよく分からなかったのですが、社会人になってから「通常のスタンスではなく、自分の中で突出した考え方を持っておくことで、どこにいても勝負できるな」とやっとその意味が理解できるようになってきました。まだ行動には落とし込めていませんが、とにかく何かやるときは、ちゃんと自分の中で自信を持てるように極める、手を抜かずにやり抜くといったことを意識しています。

 ──結婚式場ではどんな仕事をされていましたか。
 これはアルバイトの中で一番頑張りました。ホテルではなく専門の結婚式場でしたので、会場準備、披露宴中のサービス、片付けという一連の流れをすべて手がけました。最初は「面白そう」「特別な経験ができそう」と思って始めたのですが、やっていくうちに人の幸せな場面に携われる仕事というのは本当に素敵だなと感じるようになりました。

 ──結婚式場というと本当にいろんなことをやると思うのですが、一番力を入れていたことは。
 とにかく事故を防ぐことです。グラスを割ったり料理を落としたりすると、その空間を台無しにしてしまうので。自分だけではなく、サービススタッフ全員がそうならないようにしっかり声を掛け、コミュニケーションを重ねました。

インターンシップで就活の軸みつける

■石飛さんの就職活動
 ──就職活動はいつから始めましたか。
 大学3年の夏前に始めて、インターンシップを申し込みました。夏は業界を選ばず、いろんな話を聞きたいという思いからたくさんの会社に長期インターンを申し込み、2、3社の選考に通って食品メーカーと医薬品メーカーのインターンシップに参加しました。冬のインターンも、ヤクルト本社ほか数社に参加しました。オンラインの説明会なども参加したり、大学の先輩やOBからもたくさん話を聞きましたね。

 ──インターンで学んだことは。
 インターンに行くまでは社会人としての意識も、業界の知識もなければ自分の目標もないといった状態だったんですけど、インターンを通して「食を通じて人々の健康に貢献したい」という軸がしっかり定まりました。本選考で受けた企業は、4~5社まで絞りました。

 ──「健康」を軸にしたのはなぜですか。
 結婚式場のアルバイトをして、人々の幸せに携わることに本当にやりがいを感じていたのですが、ちょうど就活している時に祖父母を病気で亡くし、人が幸せであるためには健康がもう絶対的に必要だと思いました。食に対して興味もあったので、「食を通じて人々の健康に貢献したい」を軸にしました。

■ヤクルト本社の就活
 ──ヤクルト本社はどういうイメージの会社でしたか。
 実際に冬のインターンに参加して、そこでいろんな社員と話したとき、一人ひとりの健康に対する強い意志というか、想いを感じることができたので、自分もそういった職場で働きたいと思いました。
 また、実は祖母が50年以上ヤクルトレディとして働いていたので、身近な存在でした。その祖母も私が就活のときにヤクルトレディを引退したので、祖母の意志を引き継ぎたいと思い、ヤクルト本社を第1志望にしました。
 入社3年目の研修で初めてヤクルトレディに同行したのですが、本当に何軒も何軒もお客さまを訪問し、積極的に会話をして、コミュニケーションを取ってという仕事ぶりを見て、すごく地域に寄り添った存在なんだと改めて感じました。そういえば祖母も、自転車で街中を駆け巡っていました。

 ──面接では何を聞かれましたか。
 オンライン面接が3回、最終面接は対面で、計4回面接しました。面接は基本的にはエントリーシートに沿って、志望動機や学生時代に力を入れたこと、自分の強みを中心に聞かれました。最終面接は人事部長と役員の2人と自分の4人でした。志望理由や将来どう働きたいか、大事にしている価値観など自分の考え方を中心に聞かれました。

 ──価値観についてはどういうお話をされたんですか。
 人との対話を重ねて、相手の考え方を尊重することです。これは結婚式場でアルバイトをしていたときから、いまでも大切にしていることです。コロナ禍で時間もあったので、とにかく会社のことを調べて、何を聞かれても答えられるようにしていたので、自信を持って答えることができました。

ワークライフバランス充実にも気をつける

■石飛さんの仕事のやりがい
 ──ヤクルト本社で働くうえで、どういうところにやりがいを感じますか。
 いまの広報室CSR推進室での仕事はサステナビリティに貢献する、ひいては人々の幸せにもつながることでもあるので、非常に大きなやりがいを感じています。社会課題を解決するためにはどうすればいいのか、そのためにグループ内をどう巻き込むんでいくのか、その取り組みをどう社内外に情報開示するかといったところまで幅広く業務ができるので、難易度も高いですが、本当にやりがいがあります。

 ──今後の目標は。
 実は私はジョブローテーションで次年度は異動する可能性が高いので、とにかくいまの課題をしっかりと解決して、サステナブル調達をはじめ、やり残したことがないようにしたいと思っています。

 ──ご自身の生活の中でSDGsを意識されることは。
 節電、節水という環境配慮はもちろん、先ほども申し上げたプライベートも充実させて仕事のやりがいにつなげる、ワークライフバランスを重視しています。本当に自分の趣味に当てているだけですが、サウナ、バスケ、トレーニング、ゴルフに行くなどしています。

 ──日頃、石飛さんが仕事されるなかで、大事にしている代田イズムはありますか。
 3つの軸はもちろん、それに加えて「真心」「正直」を意識して仕事をしています。

(インタビュー写真・大嶋千尋)

SDGsでメッセージ!

 就職活動中は自分のやりたいこと、そして理想的な働き方を実現できる会社を探すために、たくさんいろんな企業に足を運ぶことをお勧めします。説明会に参加するのも一つの手ですが、インターンやOB訪問で直接社員と話すことで、その企業の特色が見えてきます。SDGsは2030年までの目標で、2030年はこれからみなさんが働いていく会社で中核を担う頃だと思います。これからますます環境問題が深刻化していく中で、それらを解決していくのは若い世代だと思いますので、そういった観点で会社を探すのもいいかもしれません。選び抜いた会社が当社でしたら、非常に嬉しく思います。みなさん、悔いのないように就職活動を送ってください。

株式会社ヤクルト本社

【食品】

株式会社ヤクルト本社は1955年に設立され、食品、化粧品、医薬品等の製造・販売などを展開しています。ヤクルトグループは国内に販売会社が101社あり、ヤクルトレディは3万人以上、海外では39の国と地域で展開しており、ヤクルトレディは5万人以上います。「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」などのプロバイオティクスの有用性の解明と商品化で、人々の健康を支えています。